第1話
今回は導入部分的なのを少し書きました。自分でも何書いてるんだって思います。ちなみに主人公の名前はまだ決めてません。
性癖の定義は次書きます。
…ここはどこだろう。
おかしい、さっきまで私は教室で授業を受けていたはずだ。私の記憶の中にある教室というのは、だだっ広くて、出入口が無く、辺り一帯が白いコンクリで、なによりその広さが気にならないくらい人が入れられているものではない。
ただ人が大勢いるだけではなく、小学生やら私と同い年くらいの少女やらくたびれたサラリーマンやらでえらくバリエーションが豊富だ。
だが皆1部例外はいるが、視線を巡らせ困惑の表情を浮かべている。私と同様で状況が掴めていないという共通点はあるらしい。
「ぇえ〜っ!皆様ご注目しやがれ下さいませ〜っ!」
突如響くメガホンを通した変な言葉と声、ますます訳が分からない。言われるがままに声の方へ視線を向けて見たが、また訳が分からない。
声の発生源は緑髪の無理に結んだツインテールを揺らす下着が見えそうな攻めたチャイナ服を着た死んだ目の幼女というオチ。アニメでも見ないくらいに属性を詰め込んでいて、見ていて気持ちが悪くなるくらいに全属性が噛み合っていない。
その件の幼女はこの場のほとんどの人間が自分に視線を向けたことを確認すると満足気に頷き、
「ぁいっ!これから皆様にはデスゲームをさせやがれ下さいますっ!」
と、また変な日本語で変な言葉を響かせた。
デスゲームをしてもらう、今この奇怪な幼女はそう言ったか。何だそれ、意味がわからない、ここから出して!と一気にこの場がざわめく。…何だよそれ、と私も口から言葉が漏れるが少し冷めたもので逆に頭が冷静になる。私は今を生きるオタク気味のJC、オタクという面でデスゲームという言葉は知っているし、今度は今を生きるJCという面でドッキリという言葉も知っている。なるほど、これはきっとドッキリだ。きっとどこかに隠しカメラがあって今の私達の反応を今流行りの芸能人達が見ているのだ。そう仮説を立てて視線をまた巡らせると、きっと私と同じ仮説を立てたのであろう人間がそれなりにいる。1度思い込めば後はもう呑気なもので、手鏡で前髪を整える女性、ピースサインをしながら歩き回る少年がちらほら出てきている。私はバラエティはあまり見る性ではないけども、どこかから見られていると思うと肩が強ばって気にしたことがない寝癖を直そうと頭に手を伸ばした。
「ぅゆゆ…人の話は最後まで聞くもんだろですっ!!!!」
デスゲーム宣言からしばらく聞かなかった声が、今度はハウリングを乗せて響きわたる。あまりの声の大きさと今も尚響く耳障りな金属的な音に、今度は言わずとも全員が奇怪な幼女に目を向けた。
「ぃ、言っとくけどこれは決してドッキリなワケではねぇよですっ!…どうせ信じられないだろうがですけどっ……!」
何かを思いついたか、幼女は近くのいかにもなミリタリーオタクに人差し指を向ける。
「ぁ、そこの強そうなお前ですっ!おいお前様っ!お前の"性癖"に刺さる武器を答えやがれ下さいっ!」
「……は?」
……は?性癖?この幼女、見た目ではなく頭までおかしいのか?
急に性癖って…デスゲームはどうしたのだろう…周りの人間も拍子抜けしたようで、場の空気が一気に緩む。このおそらく新人子役であろう奇怪な幼女がテンパって、見た目同様奇怪なアドリブをし始めたに違いないと確信に近いものを抱いた。もしかしてこの番組からデビューするのだろうか、だとしたらこの先の不思議キャラの修正はさぞ大変だろう…
「…あ〜、そういう事ね。嬢ちゃん、俺の好きな武器はアンチマテリアルライフルって言うんだけど…分からないよねぇ、もっと有名なやつがいいかい?」
「いいえ!問題ねぇです!」
「おっ、知ってるのかい?」
「知らねぇですけど…」
「お前が知ってるから問題ねぇですよ!」
幼女の快活な笑顔が生まれるが早いか、刑事ドラマで聞いたことがある拳銃の音をもっと重苦しくしたような音が響き、
数秒後、その男がドッと膝をついて崩れる様が目に飛び込んだ。
ゆるゆると血溜まりが白い床を飲み込み始めると、女なのか男なのかパニックになった頭じゃ分からないくらい酷い叫び声が周囲から上がる。
……脂汗が全身からだくだくだくだく噴き出して、脚が途端に支えを失ってかくかくかくかく震え始める。先程まで生きていたミリオタを見ていられなくなって視線を下げると今度はてらてらと激しく主張する血溜まりと目が合う。体が本能的に命の危険を主張して、思考をおざなりにしてこの場から逃げろと叫び続ける。出口なんて無いって知っているのにだ。
「ゎかったかですっ!これはドッキリなんかじゃねえですっ!さて、大事なことなので1度しか言わねえですよっ!」
「皆様には、性癖で殺しあってもらおうなのですっ!」
この状況と幼女の言うことは、人が死んでも訳が分からなかった。