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第24話 いつもの日常に!(カール! 領地の産業について話し合う)

◇◇領地の産業について話し合う

カールは産業育成についてもマルガレータと話し合う事にした。 「マルガレータ母様 アーレンハイト家にはどのような産業があるのでしょうか?」カールからの質問に少し戸惑いを見せながらもマルガレータは話し出した。


「カール 残念ながらアーレンハイト家にはこれと云った特徴のある産業はない ワインと小麦、強いて上げれば魔物が多いから冒険者が多かった事と魔物から採れる毛皮などの加工に魔石ぐらいだと思う」マルガレータから聞かされた内容は絶望的だった。


多かった魔物は今回の魔物の暴走(スタンビート)に合わせて殆ど排除してしまったのだ そうするとアーレンハイト家にあった唯一の産業である魔物の討伐は減少した事に成る。



カールはマルガレータから聞かされた内容に深い溜息をつくしかなかった。

「マルガレータ母様 今後、魔物が駆逐されていますので魔物関連の産業は成り立たなくなります」マルガレータもカールからの言葉に今更の事だが、その事実に気が付いた。


そうなると、早急に新しい産業を起こさなくてはならない 更に魔物関連で生計を立てていた住民の今後の事もあるのだ。


「カール 冒険者関連は大事だから 魔物は魔物の暴走(スタンビート)を起こさない程度に何とかならないのか?」今更の事なのだがマティルダ母様からこんな話が出されてしまった。


カールはヨウコに念話で相談し一月ほどの余裕を貰って方々から搔き集める事になった。

更に、余計な被害を出さないために衛星都市キールに隣接して魔物を高さ二十メールの塀で囲う事に成った。広さは100キロ四方とし、衛星都市キールが三つ分以上収まる広さで有る。 カールは溜息と共に一週間の予定が城壁作りに消えて行くことになった。


魔物を囲った門にはヨウコの姿を模した置物が置かれた。 将来、その置物は冒険者を見守るお守りとして販売されることになるのだが、かなり先の話だった。




この後も領地の産業に付いて話し合いが続いて行く

 

昼食の時間に成り、一端休憩に入った所でシュワルツを始めとして五人の指揮官達に出会った 彼らも昼食の為に食堂に向かっていたのだが 顔色が冴えない


食堂に入り、昼食が始まった。

「シュワルツ殿 何だか顔色が優れませんね 心配事でもお有りでしょうか?」カールはそれとなくシュワルツに事情を聞く事にした。


初めはシュワルツを始めとして五人の指揮官達も誤魔化していたのだが、シュワルツが意を決して話し出した

「フィリップ様に奥方様、そしてカール様のご厚情にて我らアーレンハイト家の広がる領地で代官となる事が出来ます しかし、我らはこれ迄 武を以ってアーレンハイト家にお仕えして参りました。 そのため領地を治める事に不安がございます」


こうしてシュワルツを始めとして五人の指揮官達は国王陛下から陞爵され、有頂天になっていたのだが、屋敷に戻り冷静に考えてみると自分たちに領地を治めた経験がないことに気が付いた。


それは時間が経つと心の中に重く圧し掛かってきたと少し残念そうに話し出した。


最悪の事を想像していたカールは少し笑顔を覗かせ、シュワルツ達へ助言を行った。

「シュワルツ殿 心配はいりません、 皆様にお願いする街は直ぐには出来ません。  その間にマルガレータ母様より指導を受けられたらどうでしょうか?」


こうしてマルガレータからの指導を受ける事になったシュワルツを始めとする五人の指揮官達は益々、カールへの信認を深めるのだった。


昼食も終わり、マルガレータ達は再びカールを執務室へ引き摺り込んだ。


「カール 処で王都のこの屋敷で出来る商売とかないのか?」マルガレータの突然の話にカールは一瞬何のことだか分らなかった。


「王都のこの屋敷でマルガレータ母様が行う商売はジョンビーノ・アスター様に依頼をする事だと思うのですが」カールはマルガレータが何か良からぬ事を企む前に釘をさして於く事にした


カールとしては領地で起こす産業について、これはと考えている物が有った。


需要に対し供給が全く足りていないものが数多く存在した。 またその質である カールの美意識に全く耐えられない物ばかりなのだ


例えばガラスを使った製品である。 現在のガラス製品は品質が悪く、透明度がない粗悪品と云えた。


また、食器である 器や皿などは厚みがあり重い、これを何とかカールが綾小路公麿として生きていた頃の物にしたいと思っていた。


更に紙である、この紙は超高級品として扱われ庶民は紙の存在自体知らない者もいた。


カールは取敢えず、この三つをアーレンハイト家の主力にすべく、母達を説得しようと考えた。


食後のまったりした中で午後の会議が始まった。

先制攻撃はマルガレータからの言葉であったが、カールはこれを躱し話を進めた「マルガレータ母様 アグネス母様 マティルダ母様 取敢えず三つの産業を考えています」カールは母達に声を掛けると、魔法を発動した。


