魔法よりもググれば最強
世の中には異世界転生モノのマンガが溢れている。
みんな異世界に転生したがっている。
しかし、実際自分の身に降りかかると、それは苦痛でしかない。
チート能力?
あろうがなかろうが、現実世界とファンタジー世界の違いは耐えられない。
私は世良大河。
二流大学を卒業したが就職に失敗して就職浪人をしていた。
周りはどんどん新しい一歩を踏み出しているのに。
そんな焦燥感は常にあった。
その日もいつものように図書館に向かっていた。
いつもと変わらない日常だ。
私は就職浪人が決まってからはできる限り図書館に行くようにしている。
資格の勉強などではない。
これは自分なりの現実逃避だ。「図書館に行く」ということが唯一私の心を落ち付かせていた。
座る席も毎日同じだ。
雰囲気だけでいつも経済学の本を選び、勉強を装う。
「やばい。全然理解できない」
そんな賢そうな本、自分には理解できるはずもなく。
昨夜の夜更かしのせいもあって眠気が勝った。
私はいつの間にか熟睡していた。
どのくらいたったのか。
はっと気づくと、そこにはさっきまでの図書館とはまったく違う景色が広がっていた。
「どこだここは?」
石造りの家、舗装されていない道、布切れみたいな服を着た人々
ファンタジー世界といえばポジティブだが、明らかに文明の発達していない世界に立ち尽くしていた。
「マヂかよ」
異世界転生物のマンガもよく読んでいたので状況はなんとなく理解できた。
別にあこがれてはいなかった。
どちらかというと、絶対に行きたくはなかった。
なぜならば、魔法は使ってみたいが自分には文明のほうが大切だった。
トイレはどうなってるの?あんな食べ物絶対腹壊すよ?ふわふわのベッドで寝たいよ…
この転生は苦痛でしかなかった。
服装もいつの間にか布切れに布切れを重ねたような格好になっている。
「あれ?」
ポケットに異物を感じた。
私はポケットに手を入れた。懐かしい感覚があった。
スマホだ…
こういう転生って転生する前のものを持ってけないのが基本じゃないのか?
恐る恐るロックを解除する。
電波は入っているようだ。
「おめえ、体調でも悪いのか?」
背後から声が聞こえた。