二章十幕=不穏=
短いですが投稿します。金曜日は倒れたりしました。やばかったっす
「さて、二人のおかげで千代が牢屋から出てきて話をしてくれることになったわけだけど……」
腕を組みながら殿様は苦笑を隠しきれずにいる。それは殿様の隣に座っている姫さまも一緒で、愉快そうに笑っているのは響さんくらいなものだった。
ともあれ、俺もその反応には仕方ないと思っている。
なにぶん、俺の腕には千代さんがべったりとくっついているのだから。しかも離さないようにしっかりぎゅっと。
小さいながらもふっくらとしたソレは間違いなく腕に当てられており、千代さんの方は真顔であることが余計にシュールさをかもしだしている。
結論から言えば、俺は高垣千代という少女に懐かれた。そういうことだ。
「……千代。楽しんでるところ悪いんだけど、一旦離れなさい。真面目な話をするんだから」
「も、申し訳ありません殿」
今度はほんのりと頬を染めながら俺から千代さんは離れる。若干名残惜しそうにしているのは気のせいだと思いたい。
隣では「すっかり懐かれたわね」とからかうように響さんは言う。
「で、気持ちよかった? 千代ちゃんの乳房?」
「ちょっと静かにしましょうか」
おっさんか、この人。
「じゃあ千代、お前がわかったことを全部話してもらおう。きちんと終えたら鳳くんにまた抱きついていいから」
「殿様?」
「は。まず、偵察に向かった私を含む三名ですが……失態を犯し、同行者であった二名は殺され、生き残った私はテラサイトの妖術師により意識を奪われました」
「よくそこで生き残れたね」
「向こうもこちらの情報が欲しかったのでしょう。そして意識が戻った私は拷問を受け、辱めも受けました」
千代さんの肩は、震えていた。
拷問と辱め、想像しかできない俺には彼女がどんなにひどい目に遭わされたかはわからない。
だからというわけではないけど、なるべく優しい力で肩を支えた。
「鳳、さん」
「千代さん、大丈夫?」
「は、はい。……ありがとうございます」
ぼそり、と小さい声でつぶやき、再び殿様の方を向いて彼女は説明を始めた。
「私は意地でも喋りませんでしたが、痺れを切らしたテラサイト側はとある妖を連れてまいりました。名は確か『まりおねっとしゃどう』と申しておりまして、それを私の口に飲み込ませました」
まりおねっとしゃどう……舌ったらずな発音だったがおそらく『マリオネット・シャドウ』が正しい発音だろう。
和訳すると操る影、みたいな感じだろうか。
とはいえあの時彼女の中にいた黒い奴はそいつで間違い無いわけだ。
「それで、そこからの記憶はあるのかい?」
「ございます。なんのために潜入したか、密偵は他にいないか、他にも細かなことを聞かれましたが概ねはここに集約されており、私の意思とは裏腹に口は勝手に動きました。そこで、私が姫と幼なじみであることも……」
「なるほどね。しかし千代……君は自害を選ばなかったんだね」
殿様の空気が、一変した。
まるで心が冷え込みそうなほどに冷たく、そして鋭い視線を彼女に向けていた。