2話 彼女の秘密
1話目に続き2話目の投稿になります。
最初にあげたのは前置きだと思って読んで頂けたら幸いです。
遊園地デート(?)から1週間、何事も無かったかのようにいつも通りの日常が続いた。
先日感じた違和感も、数日経てば既に覚えていなく、久しぶりにゆったりとした休日を過ごしていた楽だったが、のどかな休日も終焉を迎えようとしていた。
ピンポーン
「誰だよ、こんな時間に…」
時刻は20:00を回っていた。宅配便にしては遅すぎる。
「楽くーん!夜ご飯でも食べに行こーよー!」
!?!?!?
思考が追いつかなかった。なぜ家を知っている?なぜ急に夜飯?理解ができない。
とりあえず出よう。話はそこからだ
「あの…なんで家知ってんの?」
「いいじゃん、そんな事は。夜ご飯食べに行かない?あ、もしかしてもう食べちゃった?」
「いや、まだだけど…」
「じゃ、決定ね!誘った私の奢りでいいよ!」
女性に奢られるのはなんか癪だが、断る理由がない。
なんか今日の有桜はおかしい。これ以上にないくらい張り切って「私の奢りなんだから、私の食べたいものだからね!文句言わないでよ?」とものすごい高級レストランに連れてかれた。お金は足りるのだろうか。
受付に行くと、スーツ姿の爽やかイケメンが驚いたように有桜に声をかけた。
「これは紅生様。いらっしゃいませ、今回もいつも通り代金は気にしなくて大丈夫なので、存分にご堪能ください。」
「どーもー。…はぁ」
有桜は気だるげな対応をし、適当な席に座った。
紅生という名前をどこかで聞いたことがある。確か、世界的企業の名前だったか…
「ねぇ有桜、紅生って…」
「そうよ、私の苗字で、紅生商事の紅生。私は社長の娘なの。会社の名前を出すのは嫌いなんだけどな。」
「え、そうか。そんな偉い人の娘さんが、僕なんかと絡んでいいの…?」
特に嫌味的な意味でなく、普通に聞いてみたが、あきらかに表情と口調が変わった。
「そんな事ない…そんな事ないから、お願い、そんな事もう一生言わないで…」
「お、おう。了解した。」
「ま、そんなことどうでも良くて。食べよ!」
そう言われてメニューを開いてみて、口がふさがらなかった。高すぎる。こんなの、僕の何ヶ月分のお小遣いなんだ…
どうやら、肉の専門店らしい。牛や豚から始め、羊やワニ肉まである。とりあえず盛り合わせコースみたいなほぼ全部味わえるコースを選んで、料理を待っていた。有桜は、牛コースらしい。料理が来るまで、すこし時間があった。
「有桜はここによく来るの?なんか、すごい常連感あったけど…」
「いや、家族がねー。美味しいからってここによく来るの。んで、ここも紅生商事の支配下にある店だから、いつも無料で食べさせてもらってるの。」
「すげーなぁ。やっぱそういう待遇とか色んなとこでしてもらえたりするんだ。」
「まぁ、社長の娘ってのもあまりいい物じゃないよ。」
そうなのか。まぁ、僕には無縁だから分からないな
「そんなことよりさ。ここまで付き合いいい人なんて今までいなかったよ。ぶっちゃけ、私に気ある?」
突然の発言に、驚きを隠せずにいた楽が、えっとそのと何かを言おうとした時に料理が届いた。
コースなので、色々分けて出てくるのが普通だが、それをしてしまうと子供だけでは帰れない時間になってしまうため、気を利かせてまとめてくれた。
「あ、食べ物きた!食べよ!ね!」
「あ、逃げられた…ま、いいや!食べよう!」
「そうだよ!まだまだ時間はあるんだし…」
「時間、ね…」
有桜がボソッとなんか言ったが、よく聞こえなかった。それより、料理が美味い。今まで食べた肉料理の中で一番美味いな…
気がつけば完食していた。
有桜も食べ終わっていて、帰る準備も万端みたいだ。
「帰るかー。くったくった」
「ちょっとー。雰囲気と行儀が合ってないよー笑笑」
店から出ようとした時に、事件は起きた。
「有桜、なんかフラフラしてるぞ。眠いのか?」
「んー、、そうかも。ちょっとね…」
バタッ
「おい、有桜?有桜!大丈夫か?」
「紅生様!おいそこのもの!急いで救急車を!」
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楽はテンパっていた。
人が倒れるのを見るのは初めてだし、何故か一緒に救急車に乗せられて病院まで連れてきたし、なんかめちゃくちゃ偉そうな人が僕の隣に座っている。これ絶対社長じゃん…
そんなことより、有桜の様態が心配だった。
集中治療室とやらに入れられてるし、医者や看護師が10人以上入っていった。
僕が何かをした記憶はない。だが、何故か強い罪悪感が体に絡んでいた。