そして過去を思い出す
過去編〜5歳の頃
私が前世の記憶を思い出したのはアランの婚約者候補を呼び寄せた王宮でのお茶会の日だった
年齢にして弱冠5歳。白銀の髪をツインテールでドリル巻きにして、瞳の色と同じアメジストの宝石のあしらわれた装飾品やドレスを着て、踏ん反り返っていた私は、メイド達から影で「リトル女王様」と言われていた
「わたくし、お姫様になりたいんですの!お父様!私に相応しい王子様を探してくださいませ!」
「おお、そーかそーか。エリーはお姫様になりたいんだな。じゃあ同じ年頃だし第二王子と会ってみるか。」
「王子様に会えるのですか!」
「おお!会えるとも!お父様に任せておきなさい!」
ーーー数週間後ーーー
「エリー!明日王宮で王子様に会えるぞ!第二王子のアラン殿下の婚約者候補に選ばれた!他にも数人他家のご令嬢が呼ばれるそうだが、間違いなくエリーが一番可愛い!気に入られればお姫様になれるぞ!」
「本当ですか?ふふふっ……楽しみですわ!!」
そして意気込んだ私はフリルやら花の刺繍がふんだんに使われたブリブリなドレスを着て、いつものツインテールドリル巻きにしてぶりっ子女王スタイルで王宮へ出向いた
お茶会の会場に行くと、私の他に3人のご令嬢が呼ばれていた
伯爵家、辺境伯家、公爵家、そして私……身分こそ違うものの王子殿下の婚約者の座を争う相手として私たち4人はお互いをライバルとして蹴落とす覚悟を持った女の目をしていた
伯爵家の令嬢は私より2つ上の7歳
おっとりとした穏やかな令嬢に見える緑のドレスを着ている
辺境伯家の令嬢は私より3つ上の王子の同い年
笑顔をずっと貼り付けているが、目は獲物を見定める様に忙しなく私達を睨みつけている……ドレスは白
公爵家の令嬢も私より3つ上の8歳の王子
の同い年
8歳だというのに化粧が濃い。赤色のドレス
全員私より年上である
確実に場違いであろう私はそれに気付かずに王子が来るのを今か今かと待ちわびていた
すると、緑のドレスを着た…緑でいいか。緑令嬢が話しかけて来た。
「皆さま御機嫌よう!お三方とも素敵なドレスですわね!本当に……オホホホ!でも知っておられます?アラン殿下の瞳の色は緑なんですのよ?」
すると赤の令嬢が
「あーら!王子に贈られたわけでも無いのに厚かましくも瞳の色を纏うなんてとてもとてもできませんでしたわ!流石伯爵家のご令嬢ですわねぇ……?」
白の令嬢は
「ふふっ何をおっしゃっておられるのやら。確かに緑のドレスをご自分で用意して着るような神経は分かりかねますが、貴女のその白粉まみれのお顔も随分と素敵ですことよ?」
「何ですって!?この……!あんたなんか顔に特徴のない平凡顔じゃない!私より身分の低い辺境伯家の癖に生意気よ!」
「あら、こわぁい……鬼みたいなお顔ですわねぇ」
「本当に……!身分を傘に来てアラン殿下の婚約者の座を得ようとするなんて最低ですわよ!貴女にはふさわしくありませんことよ!」
……なんだか私を置いて3人はヒートアップしている
「ちょっと!私もいますのよ!」
「「「え???」」」
「ごきげんよう!エリザベス・アリアーナと申しますわ。私もお姫様になりたいのですわ!ですからみなさまのその口喧嘩に混ぜてくださいませ!勝った方が婚約者になれるのでしょう?」
「ええ!そうですわよ!……随分と可愛らしいですわね……アリアーナ家か……面倒な……」
「あら!貴女お姫様になりたいだけですの?アラン殿下以外にも王子はおられますのよ?ほら……ヴァイス王弟殿下もこの先の研究棟におられますわ!アラン殿下よりもヴァイス王弟殿下の方が物語の王子の様にカッコいいと有名ですわよ?」
「ふーん……そうなんですの……じゃあ後で見に行きますわ!先にアラン殿下にご挨拶したいので」
「「「ちょっとお待ちなさい」」」
???
(※小声です エリザベスに声は聞こえていません)
「アリアーナ家といえば王家にゆかりがある今回の最有力候補じゃない……冗談じゃないわ……仕方ない……ここは一時協力しましょう」
「そうですわね……5歳にして噂に違わぬ美貌の令嬢ですわね……しかも公爵家。同じ公爵家でも貴女には勝てそうですけどあの子には無理だわ」
「何ですって!?まぁ美しいのは認めてあげてもいいけど?まだてんで子供じゃない!……でも確かに最大のライバルにはなりそうね……どうにかしてアラン殿下を諦めてほしいわ……」
???
3人の令嬢はさっきまで言い合いをしていたのが嘘の様に仲良く集まって話をしている……
「あのー?私も話に入れてほしいですわ!」
「「「はうっっっ」」」
???
「か……可愛い……じゃなくて……ゴホンッ……エリザベス様!いいことを教えてあげますわ!実はアラン殿下には既に心に決めた令嬢がおられるんですの!私たちは婚約者候補とはいえ愛されることは決してないのですわ!それでもアラン殿下の妻になりたいですか?」
「えっ!?もうアラン殿下のお姫様は決まっていたのですか?じゃあ諦めますわ……。お姉様方はお飾りの妻になっても良いのですか?」
「「「もちろん!!!」」」
圧倒される勢いの3人と話していると、アラン殿下が現れた
「随分と盛り上がっている様だな!主賓の俺が来てやったぞ!喜べ!」
淡いブロンドの髪に深い森の様な瞳を持った王子が優雅な足取りでこちらに向かって来た
「「「御機嫌よう!!!」」」
一斉に3人が挨拶をする
「ほう……ひとりちびっこいのがいるな。お前がアリアーナ家の一人娘か?おい、せっかく王子である俺が来てやったんだぞ。顔を見せろ。そして俺を敬え!」
……ナンカオモッテタノトチガウ……
「御機嫌よう。エリザベス・アリアーナですわ。本日はお茶会に無理を言って参加させていただきありがとうございます………………あ!」
王子の顔を真正面から見て、私は既視感を覚えた
……どこかで見たことがある……
……王子とあったのは初めてなはずどこで見たのだったか……この世界に写真はないし、絵だろうか?
……〝この世界〟〝写真〟???
知らないはずの不思議な単語が頭に浮かび上がってくる
「うっ……頭が……痛い……」
「ど、どうした?お、俺の魅力にやられたか?」
何故か少し顔を赤くしてテンション高めで話しかけてくる王子
「すいません……少し気分がすぐれませんので、本日はこれで……」
「お、おい!大丈夫か!?」
「頭が……痛い……」
我慢できないくらいの頭の痛みに襲われ、その場で倒れてしまった
近くにいた誰かが駆け寄って来て、私をふわりと抱え上げた……目の前に青い瞳が見えたところで私は意識を手放した……
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