表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/414

第31話 いつもの日常に!(それぞれの歯車は回りだす)

◇◇それぞれの歯車は回りだす

王都での叙勲など煩わしい式典が全て終わり母達やシュワルツに五人の指揮官たちも領地へ帰って行った


シュワルツや指揮官たちには遠隔で行われる座学が待っている 勿論 講師はマルガレータ母様である


初めは張り切っていたけど、いつまで持つかは心配ではある


久しぶりに静かな日常が戻ったのかと思っていたら マルガレータ母様に呼び出された。


「カール 今回は色々とご苦労だった これからも頼むぞ!」マルガレータ母様からあいさつ代わりの励ましの言葉を貰うが、 これは単なる話の前説であることぐらい分かっている。


「これから この姿見を使って 毎日 話をする訳だが、何か書く物が作れないか?」マルガレータ母様の云わんとする事は説明をするための黒板が欲しいのだ。


「マルガレータ母様 分かりました 早速 作ってみましょう」一日の準備期間を貰い、カールはミケーネ山脈を越え、海岸線に転移をした。


此処で貝を拾うのだ 本来であれば魔法で作ってしまうのだが、 今回は誰にでも分かるように材料から製品のチョークが出来るまでを見せる事にする


今まで人間が入っていない海岸は無数の貝が生息していた その中には当然、死んだ貝もある 見える範囲に有った貝を全て収納魔法でしまい込んだ。


そのまま、王都の屋敷へ転移する。


料理長のクックに云い 早速 今日は貝尽くしの料理である。

王都は海から離れているせいか、新鮮な魚介類は貴重である クックも魚介類の料理はそれほど得意ではないらしい


カールとしては欲しいのは貝殻だけなのでどうでも良かったのだが、ボンゴレを紹介した。 生前、好きだった料理だったのだ。


屋敷中の皆が堪能した所でクックには事前に話してあった貝殻を回収する。


昼食後、マルガレータ母様や家令のハリス達の前で貝殻を高温で焼却し砕いて粉にしてから糊を混ぜ固めてから乾燥させる 大体 七十度位で乾燥をさせればいい こうして 簡易的なチョークを作って見せる


この時、白だけでは味気ないと思い 色々な顔料を混ぜてチョークを作ったのだが、この色々な色のチョークがマルガレータ母様の琴線に触れたようで喜んで貰えた。


後は黒板である 大きな看板に成るような板を用意させ、それに色がよく映える黒の塗料を二度塗りして支える足を付ければ完成である


これは、今後の事もあるので手作りをした。


黒で二度塗りされた板が乾いたところで、貝殻で作ったチョークで文字を書く 少し滑らかさが足りないけど、十分に役に立つ 後は消すための黒板けしだ これに廃棄予定の雑巾を使う事にする。


準備が出来たところでマルガレータ母様に書き心地を体験してもらう事にした。


マルガレータ母様は何かブツブツ云っていたが、途中からご機嫌な様子に代わってきた まず 成功の様だ


「カール これは良いな きっと これは学院でも使えるぞ」マルガレータ母様の言葉でカールも何やら納得をしてしまう


既存の黒板とチョークは材質が悪いために書いた内容が見えない事が有った。 それにチョークは色々な色彩が加わった事で表現の仕方が変わると云われた。


これはマルガレータ母様の時代もそうだったらしいので、今と変わらないのだろう


その黒板とチョークの改良版である この改良版は書いた文字がはっきりと黒板に残っているため書いた内容が相手に伝わった。 更にチョークに白以外の色が加わった事で文字を強調したりする時にも便利だと云われた。


更にその内容を素早く消す事が出来るのだ これも画期的だった


本来、黒板とチョークは学園など教育機関で使われるべきものだった。


「ではマルガレータ母様 商人にこの黒板とチョークを作らせましょう それを売れば、問題は無いと思うのですが」


打てば響くようなカールの受け応えにマルガレータ母様はいつしか微笑んでいた。

マルガレータはカールの反応の良さが気に入っている。


どんな話をしても適切な回答を即座に返す、マルガレータにとって最高の話し相手である


マルガレータは話が決まれば、行動に移す事に躊躇いはない


こうして、黒板とチョークはマルガレータの実弟であるジョンビーノ・アスターにより王国中に売り出される事に成った。 そして、瞬く間に黒板とチョークはアスター商会の名と共に王国はおろか全ての大陸中に広まっていく。


