第18話 カール 女難の相!(交際相手宅への訪問!)
◇◇交際相手宅への訪問!
クリスティナとアメリアの体力強化について考えながら屋敷に帰ったカールはクックにそのまま、調理室に連行された。
昨夜、学園から帰ったら続きを行うと話して居たからだ。
カールはクリスティナとアメリアの体力強化からケーキの新しいバリエーションへと気持ちを切り替えた
「クック! 今日はケーキよりもっと気楽に食べられるパイと云う物を作る。 何か果物ってある?」
「カール様 果物ですか?」 クックは明日の朝食でデザートに出そうとしていたアプルの実を思い出した。
「アプルの実がございます お使いに成られますか?」
「あ アプルか 丁度いい! アプルのパイにしよう」
早速、カールはクックに材料を用意させた。 アプルは皮を剥き、芯の部分を取って32等分に切り分けた。
それを砂糖を加えて煮ていく。 更にリキュールを少し入れ香り付きにする。
クックは少し戸惑いつつもカールの指示通り作業を進めていった。 まさか、新鮮なアプルを生ではなく砂糖を入れて煮てしまうとは。。。。 発想が追い付かない!
煮たアプルが冷める間に昨日、作って於いたパイ生地を取り出した。
パイ用の型が無かったので、浅底のフライパンを使用する事にした。
始めに昨日、作っておいた パイ生地を薄く延ばし、フライパンに伸ばしたパイ生地を敷き詰めた。
次にフライパンに敷き詰めた生地にフォークで穴を開けて事前準備は終わる。
冷めたアプルをパイ生地に隙間なく載せていき、最後は余ったパイ生地を格子状にしてアプルの上に乗せた 後は照りを付ける為に全体に卵黄を塗り 良く温めて於いた窯に入れ焼くだけである。
「クック 如何かな? 難しくないでしょ?」
「はい カール様 事前準備が必要なだけで作ること自体は誰でも出来るかと思います。」
そんな話をしている間に、この世界で初めてのアップルパイ。。。。 いや アプルパイが出来上がった。
早速、カールとクックはマルガレータの執務室へ出来上がったアプルパイを持って向かった。
「マルガレータ母様 昨日 話していたケーキの派生形のアプルパイが出来ましたので、試食をお願いします。」
マルガレータは今日 この試食を楽しみにしていた。
昨日、カールが作ったハンバーグにパスタ! それもカルボナーラと呼ばれるパスタは考えるだけで涎が出そうだった。
「そう 出来たのね! 戴くわ」
クックは早速、マルガレータの前で切り分けて行った。
小さなナイフとフォークを添えて、マルガレータの前に出された アプルパイからは甘い香りが立ち上って居た。
マルガレータは早速ナイフとフォークを使い、小さく切り分け口に運ぶとリキュールの香りに包まれた。そして、アプルの甘さと何層にも折りたたまれて作られたパイのサクサクした感触が口の中に広がった。
勿論、このサクサク感は初めての触感である。
もう驚く事は無いだろうと思って居たマルガレータだが 声を出す事を忘れるくらいに驚いた。
クックはマルガレータの反応が気に成ったのだが、自分から声を掛ける事は躊躇われた。
暫くしてマルガレータから 溜息と共に「カール! 素晴らしい こんな素晴らしく美味しい物は初めてよ!!!」マルガレータが再起動した瞬間だった。
クックはマルガレータからの絶賛の言葉を貰い、自分もアプルパイを食べてみた。
クックは自分で作って居たのだが、この触感が想像できていなかったのだ。
物凄く軽い層が何十にも重なり、それが口の中でサクサクと音を立てて崩れていく その後からリキュールの香りを纏った甘いアプルの触感
今回もクックが持つ、果物とは生で食べてこそ美味しいと云う既成概念が崩れた瞬間だった。
「カール! このアプルパイ本当に素晴らしいわ これは我が家の定番にしましょう」
「マルガレータ母様 クック、今回はパイの中をアプルの実を砂糖で煮た物を使いました。 これはお茶会で使えるでしょう。 また、アプルの代わりにパスタで作ったミートソースを中に入れて作るとまた、違ったものに成ります」
「あぁ~ そうか! カール様は次から次と如何してその様な素晴らしいお考えが浮かぶのでしょう」クックとしては無意識に出た真実の言葉だった。
クックは最近、カールから告げられた色々な調理方法と調理内容から無限の可能性が広がる、新たな食の啓示を受けたようだった。
カールはケーキとこのアプルパイを持って、交際宣言をした三人の屋敷を訪ねる事にした。
◇◇ アンネ・フォン・グリューネの元へ。。。。。。。。。
「アンネ・フォン・グリューネ様 本日はお茶会のお招き ありがとうございます。」
カールは笑顔で出迎えてくれたアンネに挨拶をした後、メイドに手土産のケーキとアプルパイを渡した。
手土産を受け取ったメイドは早速、それを持って調理場へ向かいお客様と一緒に居る伯爵様とお嬢様の元へと思った所で伯爵夫人の登場である。
メイドとしては事の経過を報告しない訳には行かなかった。
