自宅の床下から這いずる何か…
はじめ気になったのは臭いだった。
夏になった頃、何処からか悪臭が臭ってくる。
そのことがきっかけで家族は大変な目にあうことに…。
息子は中学生。
野球部に入って毎日練習している。
娘は高校生。
テニス部で楽しくやっている。
私は専業主婦なので特に何かをするでもない。昼間は一人ぽつんと部屋の中心に座り、テレビを見ている。
旦那はこの時間は仕事。なので自由だ。
はじめ臭いに気づいたのは息子だった。
「母さん、なんか変な臭いしない?」
「ん〜?そっかなぁ〜。母さん気づかなかったよ。」
「なんかさー、変な匂いがする。腐ったような臭い。」
息子に言われて臭いを嗅いでみると確かに何か臭う。それはなんとも言えない臭いだった。誰かが生ゴミでも捨てたか?
私の家はゴミの集積場に一番近い為、夏場は臭うことがあったからだ。今回もてっきりそうだとばかり思っていた。
「明日ゴミの日だから早めに出した人でもいるんじゃない?」
「そうなの?でもさ〜臭いよね〜。」
確かに臭ってはいた。
どこから臭うのか…臭いの元を辿って見ることにした。
集積場にも行ってみたが、臭いが違っていた。
腐敗した何かの臭いのような気がする。動物でもどこかで死んでるのか?
うちの敷地内かもしれない。
嫌だわ、そう思った。
家の周りをぐるっと回り、くまなく探したが動物の死骸はおろかゴミもない。綺麗なままだ。
「どこにもないわよ。」
「でも臭うでしょ?お母さん。」
「そうね〜。でもどこから臭うのかしら…。」
「もしかしたら…床下からだったりして。」娘はそう言いながらキャッキャッと笑っていた。ならばとフローリング用のカーペットをめくり、床板をはがし始めた。古い家なのではがすのも割と簡単だ。
二〜三枚板をはがすと頭をそこに突っ込んでぐるっと見て回った。すると隣の部屋あたりの砂山がこんもりとしているのが見て取れた。土台は砂地だがならしてあるはず。
おかしい。
場所を確認すると頭を引っ込めて板をはめ直した。そして問題のある部屋の床板をはがして見ることに…。
するとそこにあったものは…。
大きなビニール袋だった。
何かが入っているようだ。
真っ黒い袋だった。
それが幾つも積まれていた。
なぜそんなものがうちの床下にあったのか…わからない。持ち上げようとしたが重くて持ち上がらなかった。
気持ち悪い。正直な感想だ。
だが主人が帰ってくるまでそのまま放置するしかない。
しかし、そういう時に限って帰りが遅かったりなんかする。
「もしかして前の持ち主が隠してったものだったりして。」
「それってなんだよ。」
「知るわけないでしょ〜。それか、死体だったりなんかして。」
「よしなさい、気味悪い。そんな事より早く寝なさい。もう10時よ。」
「「はーい。」」
そう言って子供達は布団に入った。
私は主人が帰るのを待っていた。
11時頃だろうか、ようやく帰ってきた主人に床下に入っていたもののことを話して聞かせた。
「そりゃ気味悪いな。明日にでも取り出そう。」
そう言って主人はそうそうに布団に入ってしまった。私は気になって眠れない。
あの床下にあるものはなんなのか…考え出すと止まらない。眠れなくなってしまった。その時遠くでカタッと小さな音が聞こえた気がした。本当に小さな音だったので聞き間違いと思い、そのまま布団に入っていた。すると今度はガシャガシャと何か袋から出すような音が聞こえた。
誰かがうちのそばで何かしてるのかな…やだわ。そう率直に思った。
でも、あの音はどこから聞こえてきたのだろう…。室外ならもっと小さな音じゃないのかしら…そう思った。じゃあ、どこから?
緊張しながら布団をめくり部屋を出た。そして音がする方へと向かうと…床板がめくれ上がり、何かが見えた。
何が?
緊張しながらも一歩また一歩と音がする方へと歩いて行くと…塊は腕だった。
「キャー!!」
私は叫んで寝室に眠る主人を起こしに戻った。
「ねぇ、貴方。起きてよ。起きて。」
だがピクリともしない。
子供たちの部屋に入って同じように起こそうとしたが、起きなかった。
私一人だけ…。
怖い。
怖くてどうにかなりそうだった。
朝まではまだ3時間ほどある。
もう一睡もできなかった。
這いずる音が遠くの部屋から聞こえてくる。
パジャマで逃げるしかなかった。
でも何処へ?
みんな寝ている時間。起きてる人はいない。
とにかく着の身着のまま寝室に戻る。だが、近づいてくるような気がしてならない。主人も起きてはくれない。
何度もなんども揺すったらなんと起きてくれた。子供たちもそうやって何度も揺すって起こし、事の内容を明かしみんなで見に行くことに。
恐る恐る近づくと確かに床板は空いていた。ちゃんとしめたのを主人も確認している。
じゃあ、お母さんがというが私は開けていない。だとすると誰が?
皆固まった。
そして各々武器になるものを手に部屋中をくまなく見て回ることになった。
一部屋、また一部屋。
異常なし。
最後にもう一度床が空いた部屋に向かうことに。床下に置かれていたゴミ袋も出さないといけないからだ。
部屋の電気をつけ、穴を覗き込むと主人は真っ青になって背後に逃げた。
「パパどうしたの?」娘がそう言いながら穴を覗こうとすると「覗くんじゃない!」と主人が叫んだ。
「どうして?特に何もないんでしょ?」
穴を背にしていた娘の後ろ、穴から徐々に何かが浮かび上がってきた。
皆真っ青になって言葉も出なかった。そのただならぬ様子に固まった娘は「なに冗談してるの?」と言いながら後ろを振り向いた。
主人が声をかけるまでもなく、娘は悲鳴をあげた。
そこには空中に漂う首があった。
そして肩には腕が。
固まって動けなくなっている娘に走って行き肩の手を振り払うようにしてから娘を引っ張った。
娘は泣き出し、息子は真っ青で固まっていた。
家族は慌ててその場から逃げ出した。
朝になってようやく自宅に帰ってきたが、怖くてなかなか家の中には入れずにいた。しかし平日な為学校や仕事がある。着替えなくてはならない。皆で固まって行動した。
そして必要なものを最低限持って皆で家を出た。
私以外は学校や仕事がある為いいが、私はと言うと家に帰れず喫茶店で時間を潰した。
皆で家に帰り、穴を見たが、穴には何もなかった。ビニール袋もだ。あの袋は一体なんだったのか…。そしてあの首だけの塊は一体どこへ消えたのか。誰も知らない。




