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迷走記  作者: 法相
二章:忍
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二章八幕=立場=

人の立場というのはとても難しいな、というのは日常生活でよく思うことです。

ゲームなどでも大変なのに、現実はもっと厳しいしわかりづらい。

相互理解って厳密には絶対無理だね、と考えます。

「……そういえばここは」

「城の医療室よ。千代ちゃんもほんとはここに運びたかったけど、必要最低限の処置だけして牢にいれられちゃったの」

「え、いくらなんでもひどくないですか?」

「ひどいこと、なんてことはないよ」


 扉が開き、殿様こと護さんが姫さまと共に入ってきた。


「鳳さん、目が覚めたんですね。よかったです……」

「ご心配をおかけしました……ところで、どういう意味ですか殿様」

「操られていたにしろなんにしろ、千代は明確な敵意を持って風峰ちゃんと君に危害を加えた。これで罰を与えないのは他の家臣たちにもいらぬ不信感がはしる。蒼蘭にも文句は言われてるけど、勘弁してくれ」


 殿様は少し疲れた様子でそう答え、俺もそれに完全には納得できはしなかったが、一理はあるということは理解できた。

 たとえ娘の不満を買おうが、殿様は多数の人間を見なければいけない存在だ。ましてや姫さまのための戦いだ。多少の罰は与えておかねば示しもつかないのだろう。


「……千代は牢の方で拘束している。会いたいのなら止めはしないよ。むしろ情報を君と風峰ちゃんがあった方が話はスムーズに進むかもしれないから助かるかな」

「そうですか。だったら、すぐにでも行かせてもらいます」

「千代の毒を受けたのにもう立ち上がれるほどに回復したのかい? こりゃすごい」


 少し驚いた様子ではあるが、寝ている間に解毒剤なり血清なりを打ってもらってるんだろうからそう特別なことじゃないだろうに。

 確かにまだ身体にいくらかの痺れはあるけど、響さんにも言った通り普通に動くにはさしたる問題にはならない。


「一人で行かせないわよ。もちろん私も行くわ。ほら、倒れられたら面倒だから肩もかしてあげる」

「ありがとうございます」

「いいってば。それに龍臥くん、牢の場所もわからないでしょ」

「そうでした……」


 感情型よね、君。

 そう言って響さんは笑いながら共に牢屋の方へと向かっていった。



「……」

「そう睨まないでくれよ、蒼蘭。千代がお前の大事な友人であることは承知の上だが」

「お父様の言っていることはわかります。それに、私のことを思ってくださっているのも」


 きっと不服そうな顔をして私はお父様の顔を睨みつける。

 苦笑しながら私の視線から目をそらし「本当にごめん」とだけ謝った。

 お父様も千代のことはすごくかわいがっていた。だからこそ信頼と信用を持って密偵の任務につけたのだ。

 千代の腕はこの城の忍びの中でも実力者であり、悪魔憑きに覚醒してからはなおのこと強くあった。

 けれどもその千代が今回の事件を起こしてしまった。

 正常でなかったのは見ててわかったし、実際に意識を取り戻した際には泣きじゃくって私たちに謝っていて、拘束にも抵抗はしなかった。

 あの鳳さんが引きずり出した黒い物体は、おそらく妖に連なる存在だ。


「……お父様、なぜあの二人にお話するように促したのですか?」

「ん?」

「千代はお父様にもきっと経緯を話すでしょう。わざわざあの二人に行かせずとも」

「僕が行くとあの子は、話した後に意地でも自害すると思ったからだよ。だからこその拘束だけど、舌を目の前で噛みちぎられても困るし」

「その根拠はあるのですか?」

「それは蒼蘭の方がよくわかっているだろう? 千代は忍びとして優秀で、すごく真面目だ。今回の件は僕が仮に許すと言っても、あの子は本心からそうとは思えない。そして蒼蘭、君でもだ」

「私でも、ですか?」

「そう。今回の事件はお前を狙ったもので間違い無い。で、千代も操られて限界以上まで酷使させられて……死なされていただろう。鳳くんとの戦い中に限界寸前まできたようだったけど、お前を連れされればそれで問題なかったんだろ」


 本当に胸くそ悪い、と怒りを込めてお父様は呟く。

 お父様も本当に千代のことを心配している。ただ立場がそれを表に出すのを躊躇わせているのだろう。


「今はあの二人に千代を任せよう。なんとなくだけど、あの二人ならどうにかしてくれる気がするんだ」

「……わかりました」


 今私がどうしようもないのは事実。

 お願いだから、またみんなで仲良くお話ししましょう。



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