こうしてお客様にお出しするタイミングを完全に失う事に成るのだが。。。。
メイドたちはアーレンハイト家が最近、作ったケーキなる物の噂は知って居たのだ。 その話を伯爵夫人に話したことが失敗だっとともいえる。 以前、アンネがアーレンハイト家を訪問した時に返礼品として持ち帰ったケーキの事を伯爵夫人は忘れていなかった。
(カールが帰った後から、カールが持ってきた手土産が有る事を知った伯爵に夫人ともども叱られる事に成るのはもう少し後の事である。 そして、折角の手土産であるケーキとアプルのパイは伯爵夫婦とアンネ、メイドたちが美味しく頂いた事は広がった噂で知った。)
そのまま、応接室へ案内されて座ると紅茶が運ばれてきた。 カールが紅茶を飲み寛いでいるとノックの音と共に、一人の男性を伴ってアンネが入ってきた。
カールは静かに立ち上がった。
「カール様 父のクリーク・フォン・グリューネです。」
「初めてお目に掛かります。 私はフィリップ・フォン・アーレンハイトが五男 カール・フォン・アーレンハイトでございます この度、ご息女のアンネ・フォン・グリューネ様より交際の申込を頂き お受けいたしました。 宜しくお願い致します。」
「カール殿か アンネの父のクリークだ 良しなに頼む!」
「本来、男性が交際を申込んだ女性の屋敷を訪れる事は特別な意味を持つ事は知って居るな?」
「はぃ 存じております。 ただ、今回は特別な意味ではなく お嬢様が申込まれた相手がどの様な者かを見て頂きたく お伺い致しました。」
カールはクリークの目を見て堂々と自説を説いた。
こんな、挨拶から始まった会談で有ったが話はスムーズに進んでいった。
今日は午後からアメリアの処に行かなければ成らないので適当な所で屋敷を辞した。
カールが帰った後、クリークは書斎で一人 カールの事を考えていた。
入学試験で初めての満点を出した天才児 その話は本物だった、実際にカールと話して居るとカールが5歳児で有ると思えなくなっていく 対等の相手と財政の話しをしているようだった。
「はぁ~~ アンネは良き相手を見つけたようだ!」いつしか独り言を呟いて居た。
◇◇ アメリア・フォン・ロードメアの元へ。。。。。。。。。
カールはアンネの元を辞した後、アメリアの元へ向かった。 アメリアもエントランスで出迎えてくれていた。
「アメリア・フォン・ロードメア様 本日はお茶会のお招き ありがとうございます。」と挨拶をした後、カールは いつもの感じでアメリアへ話しかけた。
「アメリア これ お土産! ケーキとアプルパイって云うんだ 新作だよ!」
アンネの時と同じ様にカールは笑みを浮かべ挨拶をしながらお土産をメイドに手渡した。
「カール様 ありがとう アーレンハイト家が作ったと云うケーキは今、王都中で話題だわ!」
やはり、アーレンハイト家のケーキの噂話は広まって居るのか?
メイドが早速、ケーキとアプルパイを切り、お客様と伯爵様の元へ。。。
ここでも邪魔が入るのだ、ロードメア家の料理長はアメリアから何度もアーレンハイト家が作るケーキの話を聞いて居た。
勿論 伯爵夫人からもだ、食に対しては一切の妥協が無い料理長 メイドが準備していた、ケーキとアプルのパイが噂のアーレンハイト家から送られたものだと知ると我慢が出来なかったのだ。
メイドの制止を振り切りケーキを食べだす。 そのまま、ケーキとアプルのパイを持って厨房へ入ってしまったのだ! 蒼白になるメイドはなすすべが無かった。
流石に全て一人で食べてしまう事はしなかった料理長であるが、カールが帰った後に伯爵とアメリアから必ずケーキとアプルのパイを再現するようにとの厳命の元に許された。
後に料理長はアメリアがカールの許に嫁ぐときにケーキとアプルのパイのレシピを手に入れるのだった
アメリアも嬉しそうに話しながらカールを応接室へ案内した。
そのまま、アメリアと話をしていると一人の男性が入ってきた。
「父上 カール・フォン・アーレンハイ様です。」
「カール様 父のキース・フォン・ロードメアです。」
「只今 ご息女よりご紹介に与りました、フィリップ・フォン・アーレンハイトが五男 カール・フォン・アーレンハイトでございます。 本日は特別な理由はなく、私と云う人間を知って頂きたくまかり越しました。」
「ほぉ~~! 貴殿があのアグネスの息子か?」
「はぃ その通りです。 ロードメア導師からは良く目を掛けて頂いたと母も申しておりました。」
母のアグネスは学院に在学中から魔法騎士団の団長 ルック・フォン・ターナル伯爵や魔導師長 キース・フォン・ロードメア導師と親交があった。
導師とは王国の魔法師を束ねる者の事であり、その魔導師長である、キース・フォン・ロードメア導師はこのハイランド王国でも1,2を争うほどの実力者であった。
その、ロードメア導師からアグネスは将来の後継者と目されていた。
