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異端武術白書   作者: 流浪の空手マン
4/4

act.3 『剣術・前編』

久しぶりに投稿。継続こそ難しい。

「古賀さん、お久しぶりです」


こちらから挨拶をしようとする瞬間に、機微を捉えたように挨拶をかぶせられた。ちなみに古賀とは私の事だ。


目の前の人物はにこやかな顔をしてるが…あれは心のなかでドヤ顔してる感じかな。


武術家にありがち。

相手の気勢を制すクセでも付いてるんだろうか。


「…倉橋さんもお久しぶりです」


ドヤ顔に苦笑いを挨拶と共に返す。

今日は取材でも無く、ただ遊びに来ないかと誘われたのでこちらにお邪魔することとなった。


この方は倉橋さんと言い、私の古い馴染みだ。

武術系コラムニストになったばかりの時に取材して以来、よく話すようになった間柄の、剣術家になる。


剣術。古武術でも兵法でも無く、剣術。

そこが()()である。



彼は道場を開いている剣術家でもあった。


場所は歓楽街の一角、雑居ビルの3階。

まぁ、今風の道場だ。

昔ながらの武家屋敷道場なんて、もはや漫画の中でしか見られない。今の時代は大抵この形だ。


武術は昔から金にならないのが常識である。

だから賃料の安いビルの一角が道場になるのも良くある流れと言えるか。



雑居ビルの一室とはいえ、中は綺麗に清掃されて練習道具などの匂いが道場らしい雰囲気を出していた。


「今日は休みで?」


「一般の子はね。今日は指導員の勉強の日かな」


勉強か。

だからか今日の彼は私服姿なのか。

いつもは袴付きの道着でいかにも剣術家っぽい雰囲気を出しているんだが、今日はただのおじさんといった感じである。


武術家なんて道着着てなきゃそんなもんかも知れないが。



兎も角、倉橋さんが立ち上げた倉橋道場は開設して20年ほどになる。

流派は、本人曰く『新陰流の一派らしい』。

『らしい』というのは、証明となる目録や皆伝の証が無いのだそうだ。

故に新陰流〇〇派は名乗れない。


なぜそうなったのか?

本当にその流派の後継なのか?


実際のトコロは確かめようが無いので分からないが、証明は出来ないが実は…と云う道場は、そこそこあったりする。


というのも、第二次世界大戦の関東空襲から戦後の混乱期で目録を紛失した道場が少なくない数存在している事実がある。


技術だけは継承しても、目録がなければその流派は名乗れない。

結果として、本来の流派の後継を名乗れず、聞いたこともない流派の名前で立ち上げざる負えない道場がいくつか出て来てしまう。


倉橋道場もその一つの様だった。



「お弟子さんの勉強に呼んでもらえたのは有り難いですが、私は無手の出身ですよ?」


「今日はね、座学の予定なんですよ」


座学。


武術に座学とは?

…と思う人もいるかも知れないが、体技ばかりでなく活用の方法やその理屈の理解も、武術の上達には必要な要素になる。


「私が聞いて良いので?」


故に武術の、その流派における座学は内伝として外に出さないモノだ。


体技は練習を見れば真似ることも出来なくはないが、その活用の方法や理屈は伝えようとしなければ外には出ない。

その流派の本質を他者に盗まれない為にも、言葉で伝えられるものは秘伝として、内弟子に受け継がれる事が殆どだ。


それを他流派の人間である自分にも開示するというのは…


「古賀さん、今の時代、どう思います?」


「どう思う、とは…?」


またざっくりとした問いだな?

私の顔色を見た倉橋さんは、立ち話もなんだから…と私に返すと、道場の事務所に案内してお茶を出してくれた。


これは長くなるということかな。


「いやね、今の時代に奥義だ秘伝だって、後生大事に抱えるほどのものなんですかね?」


「それは身も蓋も無いですよ…」


いきなりぶっ込んで来たなぁ。

言ってることはわからなくないが。

今の情報化社会、理合いなんて動画投稿サイトで調べれば出てくる程度のものだ…嘘か真かは置いとくとしても。


「そのうち受講生にも伝えられる部分は伝えていきたいと思うんです」


「正しく伝わりますかね」


「そこなんですよ」


倉橋さんはわが意を得たりとでもいった風で相槌を打った。


「理合は兎も角、立居の心得や剣気についてなんて、小言か宗教と思われても敵わないでしょ?」


ぶっちゃけるなぁ倉橋さん。

確かに、武術習ってて座学で心得なんて説明されたら、人によっちゃ『精神論かよ』ってなる人も居るだろうからなぁ。


「だから古賀さんにも相談したくて」


「いやぁ、でも私半端モンですよ?それに分野違いの気がしますけど…」


「そんな謙遜しないで下さいよ。聞きましたよ?作田先生に。生まれる時代間違えた人間だって」


なんという事を人に言ってくれたんだあの師匠(ひと)は…

目録や皆伝も受けてないンだから半端モンなのは確かなんだよ。

ただ、修めるものは修めた自負は、小さくても有るけどね?


「そりゃ今の時代に武術やろうって人間は大体そうですよ」


「そうかも知れませんがね。お願いしますよ。色々取材されてる古賀さんなら、他の道場さんでもどう伝えているかとか、知ってるんじゃないですか?」


「まぁ、それは無くはないですが…」


実際、他の道場では弟子でない聴講者や体験者にも理合を説明したり動画投稿サイトで動画としてテーマにしたりしているところも少なくない。


「倉橋夢剣流の理合を記事として出してもらってもいいんで、相談に乗ってもらえませんかね?」


「良いんです?」


「宣伝になりそうだし」


ぶっちゃけるなぁホント。

というか、コレ今でも説明したりしてるけど反応悪くて上手くいってない感じかな?

伝え方や関係値によっては胡散臭くなるもんなぁ。


「じゃぁ、微力だと思いますが…」


「そう?ありがとね?終わった後焼肉行こうよ!奢るから!」



押しが強いけど良い人なんだよな。

それに倉橋流の内伝も気になるし。



そうして私と倉橋さんは、指導員のお弟子さんらが来るまで雑談をして過ごしたのだった。

後編は理合等も出していければ…

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