第2章:宙に浮かぶ世界 Dai 2-shō : Chū ni Ukabu Sekai (Chapitre 2 – Le Monde Suspendu)
「接続完了。神霊・ハルト、中継者・エルランと融合。」
眩い光が祭壇を包み込んだ。
その中心にいる少年――エルランの胸に、静かに神の気配が流れ込む。
ハルトの意識は今、完全に“リンク”されていた。
彼は肉体を持たない存在。
エルランを通して、この世界「ヴァルリオン」に接触する。
> ……これが、俺の“視点”か。
視界が広がる。
しかしそれは、普通の“目”ではない。
空間そのものを感じ、魂の震えを読み取る感覚。
周囲には、浮遊する島々。
星の川が夜空を流れ、巨大な樹が宙に根を張っていた。
ここは、天上の領域「セリフ=ヴェイル」。
神と精霊が眠る、忘れ去られた領域。
エルランの意識はまだ薄れたままだった。
彼の体は傷つき、魔力も枯渇している。
> 「……まずは、お前を癒す。」
ハルトは自身の力をそっと流し込んだ。
すると、淡い金色の光がエルランの傷を包み、ひとつ、またひとつと塞いでいく。
> 「だれ……? きこえる……誰か……の声……?」
少年が微かに呟いた。
> 「私はお前に宿った者――この世界の守護者だ。」
> 「……神様?」
> 「神などではない。だが、お前と共に歩む存在だ。」
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エルランは目を開けた。
しかし、目の前に神の姿はなかった。
彼の内側に、それが“いる”と直感していた。
> 「……これ、夢じゃないんだよね?」
> 「否。お前は選ばれた。お前の声が、私をこの地に導いた。」
少年は戸惑いながらも、立ち上がろうとした。
彼の周囲には崩れかけた祭壇と、静かに流れる星の光。
> 「俺……なにをすればいいの? どうして生きてるのかすら分からないのに……」
> 「まずは、お前自身を知れ。自分を癒し、そして見つけよ。“意思”を。」
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そのとき、空に低い振動音が響いた。
黒い霧のようなものが、空間の裂け目から流れ出す。
> 「な、なにあれ……!」
それは「瘴霧」と呼ばれる災厄。
世界を蝕む“闇の意志”が、形を持って現れたもの。
> 「後ろに下がれ。まだ、お前では戦えぬ。」
> 「でも、村が……あの先に俺の家が……!」
ハルトは一瞬、迷った。
だが次の瞬間、彼は選んだ。
> 「よかろう。ならば、“奇跡”を見せよう。」
エルランの手が、勝手に動く。
彼の意志ではなく――内なる神霊の力に導かれて。
天に向かって手を伸ばすと、光が指先から放たれた。
それは雷となり、瘴霧を一瞬で焼き尽くした。
> 「これが……俺の……?」
> 「いや、お前の中にある“可能性”だ。」
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その日、セリフ=ヴェイルの片隅で、
一人の少年が神と出会い、
一つの世界が――静かに動き出した。