異世界転生するには、かくれんぼで勝たないといけない。
『被告、一海人吉に死刑を求刑する!』
こうして俺は死刑囚になり、絞首刑となる。
『一海、何か最後に言いたいことはあるか?』
『ふん、、俺は何もやってねえよ。お前らは無実の人間を殺すのか?』
悪態をつくだけ、ついた。刑務官は何も返答をしない。ただその目には諦めたような表情がうつっていた。絞首台に立つ。人生は儚い。首に縄がくくられる。
『ああ。死ぬのか、、、。』
床が空いて、全体重が縄にかかる。
・・・・・・。
『ようこそ!一海様!異世界転生できるかどうか、チャンスターイム!』
目の前には、白髪で赤い眼をした、天女のような服装の美少女が経っていた。
『え、、、?』
『異世界にいきたいかーー!!、、元気ないですね。一海様。』
『お前は誰だ??』
『私は、マナカノミコトという名前です。異世界転生できるかどうか審判を下すものです。』
気づいたら、僕は椅子に座りその審判を下す美少女と対峙していた。
『あなたは1つ課題をクリアすれば、異世界転生できます!転生できないなら無限地獄です!チャレンジしますか?』
事態が読めなかったが、地獄に落ちるかどうかの瀬戸際だ。チャレンジするのもいいだろう。
そう思い、即答した。
『うん、やろうかな。で、何をやればいい?』
『かくれんぼでーす!』
・・・・・は?
『かくれんぼってあの、かくれんぼ?』
『はい、そうです。』
この歳になってかくれんぼか。
『で、どこでや、、。』
言いかけると、いきなり風景が変わる。
それは、大きな洋館。
目の前にはマナカノミコトのほかに1人、黒髪のパッツン、メイド服をきた美少女がいた。
『一海様、お待ちしてました。さあ、私が鬼でございます。やりましょう、かくれんぼを。』
『アンタは?』
『あなたと同じ穴のムジナとでも言っておきましょうか。』
メイドはニヤリと笑う。
とりあえず俺は隠れ場所を探す。
広い洋館だ。どこに隠れよう。キッチンに来た。
キッチンの棚だとちょっとありきたりか。
何個か個室がある。個室なんて、しらみつぶしに調べられたら終わる。ナシだ。
意外性、灯台下暗し。そのあたりで切り込む必要がある。外に倉庫がある。あそこは微妙だな。
植え込みは?いや、普通に見つかりそうだ。
うむー。
というか。いつまでかくれれば、俺の勝ちなんだろうか。勝利条件が提示されていない。どこに隠れても、しらみつぶしに探されては、いつか見つかる。
窓からマナカノミコトを見る。こちらをニヤリとしながら、見る。
『これ、、、詰んでるんじゃないか?』
図られた。だったらなんでもありだ。
勝利条件を自ら作る。あのメイドは、まだ両目を手で塞いでいる。とはいえこちらに気づいている可能性が高い。
『もう、いいかい?』
メイドが叫ぶ。
『まあだだよ。』
俺はそう叫んだ。
方法は1つしかない。
♦︎
『もういいかい?』
私は叫んだ。
『まあだだよ。』
そう聞こえた。馬鹿め。2階でウロチョロしてるのが見える。真っ先に2階に行ってみつけてやる。
これで、私は異世界転生をはたし、幸せな人生を掴む。
『もういいかい?』
もう一度叫ぶ。
『もういいよ。』
私は、両手を目から離し、洋館に近づく。
扉を開けた。そこで意識が途切れる。
どかっ!
・・・・・。
何時間経っただろうか。
目を開ける。何も見えない。
『もういいよぉ、ははははははははははははは!あーはっはっはは!!』
男の声が聞こえる。
手足はどこへいった?
『こんな簡単なかくれんぼ、余裕だ!さあ、マナカノミコ、俺を異世界に飛ばせよ!!』
男は叫ぶ。クソ、こんなところで。耳を澄ませろ!用はどこにいるかわかれば勝ちだ。
『私から右45度、窓の近く。みーつけた。』
マナカノミコトが口を開く。
『ああ、一海さんみいつかった。』
『は?そんな馬鹿な!見えてないんだろ?なんで俺の場所が、、、、、』
窓の日差しが微かにこの見えない世界で感じられた。後は足跡。なめんなよ、プロだぞ、こちらは。
『一海さんは地獄行きです。さようなら。』
♦︎
俺の体が何か異空間に吸い込まれていく。
『う、うわああああああああああああああ!』
気づくと、あたりは血の海。死体がごろごろ転がっている。否、死体でなくなんどもなんどもなぶられても死することを許されない地獄の民であった。
『おー、来たか。新しい獲物が。』
禍々しいまでの黒いオーラを纏った、鬼。
鬼の手には棒が1つ。
次の瞬間。棒が降りかかる。肉と骨が砕け散る。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
全身の血がなくなっても、頭を潰されても意識があり痛みを感じつづける。
『ああああああああああああああああああああああ!』
俺は何度も何度も苦しむ。
そんな死ねない苦しみを。
♦︎
『マナカノミコト、私は、私は勝った!異世界に転生させろおおお!』
『良いのか?』
『そのために、そのために!』
ふんと鼻を鳴らした。
『良かろう。異世界に飛ばしてやる。』
・・・・・・。
私は目を覚ます。草と土の匂い。あの死臭しかしない、狂ったかくれんぼ空間ではないようだ。
しかし。
手足がやはりないまま。
目も見えない。
そのうち獣の鳴くような声がする。それは、私に近づき、、、、、
私は、食われた。