カールは母マルガレータの要望に応える事で黒板とチョークを作ったのだが、その後の事は全てマルガレータ任せにする事にした。


黒板とチョークの存在により姿見による遠隔地にいるシュワルツと五人の指揮官達に対する代官としての指導が始まった。


彼らにとって座学とはカールによって慣れた存在に成っていた。


また、遠隔地のため気後れする事も無く順調に進んでいき その間、カールは順調に新領都のミケーネ開発を行っていた。


既に湖はミケーネ湖と名付けられ、その周辺の区画整理は終了している


そのミケーネ湖の一角には、資材置き場として倉庫が幾つも立てられている、カールはその倉庫の中にガラスを大量に作り置きしていた。


ミケーネ山脈の麓を削り取った時に大量の花崗岩が出土していた、 その花崗岩は大量の石英を含んでいる この石英に同じくミケーネ山脈の麓から出土した石灰石を加えて強化ガラスを作っていく


カールも初めはガラス作りに手間取っていたが、同じ工程を何十回、なん百回、何千と繰り返すうちに要領もよくなってきた


今では同じ規格のガラスを何千枚、何万枚と作っていく この倉庫の中は新領都のミケーネ開発で使うガラスだけの置き場に成っていた


カールの作業は多岐にわたっていたが基本はミケーネ山脈の麓を削り、向こう側に通じる道路を作ることだ。


既にその工程の七割以上は終わり取り除かれた残土は多岐に分かれている。 出土品の中で一番多いのは普通の土と石である、これは纏められた後に固められ住宅を作る材料に成っていた。


次に多かったのが花崗岩だ、これは風魔法で砕かれた後にガラスに代わっていくのだ。


そして少ないながら出土している宝石や貴金属はマルガレータ母様のお土産になる。


出土が少ないとは言え掘り出している量が凄まじいので、逸れなりの量は溜まってきた。 しかし、カールが探していた粘土が中々見つからなかったのだ。


カールは色々な場所からサンプルの土を取り、確認をしているのだが 見つからない 諦めかけた時にやっと見つかったのがミケーネ湖の底である


ミケーネ山脈から流れ出した長石や珪石が堆積し素晴らしく上質な粘土に成っていた。


これで焼き物が出来る、そうなってくると窯がいる 窯は高い温度を出す構造にしなくてはならない

それならば精鉄も一緒にしてしまえば効率がいい


登り窯と反射炉をあわせたような窯になる  本来は用途が違うので一緒には出来ないのだが工夫する事で解決を図ることにした。



そろそろ、この前 ヨウコから貰ったレインボーワーム(虹玉)から糸が取れた頃だろう。 ヨウコからは更に十個ほどのレインボーワーム(虹玉)を貰っている。


ヨウコが子供たちとサッカーの様にして遊んでいた繭を見た時に思い出してしまったのだ。


生前にみた繭玉 これ繭玉を灰を混ぜたアルカリ性の熱湯に潜らせてから糸に撚りを掛けながら紡いでいく これと同じ事が出来ないかとメイドのシンディーに試させていたのだ


あの大きさだと一つから相当な量の糸が取れるはずだ シンディーに確認をしてみよう


シンディーは三日かかりで繭から糸を紡いでいた。


しかし ここで困った事態に陥っていた。 


紡いだ糸が丈夫なのだ 糸に撚りをしなくても十分な強度が有るらしい しかしこの糸がハサミで切る事が出来ないでいた。


物凄く柔らかく伸縮性があるにも関わらず切れないことにシンディーは悩んでいた。


結局、この件はシンディーがカールに相談をした事でオリハルコン製のハサミを作ることで解決した。


紡いだ糸から反物を作り、洋服までを計画しているのだが もう少し時間がかかりそうだ。


シンディーからは洋服を縫うにも同じ糸を使った方が良いとの指摘を受けたので任せる事にした。


ヨウコから追加で貰った十個も同様に繭から紡いで貰う事にした。 この作業は大変なのでマルガレータ母様の許可を貰い、他のメイドも使う事にした。


任せられることは全て任せてしまう これが人を使う上で大事な事なのだ。


カールの日常に於いてルーチンが出来つつある 昼間は学院に通い授業を受け、午後からは新領都のミケーネ開発である。 そして夕食後に姉のカトリーヌの手伝いである。


実は姉のカトリーヌの手伝いが一番面倒だ。 非効率な事や色々な回り道をしている アドバイスをしたいけど姉の事である、下手に話すとへそを曲げる 女の子の扱いは難しい。



