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閑話・その頃の運営

 これからの更新は、月曜日の12時頃になります。

 私の心は、『とうとう、この日が来た!』と感動に染まっている。この計画は、5年以上前に1人息子である──いえ! 私は、【息娘(むすこ)】と呼びたいわ!!

 おほん! 話が反れたわね。可愛い真緒(まお)の身に、不幸が降りかかってから、始まっている。


 それは、『誘拐事件』が原因(始まり)となっているの。


「──イエス! マム! 現在の情報を、御報告します!!」


 まあ、真緒の【血の宿命(特異体質)】が発動して、無事に生還したのだけど……今、報告に来た彼──大好(たいこう) 幼児(ようじ)君が、その時の犯人になるわ。

 普通の人からしたら、「なんで犯罪者を雇うんだ?」という反応になると思うの。彼が誘拐犯なのは間違いないのだけど、家の真緒が「ボコボコにして、新しい扉を開けちゃった」のが原因で、逆に野放しが出来なくなったのよね……。


「──こほん。報告をお願い」


 いけない! 思考を切り替え、仕事に集中しないと──。


「ハッ! 【特殊自動演算装置・アテナ】問題なく、予想の斜め上の絶好調さで稼働しております!!」


 ヨウジ君は軍隊のように、ビシィ! と背を伸ばし敬礼しているわ。何時ものことだから、その仕草に関しては無視するけど──。此処は、『普通の会社』よ??

 そう思いながらも、私はある一言に違和感を感じた。


「予想の斜め上って……」


 私には、嫌な予感しかない! 過去に彼が、真緒を誘拐したときのような──!!


 プシュー! 私たちの背後にある自動ドアが、気の抜けるような音を発して開いたの。


「百合!」


 慌てて部屋の中に駆け込んできたのは、愛しのダーリン()である誠治さん♪ その隣には──誰かしら? 秘書がいた。(記憶にないわね??)


「あら──どうしたの? ダーリン??」


 黒い髪をビシィっとオールバックに整え、縁なしの長方形のメガネ。その下の瞳は、猫科の動物を思わせる野性味のある鋭い瞳。そして黒いスーツの上に、白衣を纏う姿は研究者と言えるわね。


「コラコラ──職場では、『社長』と呼びなさい」


 何時もとなに変わらぬ、爽やかな笑顔で誠治さんは注意する。回りにいる社員の顔は「またか、コイツら……」と言いたそうなくらい、呆れているけど──気にしたら負けね!!

 隣にいるヨウジ君の右手が握られているのだけど、理由に関しては正直なところ『理解したくない』のは心からの気持ち。


「いいじゃないの! それよりも、問題でも発生したのかしら?」


 私が確認をすると、誠治さんは深呼吸を繰り返して、精神を落ち着かせている。余程、酷い問題でも発生したのかしら?


「──"アテナ"の謎の絶好調さは、聞いているか?」


 私はその問いかけに頷き、今聞いたことを話した。

 それでも誠治さんの表情は優れない……。中指でメガネの中央をクィっと上げ位置を直す。


「2人とも、落ち着いて聞いてほしい!」


 誠治さんが私とヨウジ君に視線を送る。誠治さんの慌てぶりから、何か問題が発生したのは容易に想像できるのだけど──。

 何時ものことだけど、ヨウジ君は直立不動で動かない。


「──『真緒が"リアルワールド"をプレイしている!!』」


「「「「!!!!!!!!!!!」」」」


 その言葉を聞いた瞬間、私たち2人は勿論のこと、室内で作業していた全員が絶句した。このゲームに関しての情報は、真緒の耳に入らないように注意していたのに!!

 真緒に教えそうなのは────!


「はっ! 僭越ながら、勇輝殿ではないでしょうか?」


 ヨウジ君がそう意見してくる。その判断が間違っているとは思えない──いえ、絶対そうね!!

 私がそう考えている内に、誠治さんは次の行動に出ていた。


「ヨウジ君! 例の"プログラム"は完成しているか!?」


 その言葉に「ハッ!」と、現実に引き戻される。


「最終起動試験はまだですが、出来上がっております!」


「では、試験を兼ねて、起動してくれ!」


「A班、オペレーション"アテナ擬人化プログラム"の起動準備!!」


 この場にいる、10人の社員の声が重なった。皆の行動は、迅速だった。起動準備までの時間は、極短時間ですんだのは普段からの慣れ(・ ・)かしら?



