第四話 僕と新たなる出会い
僕は段々白んでいく空の下、息を切らしながら走っていた。
「あれ? ここ、どこだ……」
新聞配達の途中で、思いっきり道に迷っている。
何度も地図を見直し、周りを確かめた。
――確かにここら辺で、合っているはず……
でも、見る先には家そのものが立っていない。配達用の白いショルダーバックの中には最後の新聞紙の束が入っている。
――あぁ……誰かに聞けないかな……でも、今の時間に人が出歩いてるはずないよな
僕が困って考え事をしていると、後ろから話し掛けられた。
「あ、あの……何か探し物していらっしゃるのですか……?」
いきなり話しかけられたことに驚いて、僕は振り向いた。
そこには棒よりも少し背が低く、月の光で銀色に輝く白のワンピースを、着ている少女がこっちを見て立っていた。
――あれ? さっきまで誰もいなかったような……そんなに僕は気づかなくなるくらいに考え事をしていたのかな?
僕から反応が見られなかったのか、少女は小首をかしげて、
「あの……どうかされましたか?」
と聞いてきた。
「あっと……ごめんなさい。急に話しかけられて驚いていただけです……」
「それは……こちらもすみませんでした。ちょっと見過ごせなかったので、つい……」
「あの、それだったらちょっと聞いてもいいですか?」
ここのことについて、知っていそうな人を見つけ、僕は少しほっとした。
ここまでの経緯をその少女に伝えて、地図を見せた。
「説明したとおりなんですけど、ここって分かりますか? 何故か何度探しても見つからないんです……」
地図の行き先を指して少女に尋ねた。
少女は、少し顔をしかめたがすぐに、
「あぁ、ここ私の家がある場所ですね」
「えっ! そうなんですか……よかった」
僕はバックの中にある新聞の束を掴む、そして少女に渡した。
「はい! これ、今日の新聞です」
「ありがとうございます」
少女は少し笑った。その時、太陽が顔を出して、日の光で少女の顔が、可愛らしく見えた。
「それでは、僕はこのへんで帰ります。ありがとうございました」
僕はペコリと頭を下げて、お礼を言う。そして、すぐに地図を見ながら走って帰った。このあと、社長さんに遅れた理由を問いただされる羽目になった。
終わった頃には、もう五時を回っていたので、
「学校があるのでもう帰ります。お疲れ様でした!」
と言ってから、急いで家へと走って帰った。
――まだ家にいるのかな……
家を出る前に、風邪をひいてしまうかもと思って、毛布を掛けておいた幼馴染の愛のことが気になった。
――まぁ、自分の家に帰っているだろう……時間的に……
息を切らし家へとたどり着いた僕は、鍵が空いているかも確認せずに、ドアノブを引いた。しかし、ガタンという音がなっただけで、扉が開くことはなかった。
「あ、あれ……? まだ愛は帰ってないのか?」
僕はポケットに手を入れた。指先に冷たく少しトゲトゲした物が当たり、それを取り出す。それは、少しばかり古くなった僕の家の鍵で、鍵穴に挿して回すと、カチリと音をたてた。
さっきまで閉まっていた扉を開けた。次の瞬間、いきなり目の前に人が飛び込んできて、僕をギューッと抱きしめた。
「おかえり、司!」
抱きついてきたのは寝ていたはずの愛で、しかも今朝と服が違い中学校の制服になっていた。
僕はいきなりのことで驚いていたが、すぐに口元が緩み笑顔で、
「ただいま、愛……」
僕には『おかえり』と言ってくれる家族がいない……でも、家に着いて『おかえり』と言われる。それだけで、嬉しさが込み上げてくる……
「あれ? でもなんでまだいるの……?」
愛は照れくさそうに顔を背けた。
「つ、司を、待っていたの……」
消え入りそうな声でそう言った。でも、声が小さくて僕は聞き取れなかった。
「えっ? なんて言ったの?」
と聞き返してしまい、愛を怒らせてしまった。
「な、何でもない! それより、ご飯……作って」
怒った愛の顔は少し赤く熱があるのかと思った。
――うーん……なんて言おうとしたんだろう……
でも、そんなこと聞き返すことなんかできず、呆れたように言う。
「はいはい……いいけど、時間ないからそんなに作れないよ?」
「ううん……平気だよ」
そんなやり取りの末に、僕たちは家の中に入った。僕は大急ぎで制服に着替え、いつもどおり眼鏡をかける。
「うん、よし!」
鏡を見てそう言った。
――本を読むときは、眼鏡がないと読めないからね!
そのあと、すぐにキッチンへと向かった。一階に下りてすぐ愛に、
「ねぇ、司はなんで眼鏡かけてるの? そこまで、目が悪いわけじゃないよね?」
「本を読むとき読めない時があるからだし、それにイメージ的にこれが一番落ち着くんだ」
「へぇー……メガネかけてない方が、いいと思うけど……」
愛が言った言葉は途中から聞き取れなかった。でも、また聞き返したら、怒り出しそうなので聞き返すのを止めた。
――なんで、いつも途中から聞こえなくなるくらい、声が小さくなるのかな……?
「うん? そう……? それはいいや……ご飯作っちゃうよ、急がないと学校に遅刻しちゃう!」
朝食は作る時間すら惜しかったので、トーストとサラダに飲み物、ヨーグルトと、簡単なものばかりになった。
朝食を食べ終わった頃にはもう六時近くになっていて、走っていくことになった。
もちろん家の鍵は締めないとね! 鍵を締め終わると、牛とから愛が叫んだ。
「司、早く行くよーっ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
愛が走るあとを追って、僕も駆け出した。
家から学校まで意外と距離もあり、入り組んだ道も多い。だから、息を切らしながら夢中で走る僕には、曲がり角のすぐ近くを歩いている人に気づけなかった。
そのせいで、思いっきりぶつかってしまう。
「きゃっ!」
「うわっ!」
どんっという音とともに、二人分のに悲鳴が重なった。
僕はとっさに、倒れそうになったその少女の手を掴み、倒れるのだけは免れた……。
こんにちは、愛山 夕雨です。
今回でやっと4話目突入です。4話目の最後のシーンもうちょっと続けようかと思ったんですが、時間と疲れの問題でこんな終わり方になってしまいました。
新たな出会いとは少しドキドキしますよね? 私は中学校の入学式とかは、すごくドキドキしましたよ。どんな人がいるんだろう? 友達できるのかなーって、ワクワクとドキドキでした。でも、近場の学校だったので、顔見知りが多かったですね。
ちょっと、脱線しましたね……すみません。自重します……
4話目を自分で書いてて、新しいキャラを考えるのはすごく苦労しました。それに先週は年始で忙しかったので、なかなか進めれませんでしたからね。
次回は、司のこれからを大きく揺るがす人物が登場と、言ったところでしょうか……
それでは、また今度会いましょう!




