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第23話 カールの更なる受難

◇◇ カールの受難 続き 本番とも云う

マルガレータからの愚痴めいた気軽な発言を聞いてカールから深い溜息が漏れていた。


そうであるカールの受難はこれからが本番と云えた。 


マルガレータが何故、このような発言をしたかと云えばカール本人は気軽に王都の屋敷から新領都ミケーネや新衛星都市ダーマ、海辺の街アーレンなどを自由に行き来をしている。


これはカールだけではなく、カールの配下のヨウコも同様であった。


その為にカールが使う転移魔法がマルガレータには一般的な魔法に思えたのだ。


これがカールの母、アグネスで有ればカールが使う転移魔法がどれ程、高度で難易度が高い魔法であるか理解できるのだが、マルガレータが魔法に疎いと云う事も関係していた。


更にここにいる人々の中で残念な事に転移の魔法が如何に高度な物であるのかアグネス以外は正しく理解が出来ていなかった。


「なぁ~ カール あの姿見みたいに姿や声を届けるだけじゃなく、移動も出来ないか?」等々、マティルダがとんでもない事を云い出した。


更にカールの溜息は深い物に成って行った。


「あ それは良いわね」マルガレータがマティルダの話に同調ともとれる発言をしだした。


「ちょっと 二人とも、それは無理よ 幾らカールでもそれは不可能だわ」アグネスは必死にマルガレータやマティルダの話しが現実的でないと話していた。


マルガレータやマティルダたちにしたら本当に冗談のつもりの発言だったのだが、カールにはそこまで分からなかった。


「カール! 幾ら何でも無理よね?」アグネスはいくらカールでも不可能な事は有ると云う思いから確認の声を掛けていた。


カールは暫く、考えていたがマルガレータやマティルダに向き直り 諦めの発言を行った。


「マルガレータ母様、マティルダ母様 分かりました あの姿見みたいに姿や声を届けるだけじゃなく、移動が出来る物を用意致します」このカールの発言に一番、驚いたのはカールの母であるアグネスだった。


アグネスは魔法に於いて賢者の塔にいる研究者に匹敵する程の実力者だった為にカールが了承した姿見による移動がどれほどの難易度か想像すら出来なかった。


カールの諦めに似た発言を聞いたマルガレータやマティルダは子供が新しい玩具を貰った時の様な表情でカールを見つめた。


「カール 本当? 大丈夫?」アグネスは息子のカールの発言に慄きつつ確認の言葉を発していた。


この一連のやり取りの中、完全に蚊帳の外に置かれていたのが男性陣である。


当主であるフィリップにシュワルツやゼグザーは静かに事の成り行きを見ているしか出来なかった。


しかし後にこの大事件で一番に被害を受けるのがこの三人であった。


フィリップは今までの領地巡りで費やしていた時間が無くなった事で領地経営に深く関わる事に成る。


また、シュワルツは姿見による報告が実際にマルガレータやアグネス、マティルダの前で報告をすると共に海兵隊の訓練だけでなく新規に加わった新兵の訓練にも立ち会わされることになった。


更にゼグザーは今までマルガレータの補佐として王都だけを担当すれば良かったのだが、姿見による移動が可能となった事で新領都ミケーネや新衛星都市ダーマ、海辺の街アーレン等の補佐も任される事になるのだが 三人がこの事実に気が付くのはもう少し後の話である。



カールは会議室に居たメンバーと共にアグネスの執務室へ移動をした。


領主や代官達は基本的に二つの執務室を持っている。 一つが行政館に存在する執務室である そしてもう一つが領主館にある執務室である この領主館にある執務室は作戦会議室の役割も備えている為、事前に認証された人がいなければ中に入る事が出来なかった。 逆に云えば認証された人が中に居なければ、掃除の為に使用人やメイドが立ち入る事も出来ないと云う事だった。


また、使用人やメイドが執務室に居る時に認証された全ての人が部屋を出ようとすると警報音が発せられるようになっていた。 それ程、この部屋は機密管理が徹底されていたのだ。


領主館にある執務室は作戦会議室を兼ねている為、大きな執務机の前には操作により通信の姿見が天上より降りてくる。


また会議をするスペースにも正面には特大の姿見が設置され多方面の状況を映し出される事が可能だった


そこにカールはアーレンハイト家の紋章が描かれた豪華な特別製の扉を作り出した。 これはカールの無尽蔵ともいえる魔力でも相当量を要して作り出された。 この豪華な特別製の扉をカールは取敢えず5つ作り出した。


