第15話 カール 女難の相!(食の騒乱 勝手な予兆が!)
◇◇アンネ・フォン・グリューネ。。。。。。。。。
アンネは帰りの馬車の中で、今日のお茶会の事を思い返していた。
始めにカールが出迎え、応接室には既にマルガレータが居た、心の準備は既に出来ていたのだが、突然の登場に心が乱れた。 流石、マルガレータ様だ!
次はあのフワフワで白いパンで作られたサンドイッチだ 今まで食べた事のない触感と味だった。
多分、パンに塗ってあった物も特別な物だろう。 本当に不思議な食べ物だった。
やっぱり三人で相談した王都で有名な焼き菓子をお土産にしたのは正解だったようだ。
あれで、大分 会話が進んだ。
でも 最後に出された、あの白いケーキとは何だろう? 完全に今までのケーキとは一線を引いていた。
物凄く柔らかな触感に複雑な味のハーモニー 今までに食べた事が無い深い味わいだった。
父や母達なら知って居るのだろうか? 幸いな事に お土産に貰ったので帰ったら聞いてみよう
上手くすれば我が家の料理人が再現をしてくれるかもしれない。
帰宅後、アンネは今日のお茶会の事を心配して色々と教えてくれた父と母に報告をする。
「父上、母上ただいま戻りました。 色々とご心配をお掛け致しましたが、大成功で終わりました。」
まずはお茶会の是非を伝えた。 その後、アンネは父のクリーク・フォン・グリューネ伯爵にグリューネ家の料理長を呼ぶように依頼をした。
それは、マルガレータから帰りに貰った返礼品のサンドイッチとケーキを説明するのに必要な事だったのだ。 それは幾ら父や母に説明してもその異常性を理解して貰えないと分かって居た為の行動だった。
料理長が呼ばれた所でアンネは返礼品として貰ったサンドイッチとケーキを出して、試食をしながら説明を始めた。
やはり、初めに驚いたのは料理長だった。
「グリューネ伯爵様、奥様、アンネお嬢様のお話でアーレンハイト家で食べられているらしいこのサンドイッチですが、これは当家では再現できません! それにこのケーキの柔らかさがどの様な物かも全く想像が付きません。多分、この二つともアーレンハイト家以外では再現は無理かと思います。もし、この製法を知るためなら、金貨はおろか白金貨を出しても損はないでしょう!」
やはり調理長はこのサンドイッチとケーキと云う物の価値を正しく認識していた。
クリーク・フォン・グリューネ伯爵は調理長の言葉で最近のアーレンハイト家の異常を思い出したようである。
そうか、謎の宝石に貴金属 そしてサンドイッチにケーキか。。。。
流石にこれら、一連の騒動がカールが基で起こった事とは知る由も無いのだが。
◇◇クリスティナ・フォン・ハイランド。。。。。。。。。
やはりアンネ先輩と事前に何度も打合せをしていて良かった、これがアメリアだけだったら どうなって居たか分からない。 デビュタント経験者は違うと云う事だと改めて思った。
それから、アーレンハイト家で出されたあの食べ物は何だ! サンドイッチだけでも十分に驚かされたのに 止めはあの白いケーキだ、王家でもあのような食べ物は見た事が無い。
色や形もだがあの柔らかさと美味しさだ まるで 天空の雲の様な柔らかさと白さに甘いだけではない上品なくちどけが癖に成る。
王家であのサンドイッチとケーキを再現できないか聞いてみよう。
でも、その前に国王と王妃である母の驚く姿が見れるな
クリスティナは始めに色々と相談に乗って貰った、王妃である実母のヒルダへ報告に向かった。
ヒルダはクリスティナの笑顔から訪問は成功裏に終わった事を悟った。
先ずは一安心である、クリスティナは四女で有るが出来れば政略結婚では無く好きな人の処に嫁いで欲しい。
そんな事を考えながらヒルダは報告を聞いて居た。
今回は三人の連合軍で強敵のマルガレータへ戦いを挑んだ事から始まり、事前にマルガレータの事を調べたり楽しかったと話して居た。
後半、クリスティナからアーレンハイト家で出されたサンドイッチとケーキの話になる。
クリスティナは素直に今まで、食べた事が無かったと話した。
ヒルダはクリスティナがアーレンハイト家からの返礼として貰って来たサンドイッチとケーキを一口食べた後、夫であり国王であるハンス・フォン・ハイランドと調理長、王国宰相のミューゼル侯爵の三人を呼びに行かせた。
急遽、王妃からの呼出しに三人は戸惑いを隠せずに居た。
ヒルダは何も言わず、三人にアーレンハイト家から貰って来たサンドイッチとケーキを食べさせた。
流石の調理長 無礼を承知でヒルダにこの食べ物の事を聞いた。
「王妃様 この食べ物は一体なんでございましょう? 今までに食べた事がございません 物凄く複雑な味である事は分かるのですが、製法が想像できません」