新領都のミケーネに東軍のボーレン・フォン・ガスパールと直轄軍のジーン・フォン・ロナードに率いられた最初の移住者二千人が到着した。


東軍ボーレン・フォン・ガスパールの部隊千名はそのまま、この新領都のミケーネに残り移住者のサポートをする


直轄軍ジーン・フォン・ロナードの部隊は持ってきた食料を食糧庫に収めてそのまま帰る事に成る


この膨大な食料は王都のアスター家が王国中から集めたものを西軍のマルク・フォン・ベストラの部隊二百名が交代で衛星都市キールへ運んでいた。


支払いはカールがミケーネ山脈から取り出した宝石である、この宝石をマルガレータの指示で研磨したものをマルガレータ経由で支払いに充てられていた。


経済とは人・モノ・金が動くことで活性化される、いまアーレンハイト家の新領都であるミケーネ開発により少しづつ経済が活発化の兆しを見せていた。


初めに人の移動が起こり、次がモノ(食料)が動き それに伴い食料の買い付けで支払われた金が地方の経済を刺激しだしたのだ


地方領主に支払われたのは数年前に王都の社交界を賑やかした宝石である。 地方領主は妻や娘達の為に余剰の食料を大量に放出し宝石を手にする事に決めたのだ。


マルガレータの一番下の弟ジョンビーノ・アスターは目が回るほどの忙しさに見舞われていた。 人集めが初めの依頼で有り、それに伴う食料の調達は予め姉のマルガレータから云われていた事だ


そこに急ぎの依頼が舞い込む、黒板とチョークの作成と販売である。


その忙しさに見舞われている人物がもう一人いた アーレンハイト家の家令ハリスである。


黒板とチョークはマルガレータを通して王国の商務卿へ届け出がされており、五年間の独占が約束されている。 更にマルガレータはその独占を全ての大陸内や他国にも手を伸ばす許可を取り付けていた。


マルガレータは更に王国宰相のミューゼル侯爵を通じて内務卿へも手を廻した。


それは内務卿が管轄している学院での採用である。 この画期的なシステムは教育の現場に於いて活用されるべきであると説き伏せたのだ。


ハイランド王国としてはアーレンハイト家が儲かれば、そこから税金が入るのだ 許可は直ぐに下りた。


しかし、ここで宰相のミューゼル侯爵は一つの思い違いをしていた。 さきに国王陛下とカールとの間で交わされた税の話である。


カールはアーレンハイト家が収める税を学院を卒業するまで無税にすると捉えている事に対し宰相のミューゼル侯爵は領地の拡張に伴い得た税を免除すると捉えていたのだ。


後に揉める事に成るのだが、宰相のミューゼル侯爵がマルガレータに勝つ事は出来なかった。


ハイランド王国とアーレンハイト家双方の印章を押された書簡が全世界に送られることになり、その手配は全て家令ハリスが手配する事に成ったからだ


変化に乏しく、ユックリとしか動いて居なかった経済が急に活発になりだした。


この変化に最初に気づいたのは商人である。 商人とは利のある所に集まる、この動きに乗り遅れまいと動き出す商人が少しだが確かにいた。


アーレンハイト家の御用商人筆頭は既にアスター商会が務めている。 しかし次席での地位を得ようと必死の攻防が始まった。


この攻防は家令のハリスが多忙の為に中々進まない 更にこの王都の屋敷を管理するマルガレータはアーレンハイト家が苦しい時の商人の対応を覚えている。 いや決して忘れない性格だった。


新たにアーレンハイト家の御用商人の座に着けたのは、マルガレータの実家であるドットウェル侯爵の筆頭御用商人とアグネスの実家であるバイエルン伯爵の筆頭御用商人、マティルダの実家であるフロイデン伯爵の筆頭御用商人の三家だけであった。


この三家はアーレンハイト家が苦しい時も実家の筆頭御用商人で有ったことから多少は融通をしてくれたからである。


忙しく立ち回る商人たちを尻目にマルガレータは優雅に紅茶を飲みながら過去の出来事に対する溜飲を下げていた。


六月を迎えるとアジサイが綺麗に成ってくる 愈々 梅雨到来だ


散歩はどうしよう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