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異世界転移……??

三話連続投稿(2/3)

 

 いやいやいやいや、ちょっと待て。


 確かに言った。魔法陣が出てきて異世界転移とは言った。言ったけどもそれはフィクションにするならという話であってだな。ほんとにするとは思ってるはずもないだろ。


 いやほんま、どないせえっちゅうねん、下の三人もポカンとしてもうとるやろ。なんやこれ、勇者召喚とかほんまにあってええんか? そもそも霊魂とかこっちの世界……異世界的にええやつなんか? なんか魔術師はんもえらい困っとるし。え? 四つの魂を召喚したのに三人だけやって??  ってことはワイのことは見えとらへんっちゅうことやな?  せやけどいきなり神官とか出てきてアンデッドおる言うてピチュンとかいうのは堪忍な。いや、もう死んどるやけども。はっはっは。


 すまない、流石に現実感が無さすぎて取り乱した。なんで関西弁なのかは自分でも分からない。俺が育ったのは関西でもなんでもない。


 今の状況を整理しよう。

 死んで、魂になって、みんなと別れて、気持ち切り替えて、漂っていて、異世界に転移した。


 うん、訳が分からない。いや、実際二つ目から訳が分からないところだけども。

 

 でもまあ、俺はもう霊魂な訳だからあまり関係がないよな。ここから、元の世界に帰るため戦わなければならない! とかそういうのは俺の下にいる三人だけがこなすイベントだ。

 あ、でも来世の自分はどうなるんだろ。この世界で生きるのか? うわっ、大変だな。他人事だけど。


 さて、混乱しているうちに魔術師っぽい人の話が始まりそうだ。興味もあるし一応聞いておくとした。


「異世界からの客人よ、よく我々の国へとやって来てくれた」


 聞こえてくるのは明らかに日本語ではなかった。どうして伝わるのかは、フィクションで片付けておこうか。召喚の魔法がある世界観ならば、翻訳の魔法があってもおかしくない。

 しかし、拉致誘拐の容疑者が被害者を客人呼ばわりするのはいかがなものかと思う。下の三人は制服のまま大混乱だ。


 小柄な魔術師が落ち着いてくれとジェスチャーを見せる。でもどうやら、彼らの声は届いていないようだった。あれこれと説明を求める声が飛ぶ間に、彼は話し始めた。


「どうして自分たちなんだ、という君たちの主張はよく分かっている。これにはちゃんとした理由があるのだ」


 三人の疑問はそこまでたどり着いていないと思うし、理由があるからと言って拉致るのは駄目だと思います。

 ただ気にせず、魔術師は話を続ける。まったく声を張っているわけでもないのによく通るのも魔法なのだろうか。


「君たちが住んでいる世界は、私たちの住んでいる世界より上位に位置する世界であることが分かっている。我々の生まれたこの世界は君たちの世界を基にして生まれた、とさえ言われている。そのために君たちの魂の器は我々のものとは比べ物にならないほど大きい。この世界では常識なのだが、魂の器の大きさ……それは魔力量そのものだ」


 それはつまり、俺たちの世界に生まれた人間がこの世界に来れば魔力量の格が違うと。なるほど、そういう異世界転移特典か。

 つまり俺も今現時点で、この世界最強の霊魂なんじゃなかろうか。

 この世界で他に霊魂がいるか認知出来ないだろうし、認知できたところで何も出来ないのだが。


「そしてその器を持つ君たちは転移してくる瞬間、時空を超えるのに、この世界に根付く六色の魔力を一身に浴びる。そしたらどうだ!  この世界では考えられないくらい膨大な魔力を持った全属性の魔術師が生まれるじゃないか!!!」


 ……それってまさか俺も含まれてないよね?


 来世の自分が心配になってきた。出自に全く心当たりのない転生チート持ちが生まれることになるんじゃなかろうか。記憶はないだろう来世の自分、頑張れ!


 魔術師がそう言い切っても異世界組三人の返事はなく、彼は不服そうだった。

 いや、お前がそうさせてるんだろう。


「まあいい。ふむ、ああそうだ。これまで四人の人間がこの世界に召喚されている。一人目は"サムライ"タダナオ。この世界を救ったと言われる誰もが知る英雄だ。ただ、あとの三人の名は全く知られていない。なぜかって? 一人は戦うことを拒み処分され、一人は故国の郷愁から命を絶ち、もう一人は老いぼれもいいところで戦う前に死んだ」


 これまでに四人ってまた少ないな。今回は欲張りじゃないか?


