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迷走記  作者: 法相
六章=決戦=
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六章十幕=因果応報=


(ちくしょうちくしょうちくしょうがぁああああああああああああ!?)


 何重にも重ねられ、固められた土による牢獄の中、黄金は全力で脱出を試みようとしていた。

 しかし現在の彼は千代により打ち込まれた毒蛇により身体は思うように動かなくなっている。憤怒の感情に支配され、どうにか脱出しようと試みていた。


(口惜しいけど一回死ねば完全回復できる! それからここを脱出すればいい!)


 次なる報復を確実に、そう黄金は考えていた。

 程なくして黄金は息絶え、身体の再生が始まる。文字通り彼の身体には傷跡はなく、出血した後すらもなくなる。

 だが、それまでだった。


(う、動けない!?)


 確かに完全回復はした。全力も発揮できる。

 けれども黄金は動けない。彼を包み込んでいる土の牢獄は生半なものではない。鳳龍臥が信念と自分の命を賭して作り上げたものであり、黄金竹虎を確実に無力化するために練り上げた最大の牢獄だ。

 文字通り指一本すら動かせないほどに精密に土は黄金の身体を包み込んでいる。その硬度は鋼鉄にも匹敵する。それが何層も重なっているのだから身動きできないのも無理はない。


(くそ、でもまだだ。また死んで身体能力をあげればいつかは……!)


 息絶え、生き返り、息絶え、また生き返る。

 けれども未だに動けない。そして何より……『呼吸ができない』という最悪の事態を黄金は延々と繰り返す。


(苦しい。苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!!!!!!!!)


 周囲は暗闇。呼吸もできずに窒息死を迎える。

 そのループは黄金の精神を蝕むのには十分で、その間にもまた死んで生き返る。

 もしも宝剣を未だに握っていたなら突破できていた困難だった。当人は気づいていなかったがかの宝剣は特殊な付与を剣自身に与えるだけでなく、本人の能力のブースターとしての役割を担っていた、

 剣によって風を起こし、周りの土を削れば動けて脱出したであろうし、蘇生してからの身体能力の向上も今以上であり脱出はさらに容易であった。

 しかしその剣は響の渾身の一撃により巨大なヒビを入れられ、二撃目でへし折られた。

 すでに脱出の術は、なくなっていた。

 加えて、破格の性能を持つ能力には……限りがあった。

 完全なる不死など、存在はしないのだ。


(これで今日十二度目の死……! これでも動けないなんて後何回死ねばこの苦しみから脱出できるんだぁ!? ダメだ……また意識が……あれ、なんだか……今までと、違う……)


 黄金は知らない。

 自分の能力に回数制限があったことを。

 黄金は知らない。

 それが日を跨げば回数が戻っていたことを。

 黄金は知らない。

 このまま永遠の眠りにつくことを。

 黄金は知らない。

 龍臥たちは格下ではあったが雑魚ではなかったということを。


(いやだ……! 僕は、僕はこの力で……!)


 必死にもがくが、それは意味をなさず……彼の身体は二度と動くことはなかった。


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