涙
第11話 捻くれた悪ガキの本領発揮2
彌鷹は驚いていた。どうしてこんなところに、ましてやこんな時間に…
「祚良…」
祚良はつけていたイヤホンを耳から外した。笑みを浮かべる。不敵で、なんとも言えない怖さがこみ上げる笑みである。
「どうしてこんなことらにいるか気になっているんでしょう?」
祚良は彌鷹に問いた。彌鷹は先ほどの動揺は静まり、真っ直ぐと祚良の顔を見据える。
「まずだ。全てはあの手紙から始まっていたんだよ…ほら、鵶果音から受け取ったでしょ。『一ヶ月は活動しています』って。それで腹が立った。どうして自分はいないのに、それでも部活をしようとするんだ。どうしてすがりついてこないって。だから、部活する空間をめちゃくちゃにしようと考えた。でも、すぐ動き出すとバレてしまうかもしれない。だから、二週間後の今日を選んだ。どこか間違っている?」
とてもしょうもないことだが、中学生にしてみれば、繊細な中学生にしてみれば、それこそ死活問題と同じような問題であった。祚良はとてもませている。そして捻くれている。中学生とは思えないような冷めた発言をするときもある。
彼女の過去に何があったかはまだ誰も知らないが。
「それで?私にこんなことさせて何がしたかったの?」
彌鷹はきつい口調でいう。最初から仕組まれていた。そのことを知ったからと言って何かが解決されたかというとそうではないのだ。
「まだ気づかないなんて……」
「だから何?!」
「彌鷹に戻ってきてほしかったの!」
そう言ったのは、祚良…ではなく鵶果音だった…
いつのまにか教室に来ていた鵶果音は一部始終を聞いていた。彌鷹の表情を見ていた。だから、ここははっきり言った方がいいという結論に至った。
「私と祚良が仲良く入られたのは彌鷹のおかげでもあったんだよ!彌鷹がここにいてくれたから、私たちは仲良くできた!どうしてそのことに気づかないの?!」
彌鷹は目を見開く。自分が気づいていなかっただけであって、決して二人は自分が不必要な人間だと思ってはいなかった。そのことを知った彌鷹の瞳からは大粒の涙が溢れる。
「戻ってきてくれる?…歴史探求部に…」
彌鷹は鵶果音を見て、大きく首を縦に振る…
「あのぉ、私空気になってない?これ考えたの私なのに…」
教室の端っこで小声でそう訴えた祚良の声は誰にも届くことはなかった…