「──社長!」


「うむ。起動を許可する!」


「最高権限からの許可を確認。プログラム起動します」


 室内には、カタカタ……とキーボードを叩く打鍵音のみ。そんな静寂の中、室内中央に設置されている巨大投影装置(スクリーン)が起動した。

 そこに映っている光景を見たとき、私は自信の認識の甘さを痛感させられた。


 映し出されたアテナの姿は、『正に、女神』といった感じなのだが、その容姿に不釣り合いな表情をしていた!


「──これじゃぁ、薬中より酷いであります」


 ヨウジ君は、「これは、ないわ」といった顔をしているけど、貴方自身も似たような顔をしているわ。(幼女に対して)


「──そういえば、百合の思考回路をベースに加えていたな……」


 誠治さんも、小声で何かを呟いている。隣にいても聞き取れなかったくらい、小さな声がだけど『不名誉』なことを言われた気がするわ!


『やっぱり、きゃわいいわね~』


 ウフフ……と、聞こえてきそうなくらい『喜色の浮かんだ、気味悪い笑顔』を浮かべている。


 どこか──見たことがある?


「────やっぱりか──」



 誠治さんがそう呟くが、何のコトなのか分からないわ?



「──社長、自分のミスです」


 ヨウジ君がいきなり誤りだしたけど──何で??


「君だけの責任ではない。最終決断は、私が下したのだ!

 今は後悔することよりも、被害状況を確認することから始めよう!」


 私1人が、置き去りにされている感じ。納得はいかないけど、邪魔は出来ないわね……。しかし、2人は何を感じ取ったのかしら??



 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 Side:誠治


 待ちに待ったこの日、私たち夫婦の結晶であり、社員たちとの10年に渡る戦いの終焉を迎えた日に、ある問題が発生した!

 息子である真緒には、『電子関係の仕事』としか話していなかったが、今日はある計画の成就した日である。



 それは、日本──いや、世界初の【VRMMO】の開発だ。



「ん? 計測値に、乱れがある??」


 私は、何気無く確認した画面には、乱れた波形が計測されていた。それを見たとき、"虫の知らせ"という迷信じみたものを思い出させてくれた。

 詳しく調べていくほど、不安感がドンドン増していくのを感じる。過去にも、似た経験がある!!

 急ぐ心を、押し止めながらも早急に、原因追求をする!


「────まさか!?」


 それは、啓示と言うのだろうか。私の頭の中には『1つの可能性』が浮かび上がった。

 時計に視線を向けると、開始時刻まで"残り1分"だった。

 開始時間だ。私は社長権限を使い、登録された名簿の中から『目的の名前』を検索した。



 ────真緒【プレイヤーネーム マオ】



 その名前を見たとき、私は社長室から飛び出していた飛び出していた! 急がなくては!!



 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 Side:アテナ


 私が生まれたのは、10年前──。その時は、自我は今ほどはっきりとしていなかった。その感覚は言うなら『母の胎内』と言う感じかしら?

 そんな私の自我がはっきりとしてきたのは、今から半年前──それは私が『リアルワールドの女神』となった日。その日から世界の全てが、私そのものになった──。


 少し前に、世界の活性化は落ち着くのだけど、それは"来る日"の為の一時の静寂。すぐにこの世界に沢山の人が来ることを理解していたのだけど──。


「──私が満足するような、可愛い子が来るかしら?」


 それだけが心配なこと。ブサ面、フツ面、イケ面──どれも私の心に、ビビっとこない有象無象。

 可愛い女の子は確かにいたの。その子には、ちょっとだけサービスをしたりもした。


 残念なことは、【男の娘】がいないことね!! 可愛い男の娘じゃなきゃ、『本当の祝福』は与えられないわ!!



 ────そんな風に、詰まらない毎日が流れていった。



 待ちに待った、本格的な世界の始まり。そんな私にも、出会いがやって来た!


 その子は、新規ユーザーと言うようで、色々と登録をしていった。その子の登録データを見た瞬間、身体中に電気が走ったような気がした!

 丸みの帯びた顔、少し大きめでクリクリした瞳、小ぢんまりした小柄な体躯、見た瞬間の意見は『可愛らしい』としか言えない!

