表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/414

第 2話 オマケのデビュタント

正月も二日目です


今日は箱根マラソンを堪能しよう。

◇◇オマケのデビュタント


王国に於けるメインの行事が終わり、今年デビューする少年少女たちの初々しい発表を待つだけとなった。


発表は会議の五日目 少し遅い午前中から始まる。


会場となる広場には綺麗に着飾った少年少女たちが緊張の面持ちで集まっていた。


中には見知った顔を見つけて不安げに集まっている少年少女たちも居た。


この場には保護者である、親は居ない。 彼らは別の場所で少年少女たちを出迎える準備をしていた。


少年少女たちは昨日、陞爵したカールの事を話している者も居たが、肝心のカールとの面識がない為に本人との認識が出来ていなかった。


そしてカールを嫌うレオナルド・フォン・ガードナー伯爵家の四男でリボーク・フォン・ガードナーは取り巻きと共にカールを睨んでいた。


リボークは学年で云えば、先輩にあたるのだが、生まれの関係でデビュタントは今年に成っていた。


漸く準備も整い呼び出しに従い少年少女達は両親たちが居並ぶ披露の間へ一人ずつ案内されて行った。


この案内される順番は決まって居ない くじ引きだと云う人も居るほどだが カールの周りからどんどんと人が居なくなり カールが一番最後になった。


最後にカールが案内され披露の間に入るとカールは注目を一身に浴びた。


「カール・フォン・アーレンハイト伯爵殿 ご入場」


それは入ると共に紹介される名前によって名前と顔が一致する瞬間だったからだ。


そしてカールの場合は新しく拝命した爵位と共に呼ばれた。


中々、デビュタントの場で爵位を持っている者など居ない


全員が披露の間へ入場した事で次のステージに移る それは婚約者の発表に該当する人がいる場合にはその発表が行われる。


今回はカールの他にも二人ほど該当者が居た どちらも年上の婚約者を持つ女性たちだった。


彼女たちは晴れて婚約者と名乗る事が出来る その印として年上の婚約者から花束を贈られていた。


今回もカールは最後の発表で有った。


発表は男性側の親族が行う。


壇上にカールの父、フィリップが向かった。 それだけで周りの貴族から騒めきが起こった。

他の貴族家にとってカールに娘をと考えるのは当然だったからだ。


まずカールの父フィリップから息子の紹介があり、次にその息子の婚約者を発表する流れに成っていた。


「まず これから婚約を発表する息子を改めてご紹介いたしましょう カール・フォン・アーレンハイト伯爵です 宜しくお願い致します。 息子は幾多の試練を乗り越え伯爵を拝命しております また、将来は私の後を継ぎ辺境伯家を継ぐ事が既に決まっております」何人もの諦めの顔をした貴族家からも拍手が起こり、カールは紹介に続いて父のそばに移動をする。



「それでは息子の婚約者を発表いたします 初めにクリーク・フォン・グリューネ伯爵家 ご令嬢 アンネ・フォン・グリューネ嬢  次にクリスティナ殿下 そしてキース・フォン・ロードメア伯爵家 ご令嬢 アメリア・フォン・ロードメア嬢 ・・・・・・・

最後に聖女ミューア・ルミナリア様の四名となります。」フィリップは聖女ミューアの前に少し間を開けてから最後まで言い切った。


そして四人の名前を云い切った後に脱力感に襲われていた。


婚約者として紹介された女性たちは次々にカールの元に集まってきた 最後の聖女ミューア・ルミナリアが正面の扉から現れた時は 会場の彼方此方から悲鳴にもにた騒ぎが起こった。


この場に居る物たちは名前を呼ばれた少女たちの事は知っていた それはただ知っていたと云うべきかもしれない



フィリップの妻に成った者たちもハイランド王国では知らぬ者が居ないと云う程 有名人であった。


今回の発表もそれに近いものが有ったが 一部 理解の埒外の名前が含まれていた。


初めに呼ばれたアンネ・フォン・グリューネ嬢はハイランド国王の財務卿を務めるグリューネ伯爵の三女である。


次が問題である 国王陛下の第一王妃の次女であり第四王女でもあるクリスティナ殿下は外交先からも望まれている所が多かった。


そして次が魔導師の家系を色濃く受け継いでいるキース・フォン・ロードメア伯爵の長女である。 彼女もカールの母であるアグネスに次ぐほどの魔法の才を持っていた。



此処までは何とか人々の意識の中に留まっていたのだが、次に呼ばれた名前は皆の頭の中を通り過ぎて行った。


誰が聖女様を妻に迎えようなど考えるだろうか、それは創造神たる女神(ディアナ)を侮辱するのと同等だったし聖女の方で婚姻を受ける訳がなかった。


それが世間一般での常識だった。


その為 名前を呼ばれた後に空白の時間が生じた。 その空白の時間は聖女本人が入場するまで時が止まったようだった。



「以上 四名が我が息子 カール・フォン・アーレンハイト伯爵の婚約者になります 以後 皆様に於かれましては暖かくお見守り下さいますよう お願い致します」フィリップは最後の気力を振り絞り最後まで言い切った。


