第7話 ああ、いい気味だ
沢山の方に読んでいただき、ありがとうございます‼︎
今回はまだだけど、次の話でやっと‼︎やっと悪役令嬢シナリオ関連が出てきますよ‼︎よろしくどうぞ‼︎
はい、ルーク・エクリュ(十歳)です。
婚約パーティーの一悶着から早くも四年。
婚約者であるミシェリアとは仲睦まじく暮らしています。
最近のミーシェは、それはもうその美しさが女神がかり始めまして……婚約者である僕がいるのに、沢山の男に告白されているようですが、そんなことをした奴らはこぞってその後、恐怖に怯えるようになったようです。
え?一体、何が起きたって?
あはは、それは簡単ですよ。
僕とミーシェ(と秘密裏にシゥロとククリ)が脅しただけです。
ノエルおば様は、元は王宮侍女であったそうなのですが……その正体は伝説の暗殺者なんだとか。
一体、どういった経由でリオンおじ様の奥方になられたんでしょうか。
まぁ、そこは置いておいて。
そんなおば様の暗殺英才教育を受けたのが、僕のお姫様でした。
それを聞いた瞬間、もう素晴らしいと思いましたね‼︎
ミーシェが本気を出せば、襲われる前に潰せるんですから‼︎
護衛術はあった方がいいに決まってますし……僕が守る気満々ですが、何かあった際は少しでも対抗手段があった方がいいです。
ちなみに……それを知った時のミーシェは、「……私が、暗殺の手段を取得していると知ったら……嫌いになりますか?」と泣きそうになりながら聞いてきたので、思いっきりキスしまくって好きだってことを証明してやりました。
あ、僕の方はあの婚約パーティーで危険人物認定された(というよりは、父上の恐さを知ってるから僕も同類だと分かって大人の皆さんが怯えてる?)ので、告白しようなんて考える子はいたんでしょうけど、家族に止められているんでしょうね。
たまーに頭が緩い奴が告白してきて、バッサリと切り捨ててますけど。
あぁ、ちなみにシゥロとククリはマグノール帝国でのミーシェの周りの奴らを排除してもらってます。
素晴らしい手腕だとだけ、言っておきましょう。
まぁ、そんなこんなで。
僕とミーシェの仲は至って良好です。
「そろそろ、結婚のことも話しあいますか?」
キョトンとしたミーシェは、ソファに座った僕の膝の上で本を読んでいました。
女神のような美しさを誇る僕のお姫様は、ソファの横に本を置いて、身体を動かして向かい合うように座ります。
そして至近距離で首を傾げた。
「成人したら結婚するんじゃないんですか?」
「………いや、確かに昔は成人次第って言いましたが……今のミーシェはいつ結婚したいかと思って。学園を卒業したらとか……」
「私の想いは昔から変わらずですよ?成人したらがいいです。多分、子供はできにくいですけど……ルーク様には早く私だけのものになって欲しいです」
長寿な種族というものは、子供ができにくいと聞きます。
ミーシェはいろんな血が混ざってるので、それに伴って子供もできにくいのかもしれません。
「構いませんよ、僕も早くミーシェが僕だけのものにならないかなぁ……と思ってたんで」
「なら、後、六年ですね」
成人はエディタ王国が十四歳、マグノール帝国が十五歳なので……僕が十六になった頃、やっと結婚できるという訳です。
一応、早めに両親達に言っておかないといけませんね。
「ミーシェ、僕のお姫様」
「ふふっ、ルーク様は小さい頃からそうおっしゃってますね?」
「実際に僕のお姫様ですからね」
「嬉しい……」
