表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

マオ、悪戯を企て、キルステと遭遇する!

 予想外に時間使ったが、ユウキたちとの約束を忘れたらダメだよね! ウキウキとリズムよくスキップしながら、周囲の人たちに場所の確認をしながら移動していく。


 待ち合わせ場所は『教会』と呼ばれる"リターン・ポイント"という、復活する場所らしく、普通に歩いて10分の道を30分かけてゆっくりと歩く。


 目的地の教会は、白い壁に、青色の屋根。正面には木で出来た大扉が見えてきた。大扉の上には、綺麗な模様のステンドグラスがキラキラ輝いている。

 その大扉の前によく知る顔が3つ並んでいる。内訳は、男性1人に、女性2人。


 男性は、燃えるように赤い短髪、笑えば爽やか系イケメンといえる顔、体はガッシリとしているがマッチョというより細マッチョと説明するといいのかな? 大仏のような細い目をしている。(細目とも言うね)

 他に種族的な特徴はなく、人族を選んだと思う。間違いなく、彼は親友のユウキ。親友と書いて、『悪友』と読むそんな仲だ。


 女性の片方は、ライトブルーの肩までのショートボブ? 頭の上には、特徴ある獣耳がピン! と立っている。お尻に生える尻尾は、スラッと真っ直ぐ伸びている。(意外だが、尻尾は濃いめの青だ)

 獣人族(ビースト)の中で、猫人族(キャッツ)という種族だと思う。ボクの選んだ種族でもあるのだが、意外にも種類が多くて覚えづらく、分かりづらい。

 尻尾は天に向かって伸び、クネクネと元気よく動いてる。

 目尻が少しつり上がっているのは、隣家の幼馴染みのリオだ。


 もう1人の女性は、薄ピンクのお尻を隠すくらいまで真っ直ぐ伸びたストレートの髪に、大きめの丸い瞳。現実と変わらないポヤポヤを感じられる顔付きは、リアルと大差はない。

 そのピンクの髪から、細長く先の尖った耳が見えている。

 彼女が選んだのは、森人族(エルフ)!! だいたいエルフは、スレンダーな体付なのだが──何と言うか、体の1部が「たゆんたゆん」でエ○フ──げふん、げふん!

 食べても太りにくい彼女は、クラスのマドンナ的存在でありながら、学園中の女子の敵でもある。

 彼女は、ユウキの隣に住んでいるサキだ。



 その3人を目にしたとき、『驚かせるがいい、驚かせたまえ、赦す、驚かすがよい!!』と脳内で声が聞こえてきた。

 誰の声かというツッコミはなしで──。


 近くにある店のガラスに、ボクの姿が写っているのを見る。こんな格好を選んだ本人が言うのはアレだけど──パッと見、「少女(・ ・)だよね?」と言いたくなるくらい、女顔が素晴らしい働きをしている!

 驚くくらい、少女になっているボク自身(・ ・ ・ ・)に呆れてしまうよ……。


「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」


 ボクに話しかけたのは、エルフのお姉さんで、ちょっと「イタズラ好きなお姉さん」といったイメージを受け取った。

 そんなお姉さんだからなのか? ボクが、友人たちに"ドッキリ"をしようとしていることを感じ取ったようで……。


「──なるほどね。悪くないわ、いえ──むしろ、良すぎるくらいじゃないかな?」


 何やら、ボクを見てブツブツと呟いていたお姉さんは、何かを決意したのか、ボクを店内に呼んだ。少し、嫌な予感がしたのはヒミツだ!


「お嬢ちゃん、店の中に入ってきなさいな♪」


 片手を軽く振り、パチンっとウィンクをしてきた。ボクはお姉さんが導くままに、店内に吸い込まれていく。


「それで、お嬢ちゃん……貴女は、友達に"ドッキリ"を噛ます気ね?」


 イスに座って、出されたジュースを手に取り、口に含んだ瞬間に"ズバリ!"と言ってくるお姉さんに驚かされ、ボクは噴きそうになり、狼狽えてしまった。危ない!!

 お姉さんの口角がニィっと上がっているのを見た。


「ゴフッ──な……なんの、ことですか?」


 どもったボクは、悪くない!! 同類との出会いは何時だって、ドキドキものなんだ!!

 そんなボクを見て笑みを浮かべる彼女は言った。


「先に自己紹介をしようかな? 私は、キルステ。βプレイヤーの【服飾職人】よ!」


 そういって、胸を張るキルステさん。サキよりは小さい感じですが、十分に大きい胸は、ぷよん♪ と体の動きに吊られて、上下に動いた。


 ──眼福と言うべきなのか?


「えぇっと、初めまして。ボクは、マオと言います。

 親友に薦められ、正規版から(さっき)ゲームを始めました」


 ボクがそう自己紹介をすると、そのキリッとした目が『キラリン』と光った。見方によっては妖艶とも言える表情で……。

 ボクに近寄ってきたキルステさんは、肩に両手を置くと「だったらイメチェンね♪」とウキウキ、ランランと眼光が鋭い!


