四章一幕=優=
「……ん。ここは」
瞼を開き、視線を彷徨わせると以前千代さんの蛇に噛まれた時に寝ていた部屋と一緒だと気づく。
とりあえず上半身を起こしてみると、身体に痛みが走ってうまく動けない。
どうしたものか。最後は響さんに担いでもらって逃げ出したのを最後に記憶がない。
と、そう考えた時に扉が開く音がした。
振り返れば、響さんと千代さんがいた。
「龍臥くん!」
「主人様ぁ!」
「いってぇえええ!?」
こちらが言葉を発する前に二人揃って俺に飛びつき、そのまま背中から布団に押し戻され、大ダメージが襲う。
「目を覚ましてくれてよかった! あれから三日も目を覚まさないからもう起きないかと……」
「あるじざまぁあ! おだずげになれずにずびばぜん! ぢよはやくだだずでもうしわけ……うぅええ……」
二人は涙を流しつつ俺が起きたことに喜んでくれている。千代さんは泣きすぎだと思うけど、それだけ心配してくれているのは素直にありがたいものだ。
「三日……そんなに寝てたのか……とりあえず千代さん、泣き止んで」
よしよし、と落ち着くように頭を撫でる。
それで少しは落ちついたのか鼻水をすすりながらこくこくと頷く。
「響さん、千代さん。心配してくれてありがとう」
「いいのよ。それよりも、ほんっとうに……生きててくれて……嬉しい」
涙がどんどん大粒のものとなり、響さんも嗚咽をあげる。
「ご心配、おかけしました」
自然と、手が彼女を抱きしめるように動いていた。
それがなんだかとても懐かしくて、本当に響がここにいるようで、自然と涙が流れていた。
結局俺たちは三人揃って涙を流し、しばらく泣き疲れるまで泣いていた。