恍惚とした表情をする彼女を見たら、僕はもう我慢ができなくなって。
ミーシェとゆっくりと顔を近づけて、触れるだけの優しいキスをする。
「…………ぁ…」
「……ミーシェが可愛すぎて、我慢できませんでした。どこまで僕を惚れさせる気ですか?」
「うふふっ……どこまでも惚れて欲しいです」
ミーシェの真っ赤になった頬を撫でて、もう一度キスをする。
涙で潤んだ彼女の瞳を見ながら、微笑んだ。
「………愛してるよ、僕の可愛い姫君」
「………愛してます、私の優しい王子様」
僕達は愛を確かめ合うように、何度もキスを繰り返しました……。
*****
なんて甘い空気になった罰なんですかね。
ミーシェと会った数日後。
両親達にも話をして、ミーシェが成人すると同時に結婚する旨を伝えたら快く了承してくれました。
まぁ、母上がその口なので元々問題視してませんでしたが……順風満帆で幸せな気分だったのに。
僕の元に届けられた手紙を見て、僕は思いっきり殺気を放ちました。
そこに書いてあったのは、マグノール帝国の学園に留学生として勉強にきているテスティア帝国の皇子がミーシェを気に入ったから婚約解消を申し出てきたということでした。
あ?許す訳ねぇだろ。
僕は一瞬の内に転移をして、マグノール帝国の謁見の間にいる皇帝の元に現れた。
急な来訪者にその場にいた人々が警戒態勢に入る。
「おや、ルーク。元気そうだな」
しかし、勇ましい雰囲気の皇帝……竜皇ルーヴィット・フォン・マグノールはゆったりと笑いました。
かつてはリオンおじ様と隔絶があったそうですが、なんか色々あって普通の兄弟程度にはなったそうです。
僕は冷たい視線を竜皇に向け、薄ら笑いを浮かべます。
「どうも、ルーヴィット竜皇陛下。で?ミーシェを奪おうとする奴はどいつですか?潰していいですか?」
「竜人じゃない君の一途さには感激するな。でも、それをやられると国家問題になるから、決闘でもしてくれ」
「潰せるならいくらでも」
「だ、そうだぞ。ランツ皇子」
そこでやっと、僕は視線を動かしました。
紺色の髪に金の瞳を持つ、黒い軍服のようなものを着た青年。
十五、六歳くらいだろうか?
彼は不敵な笑みを浮かべて、こちらを見ていた。
「彼がランツ・デア・テスティア皇子だ。こちらは……」
「ミシェリアの今の婚約者というだけだろう。名前はいらぬ」
「あ?」
偉そうな態度を取る皇子に、僕は冷たい笑みを浮かべる。
テスティア帝国はここら辺でも一、二を争う軍事力を持っている。
こんな風に傲慢な態度になるのも仕方ないのだろう。
「俺はミシェリアが欲しい。だから、貴様には婚約解消してもらうぞ」
「嫌です」
「では、戦争も辞さない覚悟だ」
「………………」
おい……こいつ、ミーシェを手に入れるために戦争するぞって脅してるんですか?
誰が相手だか分かってないのか?
「………ルーヴィット皇帝」
「………あぁ」
「エディタ王国とマグノール帝国の許可を頂けたら、(国ごと)潰してきてあげますよ?」
「………もう少し待ってくれるか?今、リオンに確認させてるから」
「ちっ‼︎」
僕は笑顔のまま舌打ちをする。
それに伴ってこの空間の温度が下がっていたのだが……まぁ、知ったこっちゃない。
僕は冷たい笑みのままその時を待った。
「戻ったぞ……って、ルーク君?」
「こんにちは、リオンおじ様」
空間転移をしてやってきたのは、リオンおじ様。
僕を見て驚いた顔をしていましたが、おじ様があの手紙を送ったんでしょう?
