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君はいつも心の中で  作者: かの
出会い
4/5

3話 選択の時

有桜が倒れた。

理由はまだ分からないが、色々な人が集まってきている。さっきまでは集中治療室というとこに居たが、今は病室に運ばれて、何故か僕も偉そうな人々に同伴している。

有桜はとりあえず大丈夫みたいだ。すやすや寝ている。

そこに1人の医者が入ってきて、暗い表情で説明するように話す。

「ここが選択時です。延命処置をするか、余生の質を高めるのか。」

え?どういうこと?延命?

冷や汗が流れると共に思考が止まる。

状況が飲み込めず、何も理解できない。

「選択は、明日までにお願いします。」

医師はそう残すと、病室を後にした。

「選択、か。そうか」

一番偉いであろう人が口を開いた。

「んで、君は誰なんだい。有桜とずっと一緒に居たらしいが。」

「あっ、はい!楽と言います!有桜さんには、いつもお世話になっていて、えっと…」

「もういい。分かった。私たちは今日はもう帰る。君も早く帰りなさい。」

そういうと、5人くらいの偉そうな人が帰っていった。病室に残ったのは僕だけだ。

「ん…あれ、楽くん…」

「あ、有桜…大丈夫か…?」

有桜が目覚めた。

「その表情見ると、私の話もう聞いた…?」

「詳しくは聞いてない、ただ…」

「実はね、私死ぬんだ。血液硬化っていってね、血がどんどんドロドロしていって、最終的に機能しなくなるの。」

「え…それ、大丈夫なのか?」

「ううん、治らない。ただ、選択肢が二つあるらしいの。延命処置でベットから出れないけど3年は生きられますよ。って処置と、1年足らずで死んじゃうけど、自由に動けるよ、って処置。」

「そうか…どっちにしたいの?」

「私的には、自由に生きたい。だけど、それを世界は許してくれない。」

世界…?

「ほら、私のお父さんって社長じゃん。んで、私はもう見切られてて。早く会社を継ぐ子供を作れってうるさいんだ。その矢先のこの病気。笑っちゃうよね笑」

「笑えないよ…そんなの、聞いてないし…」

「言いたくなかったんだ。変に気を使われたくないしね、ごめんね」

本人が言いたくない気持ちもわかるが、こんなのいきなり過ぎやしないか…

この日はこれっきりで帰され、次の日1番で病院に行った。既に、昨日の人達が集まっていた。

そんな中、1つの話が耳に入ってきた。

「娘は子供を作ることは可能なのか?」

「延命処置をしていれば、普通の出産はできなくはないでしょう。ただ、難しいものになりますね。質を高める処置にすると、薬を定期的に入れなければいけないので、出産は無理ですね。」

「そうか。なら、延命処置を…」

「ね、お父さん。私、延命処置なんてしたくな」

「黙れ。お前に選択権はない。お前は会社を継ぐ子供を作るのだ。決定事項だ。」

…なんだ。そんなの違くないか?

人の家族のことに口を出したくない。元々厄介事は嫌いだ。関わりたくない。だが、これはいくらなんでも違う気がする。

「決まりだ。延命処置で決めだ」

「ちょっとまってくださいよ」

思考よりも先に口が開いた。やばい、どうしよう

「なんだね、君は。人の家族事情に口を出すな。」

「いや、あの…こういうのは!本人の意思が、重要だと思う、思います…」

「じゃあ君にはこの会社を存続させるいい案があるのかね。経営能力があって、とても優秀な若い人材を用意できるのかね?私にはビジョンがある。小さい頃から教育させ、ウチの会社を継がせるのだ。」

さて、どうしよう…

無責任なことを言ってしまった責任がある。

僕にできることは限られているはずだ。

有桜のために、できることならやろう。

「ぼ、僕が!僕が継ぎます!僕は高校が専門の経営専攻ですし、これからもずっと勉強して、絶対紅生さんに納得させる能力をみにつけます!」

「…」

「なので、有桜さんに、選択させてあげてください!」

「楽くん…」

部屋に沈黙が流れる。その時、自分がしてしまった失態が体にだんだんしみて行く

その沈黙を打ち破るように口を開いたのは、有桜の父親だった。

「……分かった。その代わり、有桜が死んだら週に2日はうちで経営を学んでもらう。」

「…!!!」

有桜が顔を伏せ、震えていた。

僕は、やってしまった感と感激の感情がとても混ざっていた。

「楽くん…ありが、とう……」

この時、僕は決めた。この子の残りの余生を、何とか充実したものにしなければ、と。

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