「イメチェンって──」


 ボクの言葉を、問いかけと勘違いしたお姉さんは、「お着替えよ! お着替え!!」と片手で拳をつくり、言い切った。


「あの、「ちなみに、『ボクは、男です』って言っても、無問題(モーマンタイ)! "可愛いは正義!!"って偉い人が言っているから!!」──!!」


 ──貴女もかよ! ブルー○ス(キルステ)!!!?


 ボクの内面の混乱を気付かないままに、キルステさんは服を選び始める。そのウキウキしている後ろ姿に、とある家族の姿にダブって見え、人知れず涙を流す。

 ブルッ!! 悪寒がはしる。嫌な予感しかしません!!




 30分後、あれこれと着せ替えをさせられたボクは、戦闘経験を積む前に疲れてしまった。クタクタだよ~。


 ──あの嫌な予感や悪寒は、現実のものになった。


 現在のボクの姿は、赤と白を基調とした『ゴスロリファッション』を着せられている。ブラウスの襟元、ボタン回り、袖口、裾回りには沢山のフリルが付いている。

 赤というより、真紅(ルージュ)色のノースリーブのベストとスカートのセット、お腹を絞めるコルセット? みたいなものも着けられて苦しい。当然、着替えさせたキルステさんの顔は、満面の笑顔(・ ・ ・ ・ ・)でツヤツヤしている。

 靴も赤を基調とした革靴? っぽいモノで、足の甲を1本のバンドで留めるタイプのようだ。

 着替えた自分を見て、こう思ってしまった。


 ──誰? こいつ??


 そう思ったボクは、悪くない!! だって、自画自賛になるが、キャラメイク後より200%以上も少女寄りになっていたのだから!!


 しかし、そんな服を着て確認をしていると、「ほぅ! なかなかイイじゃないですか!」と感心してしまった。そんなボク自身に落ち込んでしまう。


「あの、お金が無いのですが?」


「ん? 要らないよ! マオちゃんのお陰で、楽しい一時を満喫できたから! プレゼントだよ!」


 サムズアップしてくるキルステさんは、凛々しい系美人といった感じ。ボクに可愛い洋服のいろはを語った人物とは思えないくらい、キルステさんの服装は妖艶で──。(詳しくは、語れない!!)


 キルステさんの洋服講座が終わったときには、ボクがインしてから1時間が経っていた。このままでは3人──特にユウキがイジケているだろう。


「そうですか……。でしたらボクは、行きますね?」


「待ってくれない? 最後にフレ登録してくれないかな?」


「何ですか? その、フレ登録って?」


「ああ、ゴメン! MMOは初めてなんだよね?

 ゲーム内で使う【フレンド登録】っていって、お互いに登録すると『お互いのインの状態が分かる』『フレンドチャット・メールが出来る』のよ。

 他にもあるけど、これがメリットの中で目に付くかな?」


 話を聞く限りでは、デメリットは無いように感じた。


「その、『フレンドチャット』は通信出来ない場合って、あるのですか?」


「基本的には、『戦闘中』『通信不可領域』以外なら問題なく使えるわ!」


「フレンド登録はどうやって行うのですか?」


 ボクがそう聞くと、「握手をした状態で、『フレンド登録』と言えば出来るわ!」と言うので、登録をした。


【プレイヤー"キルステ"とフレンド登録を行いますか?

 ➡YES  NO 】


 インフォメーションの声が聞こえてきた。フレンド登録を許可すると、【フレンド登録をしました】と言っていたので、完了したのだろう。

 登録後、キルステさんと再度挨拶を交わして、店を出た。


 待ち合わせ場所をぐる~っと回って、ユウキの死角から近寄って行き、服の裾をクイクイと小さめの力で引っ張る。


「──あん?」


 (いぶか)しげな声で反応するユウキを見て、「減点ですね」と待たせた張本人であるボクは評価を下す。

 怯えているように見えるように、泣きそうな顔をしてボクは次の言葉を言う。


「──お、にぃ……ちゃん……?」


 ボクがそう言った瞬間、リオとサキの表情は絶対零度まで下がった。もちろんボクに対してではなく、ユウキに対して。

 一生懸命着飾って、小学生高学年くらい(言ってて、目から汗が──!!)の少女が勇気を振り絞ってかけた声を、不遜な態度で切って捨てたのだから。


「ちょっとユウキ! 貴方はいつの間に、幼女(・ ・)に手を出したの!? 責任能力が無いんだから、いい加減なことをするんじゃないよ!!」


 そう言ってユウキを責めるリオだが、ボクと目が合った瞬間に「パチン」とウィンクをしたので、驚かすことは出来たようだが、騙せなかったみたいだ。(幼女の言葉に、グサッときた)


「──ちょっと、待って……」


 ぶおぉぉぉん!──ゴチン!!!!


 物凄い風切り音と、とても鈍い音が周囲に響いて、目の前にユウキが突っ伏した。その音を出したブツを見て、絶句する!?