「予想より早かったな」
「僕のお姫様のことですからね」
「ハッ……ミシェリアは俺の姫になるんだよ」
「……………」
パキンッ‼︎
一瞬の内に、謁見の間が漆黒の氷漬けになりました。
側にいた騎士達が悲鳴をあげ、皇子も狼狽します。
皇帝とリオンおじ様は仕方ないなぁ……みたいな顔してますけど。
「はっきり言って、今回の婚約解消を願っているのは皇子の独断らしい。だが、あの国は欲しいものは武力行使で手に入れるタイプらしくて、責任は自分で取る代わりに好きにさせろと言ってきた」
「あはっ、なら(国ごと)容赦なく潰してやりますか?」
「止めとけ。今のルーク君はまとめて周辺国も始末するだろ?」
「……………ちっ…」
「言っとくけど、ミーシェを抑えるのも大変なんだからな?あの子、自分で皇子を殺そうとし始めてるんだぞ?」
それを聞いた僕は、目を見開きます。
皇子もそれを聞いて、ギョッとしていました。
「なっ……なんでミシェリアがっ‼︎」
「お前がルーク君と離そうとするからだろう。いいか?はっきり言って、ミーシェはルーク君が育てたも同然になっている。まぁ、赤子の時から共にいて……溺愛して育てたらそうなるよな。つまり、ヤンデレだ」
「いや、リオンよ。つまりで繋がってないぞ」
「………そうか。ルーク君がヤンデレなのは、周知の事実じゃなかったな……」
あの、なんで僕のヤンデレが周知されてると思ったんですか。
エディタ王国では、父上のヤンデレが周知の事実と化してるのがおかしいんですからね。
「とにかく、ヤンデレに育てられたらヤンデレになったんだ。まぁ、幸せそうだからオレ達は〝まぁ、いっか〟となったが」
「相変わらず変なところで豪胆だな……」
ルーヴィット様がちょくちょく合いの手入れますね。
「それに加えて、ノエルが仕込んだから暗殺術だってお手の物なんだ。今はノエルが一緒にいて、抑え込んでるが……下手したら、ルーク君と無理心中しそうな勢いなんだぞ」
「えっ‼︎ミーシェが僕と無理心中しようとしてくれてるんですか⁉︎嬉しいなぁ……」
「…………それで喜べるのはルーク君くらいだからな……?」
だって、この世界を捨ててもいいほどに僕を望んでいるってことですよね?
幸せ過ぎじゃないですか。
まぁ、でも。
「大丈夫です、流石にしませんよ。ちゃんと両親達に孫を抱かせてあげたいですし」
「…………そうしてくれ」
遠い目をするおじ様を無視して、僕は愛しいミーシェのことを想います。
あぁ、会いたいな……。
会って、ドロドロに甘やかして。
俺なしじゃ生きれないようにして………。
「おいっ、お前っ‼︎無視するなっ‼︎」
………なんて思考トリップしていたら、ランツ皇子が目の前で睨んでました。
なんですか。
「何用で?」
「だからミシェリアと婚約解消をー……」
「俺に勝てもしない奴がしゃしゃり出るなよ」
「はぁっ⁉︎」
………あぁ、そういえば…最近、威圧なるものを覚えたんですよね。
僕はゆったりと笑って、他の人達に言った。
「すみません、少し威圧するので……漏れたら自力でなんとかして下さい」
「ゲッ⁉︎」
リオンおじ様が慌てて精霊術を発動しますが、それと同時に僕はギロリッと皇子を睨みつけた。
「ひぃぃいっ⁉︎」
それだけではい、出来上がり。
皇子は尻餅をついて、身体を震わせながら大量の汗と涙を零す。
下半身が特徴的な臭いがするモノで濡れてしまっています。
あぁ、いい気味だ。
………背後で『世界が軋んだぁぁぁぁあっ‼︎』とか、『油断したぁぁぁぁあっ‼︎』とか言ってる精霊達は無視しておきましょう。
「で?ミーシェを俺から奪おうって?」
カチカチと歯を鳴らす皇子は、言葉を発することさえできずに首を横に振ります。
それを確認して、僕よりも歳上だろう皇子の頭を撫でてやりました。
「いい子ですね。まともな判断ができるなら、きっといい皇帝になれますよ」
「…………は、いっ……」
「では、僕はこれで。リオンおじ様、ミーシェに会って行っていいですか?」
「あぁ、あの子を落ち着かせてやってくれ」
僕は頭を下げてから、転移でミーシェの元に飛びます。
ちなみに、ミーシェに会った瞬間、抱き締められて「婚約解消は嫌です‼︎」と、すっごく甘えてもらえたので幸せでした。