「まず こちらがサンドイッチと云う物でこちらはケーキと云う物らしい どちらも今日 クリスティナがアーレンハイト家を訪問した返礼品として貰って来たものです。」
調理長がケーキと云う言葉に反応している。 彼が知るケーキとは全く違うのだ。
「クリスティナの話ではアーレンハイト家では日常的に食べているようですが、料理長の先程の話では再現は難しいのですね?」
「はぃ 申し訳ございません 今時点では再現をする事は無理です。」
こうなると、アーレンハイト家と云うよりマルガレータが娘たちの訪問を狙った一連の企てによる物である事が四人の頭の中にはハッキリと分かるのだった。
特にヒルダにとってマルガレータが齎した素晴らしい宝石の件は記憶に新しい。 やっぱり、マルガレータの天才性は失われていないと改めて思い知った。 実を云うと今回は偶然の産物であり、マルガレータよりカールの異常性が問題だったのだが、そんな事は知りようが無かった。
◇◇アメリア・フォン・ロードメア。。。。。。。。。
う~ん 今日の挨拶は良く分からないが大成功だったようだ。
アメリアは物事を論理的に考え本質を求める。
今回のアーレンハイト家の訪問はカールの母であるマルガレータへの挨拶と云う名の顔見世である。
この顔見世で相手の母に嫌われると最悪な事に成る。
その顔見世が大成功で有り、三人はマルガレータに気に入られ 今後、自由な訪問が出来るようになったのだ。
そんな事を考えながら馬車に揺られ帰宅したのだが、帰宅後にアメリアは父のキースと母のエリザベートに呼び出された。
「アメリア! 今日のお茶会は如何であった?」
「はぃ 父さま 今日のお茶会は大成功であったと思われます。」
アメリアは順に今日のお茶会の様子を話し出した。
カールに出迎えられた事、 マルガレータが応接室で既に待っていた事(この話の時に父と母は流石と頷いて居た) 次にマルガレータが出したサンドイッチの話に成った時 母のエリザベートに話を遮られた。
幸にマルガレータからの返礼としてサンドイッチを貰っていたので、それを出してから話を進めた。
次に王都の焼き菓子のところで良いチョイスでしたと母からも合格点を貰ったのだが、最後にケーキでまた母からの鋭い質問が入った。
やはり返礼のケーキを出して味見をした所で父も母も言葉を失っていた。
アメリアは今日の訪問の内容を話し最後にマルガレータから「カールの事を頼む」と云われたと話を結んだ。
如何やら、本当に今日の訪問は大成功であったらしいのだが、このサンドイッチとケーキだ どうなって居る?
まず、このサンドイッチ 柔らかな真っ白いパンの中に挟んでいる味深いサラダと肉 更に分からないのが このケーキだ 当家の調理長に再現が出来るのか?
この世界では、商家であれ、貴族家であれ初めに成しえた物を自家だけで密かに食べる事は許されるが、無断で作り披露する事はタブーとされていた。
通常は作る時は始めに作った処に其れなりの対価を支払い許可を得る事が決まりであった。
その対価は作った物によって保障される期間と値が決まって居た。
食べ物で有れば、10年の期間は対価が保証されるのだ。 此れは製法を明かして商業ギルドに申請をする方法と製法を明かさず商業ギルドに申請をする方法に分かれていた。
勿論 製法を明かす事で多くの参入者が増えるが物販単価は低くなる、しかし総体的収益が見込める。
明かさない場合は、その貴重性から物販単価が高騰するが多くの参入者が見込めず 総量的な収益は低く成る。 これは 販売する市場と販売方法など戦略の話に成ってくる。
今回のサンドイッチとケーキはまだ、商業ギルドへは申請がされていないので誰も製法が分からず アーレンハイト家では新しい、食べ物を作ったと密かに噂に成っていった。
当然、これらは長男で嫡子のアウグストや次男のエーリッヒの所まで話が来た。
二人にしてみれば、寝耳に水である。 最近の実家はどうなっているのか?
でも、考えれば実家がアウグストを次期、アーレンハイト家の当主として王家に認めさせる布石と捉えることが出来た。
母マルガレータなら アーレンハイト家の価値を一気に高めた所で次期当主を王家に認めさせると云う手法は当然と考える。 何故ならアウグストだってもし同じ立場なら同じような手法を取るだろうと考えたからだ。
アウグストはエーリッヒと連絡をとり、密かに進めている話を加速させる必要を感じだした。
また、兄たちが騒ぎ出しました?
一人蚊帳の外のカール どうするのでしょう
全然 クーガは出てこず? もう少しお待ちください。 多分、その次の後半戦? か その次の次には話せるかも?




