第 9話 いつもの日常に!(衛星都市キール 嵐の前の静けさ)
◇◇嵐の前の静けさ
メーティスはカールからの指示で衛星都市キールに来てから辺りを偵察していた。 元々メーティスは調査、分析を兼ねる斥候を得意としていた。 メーティスはこの世界の鳥、昆虫、蛇、クモ等の頂点に君臨し、これらを使役する特殊能力も持っており、その全てを使い情報を集めて分析をする。
三日間の情報収集と分析の結果、魔物の量は確実に増え魔物の暴走を発する手前まで来ている事が分かった。
この分析結果は直ぐにカールに伝えられた。 驚いたカールは母マティルダの元に報告に行く事にした。
今日もマティルダ母様は三者会談をしているようだ。 執務室は厳重に鍵が掛かっている
カールは執務室の扉に向かいノックを行い、声を掛ける「カールです マティルダ母様 少しお時間を頂きたいのですが?」 カールの呼びかけに少ししてからドアが開かれた。
マティルダ母様の執務机の上には紅茶のポットにお菓子の山 仕事をそっちのけで女子会の様相を呈していたようだ。
マティルダは姿見に向かい「カールが来た」只 それだけを話した。
姿見からは「カール どうしたの?」のんびりとした母アグネスの声がする。
まぁ~ ちょうど 三人の母達が揃っているならと報告をする事にした
「母様たちに報告をしなければ成らない事が有ります」少し緊張気味に話し出した。
カールから話し出された内容は、今までの女子会から一気に緊急事態宣言レベルへ様変わりする。
「カール 今話した事は事実なんだな?」
「はぃ その通りです 只、今すぐには起きないでしょう これは実際に偵察をしたメーティスからの報告です」
カールはこれから予想される事を順番に説明をしていく。 初めに衛星都市キールの防衛である。
これはカールからの提案で衛星都市キールを高さ30mの城壁で囲ってしまおうと云う事になった。
フラッグで鍛えた土魔法を使えば確実に出来るとカールが請け合ったからだ。
次が魔物の暴走が起きた時の対応である、衛星都市キールに居る領軍は5000名である。
魔物の暴走の魔物の数にもよるが今までの実績から云って到底無理であるのだが、此処でもカールが提案を行った カールの提案とは組織だった行動を行えば魔物の暴走を抑え、殲滅が出来ると云うものだった。 実はその組織だった行動自体が難しかったのだ。
カールは二年前にこの衛星都市キールに居る領軍5000名を組織立って動かす訓練をしている事をアグネスやマルガレータに説明をした。
「マティルダ! カールの云って居る事は本当なのか?」領都にいるアグネスはある程度聞いて居たのだが、王都に居るマルガレータにしてみれば初耳であった。 二年前と云えばカールは三歳である 自分が三歳の時を思ってみても到底信じられなかったのだが いまのカールでれば信じる事も出来た。
四人で話し合った結果、魔物の暴走はカールの指揮下で殲滅戦を行う事にした。
作戦は5000名の領軍を1000名毎の5つに分ける これはカールが初めから構想としていた内容だった 5つの内3つは攻撃を行う。 残りの2つの内一つは遊撃に回り、残りは輜重部隊と情報伝達である。
カールは話をもう一歩進める事にした。 「母様 少し待ってください!」母達との会話を中断しマティルダの後ろに今までの倍の大きさの姿見を作り出した。
「カール! その新しく作った姿見は何をするんだ?」 マルガレータからの質問に答える前に、新しく作った姿見に魔力を流し衛星都市キール上空を偵察しているメーティスの視界を映し出した。
「母様 新しく作った姿見に映っているのは、衛星都市キール上空を偵察しているメーティスの視界です」カールが説明する内容が余りにも突飛すぎて声を失う母達を尻目にカールは説明をしていく。
「メーティス! 進路を魔の森 奥へ」カールの指示にメーティスが進路を魔の森へ変える
次第に姿見には魔の森に住む魔物の姿が見えだす。
「母様 この姿見を通して魔物の位置を特定し領軍を動かしたいと思います」カールの提案に初めは渋っていた母達も自分達も魔物と領軍の両方を確認しながらならばと賛成に向かいだしたのだが、大きな問題をマティルダが指摘する。
「カール! いくら此処で魔物と領軍の位置を確認できても此処から領軍にどうやって指示を出すの? フラッグで使用していたウィスパーでも無理だと思うわ?」アグネスの指摘はご尤もである。
「あ それは大丈夫です。 やっぱりアグネス母様は僕がフラッグの試合で攻撃陣に指示を出して居たのをご存じでしたか?」カールの質問にアグネスも頷き
「見ていて、多分そうだろうとは思ったわ だが どうやって複数に指示を出しているのだろうと不思議に思っていたの」
元々、ウィスパーは中級に位置する風魔法であるのだが、伝え先は一人に対する物だった。
「流石、アグネス母様です。 例え遠く離れていても伝えるべき相手させ見えていれば僕の声は伝えられます」
何度目かの驚きと共に暫し、休憩に入る。
休憩の為にカールは執務室から外に出る
「おぃ アグネス! おまえの息子はどうなっている?」マルガレータから諦めとも驚きとも取れる言葉が出た。
「知らないわ! そう云えばマティルダ! 二年前にカールから随分、しごかれたって話していたわね?」アグネスはカールが目覚めの儀式後に衛星都市キールへ向かった時の事を話し出した。
「あ~ぁ あの時か あの時はうちの幹部が全員、しごかれていた 新しい部隊の運営方法とか動かし方など、多岐に渡っていたな。」マティルダも二年前の事を懐かしそうに話し出した
