七章三幕=大団円=
「というわけよ」
「俺が意識失っている間に……助けてもらってありがとうございます。あ、でも戦は……!?」
「そっちも大丈夫よ。黄金を沈めた後、千代ちゃんの元々の所属してたところの忍頭がテラサイトの王様のところへ書状と状況を伝えて今回の戦は手打ちになったわ」
「え、ど、どういうことですか?」
「千代ちゃんがね、向こうの妖使いを倒した時に情報を入手してね、黄金さえ倒せば殲滅以外に戦を終わらせる術があったの。だから近くにいた忍に伝えて殿様に、そして殿様が書状とかも速攻で書き終わらせて、忍頭に届けさせたの。悪魔憑きを除いたら一番速いからね、あの人」
にこり、と微笑む。
「でも、よかった……戦が終わって」
「それでも、双方に被害は出ちゃったけどね。こればかりは……仕方がないわね」
そうですね、と俺は答える。
アレだけの規模の戦だったんだ。被害がゼロなんてことはきっとありえない。そもそも俺や響さん、千代さんも怪我を負った。
人もたくさん死んだだろう。俺は黄金としか戦ってなかったが、千代さんは俺のサポートとして露払いとしての殺しもしただろう。
「……」
「暗くならないで。こうしなきゃ殺されていたのはこっちだったんだから」
ぽん、と優しく頭を撫でられる。
「……ありがとうございます」
「それと、龍臥くん。お願いがあるの」
「? なんでしょう」
「名前、呼び捨てで呼んで欲しいな」
「え、でも……」
「助けてあげたお礼として、それと……『昔』みたいにしたいの」
……昔みたいに?
それは一体、どういうことだろうか。
いや、まて。直近でもこんなことがあったような……
「ま、さか……」
「ふふ……久しぶり。私の王子様」
「ひび、き……なのか? ほん、とうに……」
瞳がじんわりと熱くなってきて、視界が歪んでいく。
「ごめんね、龍臥くん。今まで辛い思いいっぱいさせちゃって。そして……ありがとう。ずっと私のことを覚えていてくれて」
ギュ、と抱きしめられる。
すごく暖かくて、優しくて……あの頃の思い出がどんどんと蘇ってきて。
「ひび、きぃ……! あの時、助けられなくて……ごめん……ほんとう、に……ごめん……!」
ボロボロと涙がこぼれてきて、止まらなくて。
そこから言葉が出なくて、俺はただただ泣いて響さんを……響を抱きしめた。もう二度と離さないように、必死に抱きしめた。
「よしよし、今はいっぱい泣いていいのよ。私も今は、こうやって君を近くに感じていたいから」
そう言って彼女もまた、俺を強く抱きしめ返してくれる。
ずいぶんといろんな回り道をして、いろんな失敗もしたけど……こうして、戦は終わり……俺は大事な人と再会することができた。
これ以上ないくらい、俺には最高の奇跡だった。
ここで第一部完、です!
まだ続けていきたいと思うので、まだ完結にはしません。ここ一度完結させると続き書くとき別で作らねばなりませんもんね!
今後ともよろしくお願いします。