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番外編 1追憶
舞い散る、花。
美しく咲き乱れ、ほろりとこぼれ落ちる。
散ってしまえば、全てが幻。
触れる事さえ、永遠に叶わぬ。
ならば、せめて。
もう一度、叶うなら。
許しを請うか、想いを告げるか。
それも、笑止。
舞い散る、花。
薄紅色は、美しくて苦しい。
はらり、はらり、肌を掠めては堕つる薄紅色。
優しくて、悲しい、追憶の感触
憂いて見上げる、美しき銀色の鬼。
燃え尽きた灰色の瞳、後ろで束ねた銀色の髪。
肩に羽織し着物は、血染め。
愛しい女の、血潮を含み朱に染まる。
漂う錆びた香り、想いを馳せる鬼。
恨みは、生きる糧。
憎しみは、強さの源。
真実は残酷に、全てを覆す。
約束は違えられる事無く、通じていた想い。
桜の下に、佇む鬼。
赤く染まる掌。
焦がれる胸。
鬼の終焉。
薄桃の去った後の話です。