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迷走記  作者: 法相
一章:鉄華城
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一章一幕=面影重なる=

 職場の部署変わりに少しずつ慣れてきた。

 これからも仕事頑張りながら書いていこう。

「私の名前、なんで知ってるの? 道化師が教えたとは思えないんだけど……あいつ私の名前知らないし」


 彼女、響は俺に対して不思議そうに質問を投げかけてくる。

 当然か。俺も見知らぬ誰かに自分の名前を知られていたら驚くし、同じ疑問を抱くだろう。


「……見た目がまんまな知り合いの名前だしたら、名前も同じだったってだけだよ」


 焦る気持ちを抑えながら、彼女に視線をやる。

 腰まで伸ばした赤い髪、。そしてやや勝気なツリ目でエメラルドグリーンの瞳。赤髪と活発な印象を受けるのが差異だが、それ以外が完全に一致しているので他人の空似というには、あまりにもそっくりだった。


「そんなにそっくりなの?」

「驚くほどに。ね。まさか本当に同じ名前だなんて思わなかったけど」

「奇妙な偶然ってあるものね」

「そう、だね……あと、ここがどこだかもわからないから説明をくれると助かるんだけど……まぁ、あのピエロの名前だしたあたり、共犯者ってところか」

「まぁ共犯者、といえば共犯者かしら……自己紹介するわね。私の名前は風峰響かざみね ひびきっていうの。所属は鉄華城てっかじょうで一兵士として働いてる者よ」

「……兵士?」

「そうよ。それでここは鉄華城の領地内にある洞窟。まぁ詳しく話すとめんどくさいことがあるから保留するけど、君を呼び出したのは私で間違いないわ。異次元道化師の力を借りてね」

「あの異次元の道化師っての、なんなんだ? 少なくとも人間じゃないようだけど」

「ええ。人間じゃないわよ」


 さらりと認めてくれる。やっぱり人間じゃないのかよ、あいつ。


「あれはあやかしよ。他じゃモンスターって呼ぶらしいけど、私らは妖って呼んでる種族。いわゆる人外っていうやつね。それより君も名前を教えなさいよ」

「……鳳龍臥。墓参りをしてたところにあのピエロの扉に吸い込まれて気づいたらここに落ちてきた十七歳だよ」

「へぇ、私より一つ下なのね」


 簡単に、そして雑な自己紹介で返す。

 一呼吸を入れてから尻を叩いて立ち上がり、彼女の元へ近寄る。

 ……やはり見れば見るほどそっくりだ。俺の幼馴染みであった桂響に、瓜二つだ。


「ちょっと、人の顔をジロジロ見てどうしたのよ」

「あ、ごめん。本当に、俺の知ってる響にそっくりだったから……」


 過去のことを思い出し、そして……


「ちょ、急に泣かないでよ。どうしたの?」

「え……あ、ごめん」


 思わず、涙が出てしまった。

 もう二度と出会えるはずがないと思っていた彼女に、異世界に渡ったというとんでもない体験をして出会ったことに、感情を御しきれず涙を隠せなかった。


「ふん、ほんと不思議な人ね。ま、でも異次元道化師があとはハズレを引いてこなかったかどうかってとこね」

「……そういえば、なんで俺を呼び出したわけ? 正直勇者とかそういうものでは決してないよ、俺」

「勇者……? 初めて聞く言葉ね。でも呼び出した理由は、戦の助っ人よ」


 ……今、この人なんて言った?

 戦、と彼女は言ったように思う。というか、言った。むしろ断言した。

 ここが異世界だというのはこの状況を見てわかった。そしてあのピエロはモンスターの類だということもわかった。

 ……この状況でわかるのは彼女、響さんが鉄華城なるものの所属で、モンスターがいる世界だということ。彼女の服装は和装に近いのでいわゆる和風ファンタジーな世界だという認識だ。

 当然、城が一つだけということもないだろうしそこに軍隊などもあるのだろうが、モンスターがいるのに人間同士が争うというのは無意味に思えるんだけど。


「あ、もしかしてモンスターとの戦いってこと?」

「違うわよ。人間同士で争う戦よ」

「やっぱりそっちの意味かぁ。まぁだよねぇ……」

「ま、詳しくは洞窟から出て領内に戻ってから話してあげる。ほら、いきましょ。龍臥くん」


 響さんは俺の手を掴み、どこか嬉しそうな声で俺を引っ張っていった。

 洞窟はかなりの小規模だったようでものの数分で外にでる。

 洞窟から出て視界に移ったのは、一面に広がる綺麗な緑の森林だった。ただ違和感があるとするならば、なんか白いのがどんどんこちらに距離を詰めてきているのが見えるということだろうか。

 足音の人数から察するに人数は十人前後。隣では響さんがめんどくさそうな顔で「余計なのきちゃったわね」とぼやいている。どうやら相手に心あたりがあるらしい。


「しかたないわね……逃げるのも億劫だし、やりますか」


 やれやれと言った様子で髪の毛を後ろで一つに結び、臨戦体制を整えていく。

 戦う。

 誰が? もちろん彼女が戦おうとしているということだ。


「ダメだ」


 だからだろう、俺の口から本音が漏れていたのは。


「え?」

「響さんは、戦っちゃダメだ」

「あら、なんで? 言っとくけど女だからって理由なら聞かないわよ。これでも私は……」

「女だからとか、そんな理由じゃなく……俺は響さんを戦わせたくない。危ない目にあわせたくない」

「……初対面の女性にそこまで言えるって、龍臥くんってば面白いわね。好感度高いわよ?」

「お好きにどうぞ。俺は俺の理由で、あなたを戦わせたくないだけだ」


 もうこの世にいない響と瓜二つである彼女に、傷ついてほしくない。それは本当の気持ちだ。

 守れなかった彼女と、それこそ名前まで一緒である彼女を傷つけさせるのは……俺のなけなしのプライドが許さない。

たとえ彼女が戦える人であろうと、傷ついて欲しくない。

 傷つけようとするのならば、どんな相手であろうと、許す気は無い。


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