この後、カールは作り出したアーレンハイト家の紋章が描かれた豪華な特別製の扉にここに集まった人々に本人確認のための認証を行っていった。


魔力による承認作業が終わると、次は実地試験である。 


カールが新たに作った豪華な特別製の扉を壁に並べてから集まった人々に説明を始めた。


既にカール以外は興味津々でカールの作業を見つめて居たのだが、カールの準備が整った事を感じで皆が一様に緊張しだした。


カールはここに集まった人々に静かに説明を始めた。 カールが創った物は姿見などと同様に空間魔法を使った魔法具と呼ばれる物だった。


豪華な特別製の扉の入口を開き中に入った処で扉を閉めると出口の扉が現れる、行先の扉を開けば転移が出来ると云う物だった。


説明を聞いてしまえば至って簡単だと云える。 更にカールはここで事前に登録した人以外は入口の扉を開く事は出来ないと説明した。


これはメイドや使用人が間違って扉を開いて別の場所に転移をしないようにとの処置で有った。


この話も当然の事として受け入れられた。


更にカールが姿見とは違い豪華な特別製の扉を作った理由を説明した。


話を聞いてしまえば納得以外の何物でもない。 普段、執務室にある姿見は天井などに設置されている事が多く、これをそのまま使用するには無理がある事だった。


また、もし使用人やメイドに姿見からの出入りを目撃された時の言訳が出来ない事も理由の一つだった


それに比べて豪華な特別製の扉なら執務室に置かれていても不自然ではなく、尚且つそこから人が出入りしても不審には思われない事だった。



こうして説明された豪華な特別製の扉を使用して転移の検証が行われた。


初めに行うのは作成者であるカールである。 カールは一番左の扉から入り一番右の扉から出てきた。


当然の事だが扉の反対側には部屋など無い事から扉を使用して転移をした事が証明された。


次の段階なのだがカールは一人で試させる事はしなかった。 それは相手に不安を抱かせない為であった。


カールは最初に当主であり父であるフィリップと二人で扉を開けて中に入った。

扉の中は何もない空間である。 ただ入ってきた扉だけが存在していた。


フィリップは入ってきた扉を閉めると新しく五つの扉は出現した。


扉には出口の名前が書かれていた。 フィリップは王都と書かれた扉を開いた そこは入った扉の隣だったのだがフィリップとカールは気にせずそこから出て扉を閉めた。


こうして残りの人々も豪華な特別製の扉による転移の検証を行っていった。


彼らの顔には今までに無いほどの満足感が漂っていた。


この後、カールにより注意事項の説明を受けたのだが、これも納得の内容だった。

最も重大な注意事項は転移先の扉を誰かが使用中の場合は中から開く事が出来ないと云う事だった。


今回、創られた扉は王都を始めとした重要拠点の執務室にカールによって設置される事になった。


流石に母達やシュワルツ、ゼグザーに保管を頼み各自で設置を依頼する事は無責任と云えた。


その為、カールが保管をして執務室の主が指定をする所にカールが設置をする事になったのだ。


初めに設置されるのは領都ミケーネであり母のアグネスが設置場所を指定した。


カールが作る全ての執務室には四つの会議室を作っていた。 通常は第二から第四の会議室が使われるのだが、そもそも執務室の会議室を使う事自体が高度な機密を扱う場合だけだった。


結果的に転移の扉の設置場所は第一会議場の中に決まり、そこは母の執務机が有る背後で、最も重要な会議をする場所であった。


カールを始めとしてアーレンハイト家の面々は国家に於ける最高機密として国王陛下だけにはこの扉の存在を明かす事にしたのだが、流石のマルガレータも国王陛下と二人だけで話をする事は出来ずに王国宰相のミューゼル侯爵と近衛騎士団の団長 ジラード・フォン・リッツ侯爵の三名が知る所となった。


後にこの扉は王宮の最も奥まった部屋に設置され、歴代の国王だけが申し送りをされ受け継がれる事に成るのだが、それは更に後の事であった。


更に聖女ミューアがカールに嫁いだ事により聖女宮にも密かに設置される事に成ったのだが、これも後の事であった。


この転移の扉を作った事でアーレンハイト家の面々はカールの異常性に対して完全に麻痺をする事になった。


その結果、カールが何かをしでかしてもカールだから仕方がないと考えるようになって居た。





◇◇ 女神ディアナのお手伝い

女神ディアナは神身事故を起こした事で未だに1級神(仮)の身分のままなのだが、カールと云う使徒を得た事でかなり浮かれていた。


カールは女神ディアナと彼女が恋い慕う担当上級神のユピテルの力の一部を引き継いでいる。


そして最近では女神ディアナは彼女の使徒であるカールを次元・時空移動のドライバー代わりに使っていた。


カールが新年の会議を終えて自室で寛いで居ると女神ディアナからの業務命令が頭の中で響きだした。


「カール様 いま 宜しいでしょうか?」女神ディアナがこのように下手に出る時は決まってカールへの依頼ごとをする時だった。


「はい 何でしょう」カールも当然の事なのだが女神ディアナから面倒な事を云われる事は分かっていた。


「実はですね また 次元・時空移動のお手伝いをお願いしたいと思いましてお声を掛けたのですが」カールは盛大な溜息と共に使徒としての権能を使い女神ディアナの元へ出向いた。