 しかし、侍のタダナオというワードに引っかかる記憶がどこかにある。どこだったか……

 ああ、そうだ小学生の時に聞いた話だ。


 昔昔のそのまた昔、腕っ節一つで一城の主にまで登りつめた、なんとかタダナオって侍が、ある日突然城の中から居なくなってしまって跡継ぎ争いでの騒乱が起きた、なんて話だ。

 もしかするとその彼なのではないだろうか。

 確かその城の跡は俺たちが通っていた学校の近くにある。鎌倉か、そのあたりのお話だ。


 それにあとの三人も……


 実は俺たちの住む町は神隠しの町だなんて言われていて、あの町で生まれ育った父さんの二つ上の先輩もある日突然失踪したと聞いたことがある。

 昔はいい子にしてないと神隠しに合うぞなんて咲良のおばあちゃんに言われて、咲良と二人でべそかいてたっけ。


 今回の召喚と場所が違うが、何かしらの基点が出来ていて、その付近で条件に合う人を探すのかもしれない。

 さて、そんな推理を誰かに伝えたいのだが……今の俺ではままならない。


「しかし、今回は凡百の魔術師ではなく、この私が召喚を行ない、国を挙げて君たちをサポートすることが決まっている。一人少ないことぐらい些細なことだ。私にはさらなる成長が待っていると考えようじゃないか。ヒヒヒヒヒヒ」


 ポジティブな考えは嫌いじゃないが、嫌な熱を持った目をした彼を好きになれることはなさそうだ。


「それじゃあ騎士諸君、後は頼んだよ、結界を解いておいてく」


 言いたいことは言い切ったのか、彼はそのまま背を向けて去っていった。

 彼の発言を聞くと、精神魔法による洗脳とかも考えられないわけではなかったと思う。

 口の割に随分とマシな方であろう。


 それから結界が消され身体の拘束が解かれた下の三人が騒ぎ始めたのが聞こえてきたけれど、その場にいた騎士達がなんとか丸く収めた。彼らも言葉は通じるようになっていたらしいし、途中から、三人組の中のプラスワン君がやけに乗り気だったおかげだろう。

 

 ……平々凡々な自分はラノベなら主人公、とでも思っていそうだったからな。


 さて、俺はその場を離れて城の中を散策する。


 異世界の王城なんてロマンの塊だと思わないか?

 期待通りにこの城は中世ヨーロッパ、というよりはもう少し近代を感じさせる豪華な建造物だった。

 騎士に囲まれて連行されるのではなく、どこへでも自由に散策ができる霊魂で良かったかもしれない。何十日あってもこの世界を見て回るだけで満足できそうだ。


 ……しかし本当に異世界なんだな。


 城内を歩き回るメイドさんらしき人や文官らしき人の髪色が茶色、金、クリーム色までは許せるとして緑とか赤とか青とか紫はそれなんてアニメキャラ?  という印象だ。ただコスプレという風でもなく、世界に馴染んでいるのだから、本当に異世界に生きているのだと実感する。


 面白くて異世界人の特徴観察をしていると、その中に一人、絶世の美女と言うべき人がいた。前世の基準かもしれないけれど、本当に。

 地球では映画なんかでも見たことないレベルである。髪の色は……プラチナブロンドと言うのだったか。

 他のメイドさんもそこそこに綺麗な人ばかりだが彼女だけ群を抜いている。


 ただ少しだけ、浮かない顔をしていることだけが気になった。

 てきぱきと仕事は早かったけれど。


 その後はしばらく異世界っぽい魔術的な隠し扉や、全身武装した騎士様などを見物したあと、ふと思い立って王様というものを探してみることにした。

 地球では王様なんか見る機会無かったし、死ぬ前に一度……もとい消える前に一度見ておいて悪いものではないだろう。


 そして先程来たルートを戻って行く途中、唐突に俺という意識は失われた。




****



 「おぎゃー」


 ってマジかよ。

ありがとうございました。

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三話連続投稿(2/3)

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