プロローグ
「はぁ……異世界かぁ……行ってみたいなぁ……」
俺、鴻池 廉は先程読み終えた本(最近流行りの異世界転生モノだ)を自分の部屋にある本棚になおしながら、小さくため息をつく。
魔法が当たり前のように存在し、ドラゴンやゴブリンなどの生き物がはびこる世界。
そんな場所で暮らしてみたい。
絶対に叶わぬ夢だとわかっていても、異世界系の本やアニメを見るとついついそう思ってしまう。
そのぐらいに俺にとって異世界は魅力的な物であった。
あぁ……魔法を自分の手で使ってみたい……ドラゴンに乗って大空を飛んでみたい……
「––––って、もうこんな時間? 早く寝ないと! 明日の学校寝坊してしまう!」
本棚の横にあった時計のアラーム(毎00分に小さい音が鳴る仕様になっている)の音を聞き、一気に現実に引き戻される俺。
慌ててベットに入り、照明を消す。
本当はもう一冊読みたかったが……自分は一度本を読み始めると終わるまで止まらないタイプなのだ。これ以上読んだら確実に朝起きれなくなってしまう。
「仕方ない。明日また読むとしよう」
明日のスケジュールを頭の中で思い起こし、たいした用事がない事を確認した俺はゆっくりと目を閉じた。
これがこの世界で過ごす最後の夜である事も知らずに。