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迷走記  作者: 法相
三章=邂逅=
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三章二幕=鉄華領最強の男=

GA文庫応募用に作品を送りましたし、この作品も少し形を変えて送り出してみようかしら。

「そういえば龍臥くんはあいつにはまだあってないわよね」


 領内の森を見回り中、ふと響さんは口を開く。

 一体誰のことなんだろうか、千代さんは心当たりがあったのか「ああ」と口に出す。


「あの方ですか? 私が帰ってからあってないですし、ひび姉があってないというなら間違いなくお会いになってないでしょう」

「よねー」


 二人の間で会話が成り立っているが、俺にはさっぱりわからないので聞いておくことにした。


「あいつって誰ですか」

「ウチの城の最強の男よ。私や千代ちゃんもまともにやりあったら勝てる気がしないわ」

「そんなえげつない人いるんですか」


 ますます恐ろしい城だった。

 響さんに千代さん、この二人だけでも大層な戦力であるはずなのに、その二人をも上回るほどの人間がいるなんて。


「どんな人なんですか?」

「そうね。まず兄貴肌よね」

「ですね。それでいて面倒見もいいので周りからも慕われています」

「それで過去を含めた領内で最強の悪魔憑き」


 得心する。確かに普通の人間では悪魔憑きである二人についていくのも一苦労だろう。


「でもね、あの男は能力は何も持ってないの」

「え?」


 何もない?


「文字通りの意味でね。悪魔憑きとしての身体能力と持ち前の直感だけで最強の座についてるのよ。一度見せてやりたいわ」

「しかし私たちとしてはちょっと苦手な部類ですが。主人様もあの方にはお気をつけください」

「気をつけてって……なんでさ。その人は仲間なんだよね?」

「そうです。ですが……」

「二人とも、待って。なんか気配がするわ」


 響さんは立ち止まり腰の刀に手をかけ、千代さんも手から蛇を出しクナイをもう片方の手に握る。

 確かに足音が聞こえる。この音は複数人で、こんなシーンは確か最初に響さんとあったときにもあったような。

 テラサイトの騎士連中だろうか。


「……? おかしいですね、足音が減っていきます」


 不審そうに千代さんがつぶやき、俺も疑問を抱く。

 俺にはかすかにしか聞こえない足音だが、確かに減ってきている。

 俺たちはなにごとかと確かめるべく足音の方向へ歩みを進めていった。

 ほんの数分もしないうちに、足音がかなり近くなってきた。

 それと同時に、悲鳴が聞こえた。


「うわぁあああああ!?」

「なんだこいつ!? あれだけいたのになんでこんな一方的……ぎぃ!?」


 声は二つ。

 しかしその悲鳴を最後に途絶えた。


「おいおい……」


 俺の視界には今しがた絶命したテラサイトの騎士の死体が転がっていた。

 そして、そこにもう一人……知らない男性が立っていた。

 長い髪を後ろで縛っており、目つきは鋭い。その手には槍を持っており、すでに多量の血で濡れていた。


「ったく、こんなもんか」


 あくびをしながら槍をふるい、血をはらう。


「あんた、何モンだ」

紅龍くーろん……」

「え、知り合い!?」

「知り合いも何も……こいつがさっき言ってた鉄華領最強の男よ」

「この人が!?」

「ん? 風峰の嬢ちゃんに忍者娘か。奇遇じゃねえか」


 男性は先程までの空気とは打って変わり、さっぱりとした笑顔でこちらを向く。


「そっちの兄ちゃんは見ない顔だな。あれか、噂の客将か?」

「あ、はい。一応……鳳龍臥と言います」

「おう! 俺は九条紅龍くじょう くーろんだ。よろしくな」

「あんた、なんでこんなとこに?」

「見てわかんだろ? 不法侵入してきてウチの領を狙ってきた不埒者を排除してたんだよ」


 死体の方を指さし、彼は笑う。


「どいつもこいつも歯ごたえがねえ。テラサイトの連中も攻め込もうとするんだったらこの三倍は持ってこいって話だよ」

「……確認までに何人仕留めたのでしょう」

「こいつらは二十人、襲ってきた妖は三十くらいだな。それがどうかしたか?」

「……数がおかしくないですか?」

「んなこたぁねえよ。悪魔憑きばかりが相手ってわけじゃねえんだ。これくらいなら嬢ちゃんたちでもやれるしな」

「鎧を貫通させるとかはそうそうできないけどね」


 あまりおもしろくなさそうに響さんは答え、千代さんも俺の横でクナイを構えたまま臨戦態勢だ。


「て、なんで構えてるの?」

「……紅龍殿が主人殿に対してなにかを仕掛けないようにと」

「おいおい、いくらなんでもそんなことしないでしょ」

「そうだぞ忍者娘。やるのは城に戻ってからだ」

「は?」

「やっぱり……この戦闘狂め」

「な、なんでやりあうんですか?」

「なぁに、実力を見たいんだよ。そこの忍者娘を止めたからには期待してるぞ、坊主」

「勝手に話を進めないでもらえますか!?」

「いやいや。大事だぞ? なんせ今後大事な戦力になるか調べなきゃいけねえだろ。そんじゃ、城で明日にでもやりあおうや」


 景気良く笑いながら紅龍さんは去っていく。


「龍臥くん、あんなの断ってもいいからね」


 呆れたようにため息を吐き、響さんは「あれは勝手に言ってるだけだから」と。


「ひび姉の言うとおりです。主人様があの方の勝手に付き合う必要はありません」


 千代さんまでこう言ってくれているが、俺は……


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