まだ、此処にいる人々の時間は回復して居ないが国王のハンス・フォン・ハイランドも我が娘の事もあり言葉を掛けた。



次にカール本人から四人に対し言葉と共に記念の印を贈る事に成っていた。


初めに「アンネ・フォン・グリューネ様 貴女から深い安らぎと愛を頂きました その感謝の印として指輪を贈りたいと思います」カールは戸惑うアンネの左の薬指にオリハルコンで作られた指輪を付けた。


次に「クリスティナ・フォン・ハイランド様 貴女からは何物にも負けない信念と愛を頂きました その感謝の印として指輪を贈りたいと思います」カールはアンネと同じようにクリスティナの左の薬指にオリハルコンで作られた指輪を付けた。


そして「アメリア・フォン・ロードメア様 貴女からは信じる力と愛を頂きました その感謝の印として指輪を贈りたいと思います」カールはアメリアの左の薬指にオリハルコンで作られた指輪を付けた。


最後に「聖女ミューア・ルミナリア様 貴女からは民を慈しむ力と愛を頂きました その感謝の印として指輪を贈りたいと思います」カールはミューアの左の薬指にオリハルコンで作られた指輪を付けた。


この指輪を付けると云う習わしはこの時に誕生した。


この時、カールが与えた指輪は只の指輪では無かった 創造神たる女神(ディアナ)の祝福とカールからの加護が籠められていた。


残念ながらその事実に気が付いたのは聖女ミューア・ルミナリアだけだった。


この時、カールより永久の愛が指輪と共に渡された。




後に自分の娘をカールへ嫁がせようと考えた者も居たのだが、聖女ミューアの名前を聞いた後ではそんな気も失せたと話していた。


この発表でカールの婚約者たちは正式なものに成った。  公式、非公式に捉われず婚約者として振舞う事が許されるのだ。


この後は夜会まで時間が空く事になる。 カールと四人の婚約者達は王家の昼食会に招かれていた。  当然の事にカールの両親や婚約者達の両親も同席する事になった。 この昼食会には王国宰相のセバスティアン・フォン・ミューゼル侯爵と近衛騎士団の団長であるジラード・フォン・リッツ侯爵に魔法騎士団の団長であるルック・フォン・ターナル伯爵も加わっていた。


今回の婚約の騒動は婚約者達は当然の事として知って居たのだが、他の婚約者の両親たちには知らされていなかった。


流石に王家には根回しが必要だった為に事前に知らされて居たがグリューネ伯爵やロードメア伯爵は初耳だった


こうして改めて昼食会の席でカールより全ての者に聖女ミューアとの馴初めが紹介がされた。


この話に聖女ミューアはエルフの特徴である耳を赤く染めて聞いていた。


聖女ミューアはカールからの紹介の後にカールの正体を話した。 この話は既に女神ディアナの承認を得ていた事である。 この事に衝撃を受けた人々の中にカール本人も居た。


「ちょっと ミューア 何を云ってるの」 カールにしたらまさか、こんな所で発表されるとは思っても居なかったのである。


「カール様 既に女神ディアナ様からご承認を頂いております」ミューアとしたらカールが使徒様である云う事を秘密にする事が難しくなる可能性を心配したのだ。


そして他の聖女達とも相談し女神ディアナにお伺いを立てたのだ。  その結果が国王陛下を含むカールの妻たちとその両親に打ち明けなさいと指示をされたと話した。


聖女ミューアから話を聞いた人々の中で最初に反応したのは国王であるハンス・フォン・ハイランドであった。


「カール殿 いや 使徒様 これまでのご無礼をお許しください」国王陛下は両膝を着き女神ディアナに祈る時の最上級の礼をもってカールに挨拶を行った。


この礼に驚いたのはカールばかりではない、同席していた王国宰相を始めとして王国の重鎮たちも言葉を失った。


「国王陛下 どうか 頭をお上げください これではお話が出来ません」カールは困惑と共に国王陛下に言葉を掛けた


「使徒様 ありがとうございます されど、例え国王であろうと使徒様の前では只の人でしかありません、使徒様は紛れもなく女神ディアナ様の代理であります」国王の言葉は教会に於いて司教以上の者が知る、秘言葉であり全ての王国や帝国を治める者が引き継ぎとして語り継がれる内容だった。