だから、キースはアグネスの息子であるカールを見定めようと魔力を見るのだが 残念ながらカールの方がレベルも能力も上で有るため 朧げな能力しかキースは確認が出来なかった。 しかし、キースが確実に分かった事が有る。
あの将来の後継者にしようとした、アグネスより5歳児のカールの方が数段、魔法師としては上で有る事だった。
「カール殿 アグネス殿は4属性の魔法を操れた、 貴殿は如何なのだ?」
ここで、誤魔化す事も出来たが、正直に話す事にした。
「導師! 正直に話しますが ここだけの事にして頂けますか?」
「良かろう! ここでは儂と貴殿だけの秘密としよう アメリアも話す事を禁じる!」
「ありがとうございます。 これは母達から話す事を禁じられた事ですが、私は全ての属性魔法が使えます。 現時点で既に母アグネスを凌駕していると云えるでしょう。」
カールは母アグネスと専用練習場で一緒に練習をしている時に、場合によってはキース・フォン・ロードメア導師だけには秘密を打ち明けても良いと云われていた。
カールの話を聞いたキースは声に成らない呻き声を発した。 この世界が出来て、全属性の魔法を使えた魔法師は居ない。
過去には5属性の魔法が使えた魔法師がおり、伝説として語られるだけである。
キースやアグネスが4属性の魔法を使える事でこの国の頂点に君臨し天才と崇められて居た程なのだ。
その後、キースとカールは魔法に付いて色々と話をした。
導師と云われ、この国では最高峰の魔法師であるキース・フォン・ロードメアで有るが、カールが語る魔法の内容は目から鱗が落ちる程、画期的な話ばかりだった。
でも残念な事に、カールと同い年のアメリアには理解が出来なかった。。。。
二人の魔法談議は時を忘れて白熱したが、気が付けば夕暮れに差し掛かり カールはロードメア家を辞する事にした。
「ロードメア導師 本日は有益で、楽しい時間を過ごさせて頂きありがとうございました。」
キースはカールが帰った後に一人、書斎で今日の出会いについて考えていた。
あのアグネスを5歳児が。。。 でも。。。 ん~~
カールとの会話は同等の研究者同士が学術の意見を交わしているようであった。
キースは何時しか声を出して笑っていた!
◇◇ クリスティナ・フォン・ハイランドの元へ。。。。。。。。。
翌日、カールは最後の一人である王女の元へ向かった。
王城の大きな門を潜り、衛士に訪問の目的を伝えると 複数の王女付きの侍女が迎えに来た。
カールはその出迎えに来た侍女に王妃殿下や皆様もどうぞと、複数のケーキとアプルパイを手渡した。
王城の中でもやはりアーレンハイト家が最近 作り出したケーキは噂の的であったのだが、王家では既にカールが来ることが事前に分かって居た為に、お茶会のお菓子は準備されていたのだ。
カールは侍女に案内され入った応接室で暫く待つとクリスティナと共に一人の女性が入ってきた。
「母様 こちらがカール・フォン・アーレンハイ様です。」
「カール様 本日はようこそいらっしゃいました。 母のヒルダ・フォン・ハイランドです」
「王妃殿下 お初にお目に掛かります。 私は只今 ご紹介に与りました フィリップ・フォン・アーレンハイトが五男 カール・フォン・アーレンハイトでございます。」
「カール殿 いらっしゃい クリスティナの母でヒルダよ」
ヒルダは気軽にカールへ挨拶をした。
実はカールが訪れる事を聞いて、とっても楽しみにしていた。
娘からの話でカールは才気に溢れ、まるで遥か年上の恋人のようだった。
暫くすると、クリスティナ付きの侍女がカールが土産で持ってきた、ケーキとアプルパイを持って入ってきた。
「王妃殿下 こちらはアーレンハイト様より頂きました ケーキとアプルパイでございます。」
「まぁ~~ いま 王城内はおろか王都中でも噂になって居るアーレンハイト家のケーキですか? それにアプルパイと?!」
ケーキは以前、クリスティナがアーレンハイト家を訪問した際に返礼品として持ち帰っているのだが、アプルパイは初めてであった。
「はぃ アプルパイは今日の為に新しく作りました 新作に成ります。 宜しかったらお召し上がりください。」
カールの言葉に王妃のヒルダとクリスティナは侍女に切り分けさせて早速 食べる事にした。
ケーキの柔らかさと雲を纏って居るのではないかと錯覚を与える生クリームの芳醇な味わいに、巷で噂の内容は誠であったと理解した。
その後のアプルパイは二人の女性を虜にし言葉を失わせる程であった。
更に王妃のヒルダとクリスティナからケーキの上品な甘さや、食べた時に口の中で弾ける驚きを与えたアプルパイの事など称賛の言葉を貰った。
ヒルダの探るような眼差しから次回を期待する様な眼差しに替わり、いつしか次の新作を期待されるようになってしまった。
こうして最大の難関である王城への訪問を終え、カールは帰宅の途に就いた。
カールは、この二日間で受けたプレッシャーは久しぶりの物だった。 唯 この世界に転生しての5年間では初めてで有り この緊張を味わっていた!
次回はもう少しクーガについて。。。。