 メイス!! 金属製で、先端部分にはトゲトゲ(スパイク)が付いている!! サキはそんな装備を持って、振り下ろしていた。(しかもご丁寧に、両手持ち)


 ──βプレイヤーの特典だろうか?


 ゲームだからこそ、メイスの先には血が付かないのだが、これがリアルなら付いている。(実際に見たことがある!)

 ボクがこの状況に茫然として見ていると、リオとサキが一瞬見つめあって、頷いているのを視界の角に捉えた。どうやら、女性2人にはバレてしまったようだ。


 2人の目は、「もっと攻めなさい!!」と言葉なく語っていた。この状況で、彼女たちに逆らうような真似を出来る人は"勇者(おバカさん)"と言うのは間違いない!!

 ボクの切り替えが早いのは、最初からリオを騙せないことが想定内だったからだ。赤ちゃんの頃からの付き合いで、何故かボクが関わると分かるらしい。そう理解していても、サキの勘の良さには驚かされる。


「お……お兄ちゃん──ひ、酷いよ! 『お前は、俺のモノだ!!』とか言って、"体"触ったりとかしたのに!!」


 この中で酷いのは、恐らくはボクだ。真っ先に、悪戯を考えだから。それにしても演技とはいえ、最近のVRの感情表現の豊かさには、『感心』の一言しかない!!


 ──だって、うそ泣きが出来たのだ!!


 ユウキ(突っ伏したイケメン)に突き刺さる視線は、99%『外道男に対する侮蔑』だけしかない。今年も宿題を写す気でいる、その罰として受け取ってほしい。

 そんなボクの演技を、子供のお遊戯会を見に来た『親バカ』のような視線でリオとサキは見ている。そんな目で見ないで!!



 チャラ○~ チャチャチャ チャ○ラ~



 何処かで聞いたことのある気がする曲が、周囲に流れた。


「風が呼ぶ! この俺を呼ぶ! 幼女のピンチだと、この俺を呼ぶ!!

 儚きもの! 可憐なるもの! 幼きもの! 小さきものを護れと、俺を呼ぶ!!!!」



 ──なんか、変なのキター!!!!



 その首には、情熱を示すような真紅のスカーフ。


 全身を包むは、真紅の全身タイツ。


 その手には、穢れなき魂を示すような純白のグローブ。


 悪を倒すその足には、純白のブーツ。


 その頭は、混沌を示すようなパンチパーマ。


 悪を見逃さぬその瞳を護るは、漆黒のサングラス。


 悪の攻撃を受ける盾となる、その(マント)は気高きグリーン。(背中には、【幼女愛!!】のマークが!?)


 悪を倒す武器を提げるは、チャンピオンベルト。(中央の文字は【ハム見参】)



 ──本当に、何なんだ? この変態(ナマモノ)は……。


 ボクは、あまりもの虚脱感に襲われた。そんなボクを庇うかのように、リオが前に出て剣を構えるため振る。

 ヒュン! と風を切る音がしたので、結構キレイな剣閃なのだろう。


 ごちん!


「誰? 貴方は、何者なの!?」


 戸惑っているように見えるが、ボクの目は騙すことは出来ない!! リオのこの声音は、事態を楽しんでいるときの特有のモノだからだ。

 それにしても、さっきの打撃音は何だろう?


「俺の名は、ハム!! 幼女を見守り、幼女を見つめ、幼女を崇拝する"紳士"だ!!」


 バサァ! っとマントを(ひるがえ)すハムさん。名乗られなくても、腰のベルトに名前が刻印されているので、無問題(モーマンタイ)

 しかし、先ほどの煽り文句では、紳士と書いて『ストーカー』と読みそう──。


 周りにいるプレイヤーの方々は、彼のことを知っているのか、「まさか! あのハム(・ ・ ・ ・)が、リアルワールドをプレイしているのか!?」とか、「相変わらずの、変人ね……」という聞いてはいけない言葉が耳に聞こえた。

 これは最早、紳士(ストーカー)と言うより、『変態紳士(ナイトストーカー)』と言うのが正しそうに感じた。


 ──まあ、誰から見ても、あの服装は変なのは間違いない!


 ボクは知らず知らずのうちに、変人(ハム)さんから距離をとっていた。そして、ボクは驚愕の事実を理解するに至った。


 今までのVRゲームは、個人用がメインで作られていた。これは、サーバーやPCの性能が一番の理由だったからだ。

 MMOとして、"世界初"といわれるリアルワールドがオープンβとして仮公開したのが、去年の12月のこと。稼働期間は今年の4月までで、プレイ人数は100万人くらいだったらしい。

 なので、現時点で知られている以上、βプレイヤーなのは確定事項である。


 ──変な人は、正規版でも変な人のままらしい。


 ソッとサキを見ると、「ああ、あの人ねぇ~」と納得している節を感じ取れた。このメンバーでは、ユウキとサキの2人だけがβプレイヤーだったから──。

 ボクは、どのように話が進むのか、傍観することに決めた!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