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前触れ
彌鷹は嫌になった。
自分がいなくても、あの二人は楽しそうにしている。まるで自分は空気のようだ。
だから、…自分がいなくなっても大丈夫だろう。
「「は?!」」
鵶果音と祚良は同時に驚く。津座紀先生もまた二人の反応を見て驚く。
「言ったって本人言っていたけど?」
「「いや、知らん」」
二人は見事なまでに声が揃う。そして悩む。
「なんで?鵶果音なんかした?」
「何も?逆に祚良がしたんじゃないの?」
「心当たりなし」
少しの沈黙。津座紀先生が溜息をつく。そして、手元の紙をひらひらさせる。
「まさか、退部届を出しに来るとは思わなかったよ」