初めに土魔法で精製したガラスである。 このガラスは曇りのない透き通る品質のものだった。

更に、そのガラスからワイングラスを生成した。 触ったら今にも壊れてしまいそうなほど薄くて透き通ったものと青や赤の色の入ったグラスも一緒に作った。


三種類のワイングラスを作った所でマルガレータ母様から驚きの声が漏れた。


「カール! この美しいガラスのグラスだけど 魔法以外でも作れるの?」マルガレータ母様からは魔法以外での作成の有無を聞かれた。


「マルガレータ母様 勿論 魔法以外でも作れます 今回は見本として魔法で作りましたが、本来はアーレンハイト家の特産品にしたいと考えています」カールから話された特産品の言葉に母達は声が震えだした。


前世の記憶を持つカールは洗練されたデザインのバカラも好きだったのだが ガラスのグラスと云えばベネチアングラスだと思っていた。 そのため 前世で愛したベネチアングラスを思い出しながら魔法を発動したのだ。


初めに作ったのは無色のガラスで作った、只のワイングラスであった。


その次に作ったのが、全体に薄い、赤を基準にしたワイングラスで有り


最後に出来上がったワイングラスはカールが生前好きだった『ベネチアングラス ムラノ レッド ステム 赤』である。 これはムラーノ島で作られ別名ムラノガラス(ムラーノガラス)とも云われた逸品でワイン本来の色や味わいを楽しむための無色透明のボウル部分と華やかなステム(脚)が見事にマッチングしたおしゃれで尚且つ実用的なワイングラスなのだが、カールはツイストしたステム(脚)に付いた美しい赤い玉と金のフレーク入りの装飾的なデザインが気に入っていた。


カールは無粋だと思ったのだが、作ったワイングラスのステム(脚)に剣を交差させ、交差の上段に竜を配し、剣の下には虎を配したアーレンハイト家の紋章が浮かび上がっていた。


カールの作った『ベネチアングラス ムラノ レッド ステム 赤』に母達の目は釘付けになる

「カール なんて素晴らしいガラス製品でしょう これは何を飲むのに使ったら 良いのかしら? やっぱりワインかしら」母達から掠れた声が聞こえたが、これは質問ではなく自問自答の類だろう


「カール この赤い球は宝石なの?」気に成ったのだろうマルガレータ母様が質問をしてきた。


「いいえ マルガレータ母様 これはガラスに色々な鉱物を混ぜたものです 他にも色々な色が出せます」カールはマルガレータからの問いに答えながら青や紫、緑などの球が付いたワイングラスを作り出した


その色鮮やかなワイングラスを持ち上げウットリした目でマティルダはワイングラスを見ていた。


カールは仕方なく、紋章入りのグラスを四種類を一ケース(十二)を三人分、計百四十四個も作る事に成った。 これは母達が自分達用に欲しいと云ったためだった。


更にマルガレータ母様は同じ物を王家の紋章入りで作るようにカールに指示を出していた。 これは二日後に行われる謁見の儀で国王陛下から下賜される爵位に対しお礼を込めて献上をするための物だった。


そして王家への献上品で有れば、居並ぶ諸侯もその品を見る事に成る これから販売するうえでまたとない宣伝になるのだ。


カールはマルガレータの押しに負け、王家へ献上する四種類を一ケース(十二)分 四十八個 作る事に成った。


更に王家への献上品であることから、フェルト生地を内面に敷いた専用のケースも作る事に成った。  多少の眩暈を感じながら、話を進める。


「マルガレータ母様 次が焼き物です」カールが焼き物として作り出したものは。艶やかで透けるような白い皿に合わせた花柄が美しく際立たっていた。 この後、カールは母達の計略に乗り数々の食器を作る事に成る 更にこの食器も王家の家紋を入れ作らされることになる。


勿論、専用のケースも用意するように云われていた。


実を云うとこの辺りでカールの精神的ダメージは限界に達していたのだが、目の色が変わった母達から逃れる事は出来なかった。


カールが最後の気力を振り絞り作り話出したのが紙である。


「母様 この紙がアーレンハイト家の産業として適していると思います」カールが作り出した紙は先に作り出したグラスや食器に比べて地味ではあったのだが、繰り返し需要が見込まれる事から安定した収入源になると説明をした。


現在は羊皮紙を色々な局面で使用している、しかし羊皮紙の原料は羊である。 どんなに頑張っても数に限りが出る、されど紙の原料は木材である、アーレンハイト家には魔物の数より多い木材がある これを使わない手はなかった。


余談ではあるのだが、カールが作った新領都ミケーネに作られた学校に教師として招かれた賢者の塔の賢者たちは自分たちの研究テーマを持っており、その中に紙を研究していた者たちにより色々な用途に適した紙が開発されアーレンハイト家の主要な産業に発展していく事に成るのだが、これももう少し後の話になる。


また材木はこれから始まるアーレンハイト家の躍進を担う物であり無くては成らない物だった。 更に色々な処で使われる材木は必ず、端数やロスが出る その端数やロスを紙の作成に使おうと云うものだ カールが行った必死の努力は無事に母達に受け入れられた。


何故、カールが三つの産業に拘るのかは前世に由来する、前世では事を始める時には必ず三つの案を用意した これは最低限の安定を意味すると考えたためであった。


二日後の陛下への謁見では褒賞の話から陞爵へ話が進む事は既に決まっていた。 母達はその中でカールが作ったグラスや皿を宣伝の為に献上する算段をしているようだ。



梅雨はいつもどんよりして気が滅入る 早く夏が来ないかな。

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