「なんだ それ 聞いてないぞ!」マルガレータにしたら初めて聞いた事だった 三歳の子供が軍事の事で大人を指導するなど到底考えられる事ではなかった。
休憩が終わり、カールも執務室に戻ってきた。
「マティルダ母様 明日からここで部隊運用の確認と試験をしましょう」
「カール! 何をしようと云うのだ?」
「領軍 5000人を 指揮官ごとに分けて運用しましょう」こうして指揮用の姿見を得たマティルダ達は カールの指示のもと指揮官を実際の運用に耐えるように鍛える事にした
その前に領軍5000人を束ねる指揮官シュワルツ・フォン・アーレンハイトをこの部屋に呼ぶ事にした。
幾ら姿見の事が重要機密だとしても指揮官のシュワルツ・フォン・アーレンハイトが知らなくては指揮は出来ないためだ。
カールはメイドに指示をして執務室に来るようにと、シュワルツ・フォン・アーレンハイトに伝える。
実を云うとシュワルツ・フォン・アーレンハイトにとり執務室は良い思い出がない。
二年前のカールから受けた色々な話に作戦など、今までの既存知識が崩れ去った場所だったのだ。
ノックの後、マティルダからの返事でシュワルツ・フォン・アーレンハイトが執務室に入ってくる。
シュワルツ・フォン・アーレンハイトは執務室に入った途端、違和感を感じた。 部屋の中にはマティルダとカールしかいない筈なのに複数の声がする。
シュワルツ・フォン・アーレンハイトはマティルダの前で呼ばれた用事を聴くために立ち止まった。
その時、マティルダの正面にある姿見に映るマルガレータ・フォン・アーレンハイトとアグネス・フォン・アーレンハイトの姿に気が付いた。
二人の声がその姿見から聞こえてきたからだ。
軍務経歴が長く魔法にも得意でないシュワルツ・フォン・アーレンハイトは暫く声も思考も停止した状態だった。
やっと再起動したシュワルツ・フォン・アーレンハイトは正面にいるマティルダに事のあらましを尋ねた。
事のあらましはマティルダに代わりカールが話す事に成った。 丁寧に順を追って話した結果 シュワルツ・フォン・アーレンハイトはこの姿見が持つ可能性を理解した。
「カール様 この姿見は凄い! 今まで衛星都市キールから王都まで どんなに急いでも五日は掛かっていました どんなに緊急であってもです それが随時にご報告が出来る」シュワルツは情報が大事なことを二年前のカールから学び、理解していたのだ
更にマティルダの背後にある大きな姿見には魔の森が映し出されている、此処に居ながらにして魔の森の事が分かる、これは指揮を執る人間にとっては画期的なことだった。
此処まで理解したシュワルツにカールは更に重要な事を知らせる。 それは魔の森で魔物の暴走が再び起ころうとしている事だ
シュワルツの顔が一気に青ざめる。
前回の魔物の暴走の時は多くの犠牲をだし辛うじて防いだのだ シュワルツにはその時の記憶が鮮明に残っている。 その再現である。。。
「シュワルツ殿 貴方をお呼びした理由がお分かりに頂けたと思います」カールの声は落ち着いたものだった。
カールは此処で気分を変えるために母マティルダとシュワルツ・フォン・アーレンハイトに紅茶を出して勧めた。
シュワルツは口の中は渇き切っている事にも気が付いて居なかった。
「シュワルツ殿 先ほど母様達には話したのですが、此処を作戦会議室としてこれから起こる魔物の暴走を抑えようと思います その為の訓練に貴方の協力を仰ぎたいのです」 カールの落ち着いた声がシュワルツの頭の中に自然と入って行った。
軍人とはなすべき事が明確になっており、その対応策が練られ、事前に準備が整えられて居れば 冷静に対応するものである。
シュワルツはこの作戦の総指揮をカールが執って居る事を理解した。
そう、自分はその総指揮に従う現場の指揮官なのだと云う事だ
作戦の内容は母達に説明した通り5000名を5つの部隊に分け、それを五人の副官が指揮を執ると云うものだった。
その5つの内3つは攻撃を行う。 残りの2つの内一つは遊撃に回り、残りは輜重部隊と情報伝達である。
翌日からマティルダとシュワルツは五人の副官を使った練習に励む事に成る。
初めは魔の森の浅い部分で訓練を行う。 攻撃を専門に行う3つの部隊は機動力を優先させ予備の武器以外は持たずに速さを生かした攻撃のみに専念する。 遊撃は輜重部隊の護衛と状況次第で攻撃部隊の支援にもなる重要な部隊だ 最後が攻撃部隊を支える食料に予備の武器、野営の道具など 戦う部隊を支える事を目的とし全てを担当する。 更に部隊の耳となる情報の伝達も彼らの仕事だった。
五人の副官は部隊長でるシュワルツ・フォン・アーレンハイトから作戦のあらましを聞き準備に入った。
副官たちはカールの姿を見た時からこうなる事を想像していたのだ、只 この時は前回と同様に演習の一環だとしか認識が無かった。
色々と拙い文章を読んで頂きありがとうございます
何分、初めての経験で右も左も分からず、勢いだけで書いている次第です。
出来れば長い目で見て頂けると嬉しく思います。
これからも皆様のご指摘やご声援、などを真摯に捉え 頑張りたいと思います
今日もお昼はお蕎麦でした。 ソバはダイエット食だと聞いた事があるのですが、本当でしょうか?
でも毎回二人前は食べすぎだろうか? まだまだ マイブームは続きそうです。
ここまで如何でしたか。
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