第二話:過去
4年前の2月、麻奈美はまだ高校生、17歳だった。
形の良い紺色のブレザーにも着慣れて、ハイソックスの似合う細い脚が自分でも好きだった。
この頃は、流行のあゆの歌を歌うのが好きで、よく駅前のカラオケボックスに通い、知らないうちに友達という名の知り合いが増えていく毎日だった。
そんな沢山の友達の中に居たのが、二つ年上の良輔だった。
普段は専門学校に通いながらバイトをし、時間を見つけては友達と遊んで過ごす、ごく普通の学生。
一見悪そうに見えて、笑うと可愛い良輔に麻奈美は何も疑う事無く恋をし、良輔も普段から目立つ、大人びた麻奈美に惹かれていった。
憧れの制服デートは出来ないものの、いつも明るく笑わせてくれて、日に日に愛おしくなる良輔との時間はとても大切なものだった。
初めて良輔と結ばれた日、嬉しくて、照れ臭くて、麻奈美は涙が出た。
『俺、今はまだ学生だし金も無いけど、卒業したらバリバリ稼いで、ずっと麻奈美の事、大事にしていくから……』
横たわる麻奈美に被さる様に、そっと抱きついた。
今まで自分から好きになって付き合ったことはなく、只何となく周りに流され、恋に恋したままの麻奈美だった。
人を初めて愛してると思えた瞬間。
心が温かくて、少し切ない気持ち。
「私も良ちゃんとずっと一緒に居たいと思うよ……」
このままずっと一緒にいたい。
同じ時間を共に歩んでいきたい。
しかし、その気持ちのままで居れる事は無かった。
あの時ハッキリ一緒に居ると言えなかったのは予知だったのかもしれない。