五章六幕=束の間の安らぎ=
「……ん?」
目覚めた瞬間、違和感に気づく。
なんと言えばいいのか、すごく暖かい。これは自分の体温で布団が暖まったものではないと断言できる類のぬくさだ。というか密着されている。
そして、なにやら甘い匂いがする。
(……まさか)
視線を温もりの正体に向ける。
「んむぅ……」
(ひ、響さん……!?)
驚きに声を上げかけるが、そこはすんでのところで留めた。ナイスだぞ俺。
彼女は安らかな寝息を立てて熟睡しているので、起こすのは野暮というものだろう。
けれども、多少困ることには違いないのだが。なにせその、密着されているわけなので、その……当たっている。
「……もっと自分が魅力的な女性だって自覚を持ってもらいたいもんだけどなぁ」
俺もひねくれた性格はしていると思うけど、性欲なんかは人並みにある。我慢するのは大変なんだよなぁ。
まぁ、でも……起きた瞬間にこうやって大切な人の笑顔を見られたのは、幸運で幸せだ。
そっと起こさないように響さんの頭を撫でる。
艶やかな赤髪はさらさらとした手触りで、とても心地よい。
これでさらに強く、覚悟も誓いも果たそうとする気概が増える。
「絶対に決着をつけてやる。それで……護る」
力強く、俺は呟いた。