一変
第9章 彌鷹の一変
鵶果音が唸っている。まさか彌鷹が部活を辞めてしまうなんて夢にも思わなかったことだ。しかもその理由をあの祚良が簡単に推理してしまうとは…
『多分淋しかったんでしょう…私たち二人で盛り上がっているところを見ると…』
鵶果音は自分の部屋の天井を見つめる。どうにかこの状況をいい感じの方向に仕向けることはできないだろうか。無理やり戻してもまた崩れるだけである。深い溜息が部屋の中を埋め尽くした。
*
部室には重い空気が流れている。心配して来た津座紀先生はそんな部室の空気に耐えきれずに出て行った。どこまでも子供のような先生である。鵶果音はチラッと祚良を見た。相変わらず、絨毯でゴロゴロしている。
「……ねぇ…どうするの?これから…」
鵶果音は溜息交じりに聞く。祚良はゴロゴロしながら「う〜〜ん」としか言わない…
鵶果音は深い溜息をついて、自分の座っている椅子の上に立った。祚良はそんな鵶果音を仰向けになって見ている。鵶果音は見られていることを知っていながら、椅子の上でぴょんぴょん飛び跳ねる。次の瞬間
バキバキバキバキッ
「痛ぁぁぁぁぁぁ!」
祚良はガバッと起き上がる。そして自分の目を疑う。なんと鵶果音が飛んでいた椅子がぺちゃんこに潰れてしまった。祚良は疑わしいものを見るような目で鵶果音を見て、そして、哀れみの目に変えた。
「…大丈夫…見た目はそんなに太ってないから…気にすんな…」
「なんか勘違いしてる?!」
鵶果音は椅子のボルトを祚良に見せて、決して自分が太っているせいで壊れたわけではないと弁解する。祚良は潰れた(正確には潰されてしまった)椅子を見て、ポツンッと呟く。
「…まるで私たちの末路のようだね…」
「ギャァァぁぁぁぁぁ!言うんじゃない!それを!考えたくもない!ねぇ、なんか方法ないの?!」
鵶果音は腕をバタバタさせながら祚良に訴えかける。祚良はキョトンとして
「椅子が壊れた言い訳か?」
「違う!…いや、それもそうだけど!彌鷹が自分で帰ってくる方法!」
「…あ〜〜……それは、…鵶果音、君の方が彌鷹との付き合い長いだろう…?」
「そうだけど、ここはさ!」
祚良は「やれやれ」と言った感じで溜息をついてみせる。そして、人差し指を立てる。
「報酬は極細ポッキーだからね!」
次回は
捻くれと悪ガキと無駄な知識の本領発揮!