天界を守る天狐は天界の門を守護する妖狐なのだが、カールは女神ディアナの使徒と云う事で顔パスであった。 またカールがヨウコの主人であると云う事も影響していた。


女神ディアナは1級神の試験を受けるために既に七つの世界を作り出していた。

本来なら1級神合格を以って次の段階に進み八つ目の世界を作り出す準備をするはずだったのだが、残念な事件が起こり現在は1級神(仮)の身分だった為に次の段階に進む事は保留になっていた。


これは神々の世界に於いても特殊な事であると考えられていたのだが女神ディアナは気にもしていなかった。


彼女の上司にあたる担当上級神のユピテルの下には多くの女神が在籍していた。 その中の一人であった女神ディアナは神身事故を起こした事でユピテルから忌避されるどころか逆に目を掛けてもらえる存在に成っていたのだ。


更に女神ディアナはこの神身事故で初めての使徒を得る事が出来た事を同僚の女神たちに話していたのだ。 


将来、女神ディアナは同僚の女神の一人から些細な嫌がらせを受ける事に成るのだが、いまはその様な兆しさえなかった。


カールは天界の中にある次元・時空移動管理事務局の応接室で色々な視線を感じながら女神ディアナを大人しく待っていた。 中には見習の代わりにお茶出しをしようとして直前で止められた女神も存在していた。


天界の中にある次元・時空移動管理事務局を直接、訪れる事が出来る使徒などカール位しか存在しなかった。


ここに在籍している女神たちはまだ正式な使徒を持つ事が出来ない者や使徒を持って居ても天界に出入りする権能を与えられて居なかった。


ここに出入りできる使徒は上級神のユピテルのような者に仕える使徒しかいない。


しかし上級神に仕える使徒はかなり広い権能を持って居るため忙しすぎて天界の次元・時空移動管理事務局などと云う所には来なかった。


女神ディアナの使徒であるカールは上級神であるユピテルの権能の一部を有している事と上司の業務命令で出向いている為 正規の手続きの下に此処に来ていた。


暫くして女神ディアナが現れ、今回の用向きの話に成った


「カールさま 私が七つの世界を創造している事は既にお話しをしたと思いますが、その中で色々と試したくて作った『魔物が居る世界マモン』と云う世界があるのですが、どうやら縄張り争いが激化していたのが収まり次の段階に移行しそうなのです そこで視察をしようと思いまして、お呼び致しました」


女神ディアナの話しでは『魔物が居る世界マモン』ではかなり気性が激しい魔物が存在しているらしいとカールは想像した。


女神ディアナの性格はぽわ~んとしたおっとりタイプで争い事に向いて居なかった為に、業務命令として『魔物が居る世界マモン』を作ったのだが、管理を全く行っていなかったらしい。


カールとしたら現地である『魔物が居る世界マモン』へ行く前に女神ディアナから事前情報を仕入れたかった。


女神ディアナ様 これから行く『魔物が居る世界マモン』とはどのような処でしょうか?」カールの飾らぬストレートな質問に女神ディアナもカールに負けず劣らぬ回答をした。


「カールさま ごめんなさい 判らないのです」カールは女神ディアナの言葉に打ちひしがれていた。


現地に行って判断をするしかないと云う事だった。


カールが項垂れる姿勢に女神ディアナも拙いと思ったのか、次元・時空移動管理事務局の応接室で有るにも関わらず1級神(仮)の権能の基に一振りの神剣を創りカールに与えた。


カールが創る神剣でさえカールが今居る世界ルミナリアではとんでもない業物だったが仮にも1級神(仮)の権能を基に創り出された一振りの神剣は神剣としての格が違った。


カールはこの一振りの神剣をお守りとして女神ディアナが創り出し、放置していた『魔物が居る世界マモン』へのお供として出かけた。




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― 新着の感想 ―
>「カールさま ごめんなさい 判らないのです」カールは女神の言葉に打ちひしがれていた。 デスマーチに直面した作者の実体験かな?
[気になる点] jと一文字のみ入っている行があります
[良い点] 打ちひしがれた所で吹いた。カール頑張れwww >「カールさま ごめんなさい 判らないのです」カールは女神(ディアナ)の言葉に打ちひしがれていた。 現地に行って判断をするしかないと云う事だっ…
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