これは王妃であるヒルダ・フォン・ハイランドも初めて知る事だった。


そしてここにいる全ての人が使徒様とはこの世界に於いて女神ディアナに次ぐ存在であると改めて認識するに至った。



しかし頭では理解できても心の理解が追い付かない他の面々の中でカールの母達は己の中で納得をしていた。


マルガレータは己の知力以上の閃きを見せるカールが女神ディアナの使徒様であれば当然であると納得をした。


実母のアグネスは自分が初めて産んだ男の子が使徒様であると云う事実にカールが産まれてから今日までの事が走馬灯のように思い出された。 そして目覚めの儀式で気絶した事をカールに聞いておこうと思ったのだ


そしてマティルダだが今の自分より明らかに強い事に納得が出来た。 いや  使徒様である 強くて当たり前なのだ 自然と笑みが零れていた。


「カール 目覚めの儀式の事は覚えているわね?」アグネスはカールの顔を見ながら問いただした。


「はい あの時は、皆様にご迷惑をお掛け致しました。 実はあの時に女神ディアナ様に拝謁をし、色々な話を伺い使徒として目覚めたのです」カールの告白に三人の母達はそれぞれ頭の中で今までの出来事を思い出していた。


この世界では女神ディアナ様と話が出来るのは四人の聖女と教皇しかいなかった。 まして女神ディアナに拝謁が出来る存在など居ない。


カールは自分が使徒である事を秘密にして欲しいと全員に話して了承された。


勿論、こんな事は依頼されなくても話せる事ではないのだが、しかしアンネ、クリスティナそしてアメリアにはいま告白された使徒と云うものが分かっていなかったのだが、ただ事ではない事だけは理解が出来た。





聖女ミューアの婚約の知らせは瞬く間に王都内に広がった。 そして時を同じくして各国の大使を通じて国元に知らせが走った。


そして王都の教会にはこの問い合わせが殺到した。 流石に王都の教会には教皇の命で当日まで秘するように命令が行き届いていた。


教皇からの知らせは全世界に散らばる四人の枢機卿を初め大司教や司教には通達として知らされていた。


その為にカールの目覚めの儀式を執り行ったリザイア司教やカールや母達とも親交が深かった大司教であるエリザベート・イーストは密かにマルガレータやアグネスに祝いの言葉を贈った。


聖女に対する情報は第一級の知らせである。 全ての国が緊急として知らせを届けた。


この知らせで困った事に成る国がある コーラル連邦やカリュー帝国であるが

カールが実際に結婚をするまでに十年の歳月が有る事を聞き、黒い笑みを浮かべた。


人の噂など三年経つと風化してくる その為に準備を十分行い四年から五年後位に事を起こせば目的が達せるだろうと考えたのだ


その一方で、追い詰められたのはガードナー伯爵家を頂点とする一派であった。


まさかカールが王家の姫を嫁に迎えるとは考えても居なかった そして聖女である 教会は拙い

権力とは違うファクターで力が働く コントロールが効かないのである。


特に農民の中では聖女と創造神たる女神(ディアナ)は等しい存在だった


この話は時を置けば広がりを見せる 限界は今年中だろうと考えられた。


こうしてガードナー伯爵家を頂点とする一派は今年の収穫後を目安に事を起こす準備に入った。


この事は時を移さずカールやマルガレータの下にフラウを通じて齎された。



この新年の発表で全ての歯車が動き出した。


第一の禍の種であるガードナー伯爵家を頂点とする一派は今年の収穫後に決起するだろう。

これはハイドに鍛えさせた領兵を使う そして 今は騎士爵に成っている5名の元副官とその後に騎士爵に成った6名の女性を含む10名の騎士爵を使い 次の騎士爵達を育てる事にしている


上手くすると初めの元副官である騎士爵を男爵に引き上げる事が出来るかもしれなかった。


カールが作っている街は騎士爵が管理する規模を超えていたのだ せめて男爵となり2~5の村や町を管理して欲しかった。


これは既に母達にも伝えてあったので、後はこの後に開かれる領都ミケーネでの会議で彼らにハッパを掛ける事にする。


そして、この国内での実践を通じて育った兵士を次の備えとする


次が第二の禍の種となるコーラル連邦やカリュー帝国を相手にする事である


これも攻撃をされるタイミングを調節しなければならない。


でも共に攻撃されるポイントは絞る事が出来ているために 辺境伯家に陞爵した新生アーレンハイト家の力を示さなければならなかった。


相手の現状だと四~五年先と考えられた。


それまでに領兵の質を上げる事が命題となり、更に此方は相手の企みを知って居るという強みがあった。


そしてその強みは視覚の情報も得る事が出来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