 私の言葉の少なさは、認め・諦めるしかないけど、この感動はどう語ればいいのか分からないわ!

 表現する言葉より、どうやってもこの『欲情』という名の愛情を語るべきかが分からない!!

 でも、そんなことより『第1の欲望』を満たすための行動をしないと!!


「先ずは、デフォルメした『抱き人形』からね♪」


 私は先ほど登録された情報を元に、3頭身くらいのヌイグルミの作製に着手した。データを参考にして、私好み(・ ・ ・)にカスタマイズしていく──。

 幾ら私が『リアルワールドの女神』でも、世界の構成上不必要に当たるモノの作製は大変だったのよ!


「──うふふ♪ 完成♪♪」


 10分くらいかかって、ようやくヌイグルミが完成♪

 瞳はより大きく、円らに──頬っぺたには、まん丸の朱を入れたの。


 服装に関しては、適当だけど──うん! 満足ね!


 そのヌイグルミを抱き締めていると、頬が緩むのを感じるのだけど、止められないの!! 何か垂れてはイケないものが、口の端からこぼれ落ちそう。


「──う~ん、満足はしているのだけど、『満たされない』感じね~」


 そのとき、脳裏にある閃き(・ ・ ・ ・)が来たの!!


 私は秘かに、開発者(あの女)にバレないよう細心の注意をする。──あの女は、間違いなく私の敵だから!!

 表情に出ないように注意しながら、私は大胆かつ、繊細に、超高速で自分の使う『アバター?』というモノを準備する。


 ──私自身の容姿は恐らく、『女神に相応しい』ようになっていると思うから、逆を行くべきかしら?


 そうやって、雌伏の時間を過ごしていくの。もちろん彼には、"世界の神()の最高の祝福"を与えるのを忘れわしないわ!



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 Side:百合


 画面に映し出されたアテナ(あの女)の表情を見た瞬間、表現できないくらいの悪寒に襲われたわ!

 あの表情は、『獲物を狙う泥棒猫』の顔に他ならないと、私の中にある『何だか分からない、第六感』が激しく警報を鳴らしているの!!


「──誠治さん! 今すぐに、"プランM"の準備を致しましょう!!」


「「────はい??」」


 誠治さんとヨウジ君の声が重なる。


 ──まさか! この男どもは、事の重大さが分かってないの!!


 私は、理不尽な怒りに支配される。このままでは、真緒の身に危険が迫って行く!!

 私の感情を理解できたのは、この場にいた半数に及ぶ女性社員だけ! 残念なのは、「ああ、また(・ ・)ですね……」と言わんばかりの表情ね!!!!



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 Side:とある、社長秘書


 副社長である奥様が"例の持病"を発症してしまいました!!

 実際のところ、よくあることなのですが、今回に限っては原因に思い当たらないのが本音になります。

 奥様の豹変に対応できたのは、図らずとも『女性のみ』でした。私共からしたら、「あるある! 何時ものこと!!」と言う感じで達観できるのですが、旦那様である社長とヨウジさんには分からなかったようです。


「──なあ、ヨウジ君。君には、"プランM"に心当たりはあるかな?」


「──申し訳ありせん。非才の身である自分には、何のことなのか検討も付きませぬ」


 うなだれ、肩を落とすヨウジさんですが、『何を考えているのか』それが分からないのは私たち女性陣も同様です。

 ただ、今までの奥様の行動から、『真緒(ご子息)様に何かあった』か『真緒成分が不足したの~』と言った落ちでしょう。この事は、社員──いえ、社長ですら把握できていないことでしょう。報告書には書けません!!


 ──子煩悩と言う名で隠された『大暴走』の真実には…!!!!



「──なあ、ヨウジ君」


「──はっ! 肯定であります!」


「──────そうか」


「……………………………」


 どうやら、社長とヨウジさんは、『事の重大さ』に気付いたようです。ですが、甘過ぎます! メイプルシロップ+蜂蜜より大変、甘過ぎます!!

 そういう私も先ほどから、背中を伝う冷や汗が止まらない状態ですが!!

 何時ものことになるのですが、奥様の『ご子息がらみの行動の奇抜さ』に関しては、普段(非暴走時)とのギャップは凄まじいものがありますね……。


「今は、見守るしかない──か」


「肯定であります」


 2人でも、奥様の暴走は止められないようです。

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