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夢見る心  作者: 姫姫姫
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お見舞い

3台あるうちの真ん中のエレベーターから彼女は私が買ってあげたパジャマ姿で降りてきた。久しぶりに見る彼女の姿は食事をあまりとれなかったせいか少し痩せていた。顔色は良さそうである。




「久しぶりっ!よく来たね、遠かったでしょ。」




「久しぶりだね。全然遠くなんかないよ、毎日でも来れるよ!少し痩せたかな?体調は大丈夫?」




「すこ〜し痩せたかな。ダイエットしたかったから丁度良かったけどねっ。体調はまぁまぁかな。」




私達は久々の再会でお互いに喜んでいた。




「立ち話はキツイから座れるとこ行こうか。案内するよ。」




そう言って彼女は私をテラスに案内してくれた。




「なんか素敵な場所だね。病院内にこんな場所があるんだ。」




「そうなんだよね。私も最初はビックリしたよ。なんかどっかのカフェっぽい造りだし。」




私達はその場所に腰掛け、私が買ってきたケーキを食べることにした。




「はいこれ、お土産。」




「これって私が好きなケーキ屋さんのケーキじゃん。超嬉しいよ〜!ありがとう!わざわざ買ってきてくれたの?」




「うん。来る途中で寄り道してきた。それと、ありきたりだけどお花ね。」




「お花まで……。なんか気使ってもらっちゃったみたいでごめんね。」




「いえいえ、全然だよ。さ、どれ食べる?」




彼女は凄く喜んでくれていた。その表情を見て私も凄く幸せな気持ちになれた。



「わぁ〜っ。全部食べたいなぁ…。でもさすがに全部食べれないから明日以降に残さなきゃね。とりあえずここのお店で1番好きなモンブラン食べよっとっ!」



「全種類のケーキ一口だけ食べてけば?俺は余ったのでいいよ。とにかく姫ちゃんが食べたいの食べてね」



「は〜い。うはっ!モンブラン最高!やっぱここのケーキは馬鹿旨だね。他のお見舞いでケーキ貰ったんだけどここのと比べちゃうと全然だわ。」




しばらくテラスでケーキを食べ、スタバのコーヒーを飲む。二人ともまるでデートをしているような感じになっていた。二人とも久しぶりだったので話しに華が咲いた。テラスの終了時間がきて私達は別の場所に移動した。




今度の場所はおもいっきり病棟だった。ただ彼女がいるガン病棟ではなく、他の病気の入院患者がいる病棟の談話室みたいな所に行った。




「ここ大丈夫なの?姫ちゃんの病棟じゃないみたいだけど………。」




「大丈夫だよ。前にも来てるしね。私の病棟だと知り合いいるし私につく看護婦さんもいるからさ…。あなたと居るとこみられて家族とかに言われたら二人とも嫌な思いするかもしれないから一応ね。ここならその人達も来ないと思うし。」



確かに彼女の言ってる事は正しい。もし万が一私と彼女が仲良く一緒にいるところを知り合いの人達に見られて、それを彼女の旦那とかに言われたらたまったものではない。そうならないようにとの彼女のナイスアイデアだと思った。




「さすが姫ちゃんだね。考えてる。」




「一応前々から考えてたんだ。あなたが来たらどこで逢おうかなってね。」




彼女の病棟は3階の北病棟でここは6階の東病棟。談話室は以外にも広々としていて、テレビもある。私達は窓際の席に腰を下ろした。ここからは、ちっぽけだけど夜景が見える素敵な場所だ。私は彼女と行ったお台場の観覧車から見た夜景を思い出した。




「なんか夜景見てたら一緒にお台場行った時の事思い出しちゃったよ。あの時は凄く綺麗だったし楽しかったね。」




「そうだね。行ったねぇ。もう何年前になるんだろ…また行きたいなぁ…。」




「これからいくらでも行けるって!退院して元気になったらまた行こうよ。」




それまでケーキを食べあんなにはしゃいでいた彼女が急に静かになった。今までとはなにかが違う空気感が漂っていたように私はその時思えた。そしてそれは突然やってきた………。




「あれ?どしたの姫ちゃん?どっか痛くなってきた?大丈夫?病室戻る?」




「私ね………。子宮なくなっちゃったの……。もう赤ちゃん産めないの……。もう女じゃないの……。生理ももう来ないの……。お腹パックリ切られて子宮取られて、そのお腹の傷痕も一生消えない。もうなにもかも訳がわからなくなってきちゃった……。いっそのこと………。」




私はそこで彼女の言葉を遮った。




「ストップ!!ちょ、急に何言い出してんの?」




「だって……。」




「だってじゃないよ!この前言ってたことは何だったんだよ!姫の周りには今の姫よりずっとずっと辛い環境の人がいるからその人達の分まで頑張らなきゃって言ってたじゃん!もう忘れちゃったの?手術は成功したし、こうして無事に何でも食べれるようにもなったし歩けるようにもなったじゃん!なのに何急に弱気になってんの?前にも言ったけど別に子宮があろうがなかろうが姫が女であることにはかわらないよ!別に子供が産めなくたって姫は姫でしょ!そんな事ぐらいで俺は別れないし何処にも行かないよ!」




「その……、ゴメン。なんか久しぶりにあなたに逢って昔の事とか思い出してたら急にあなたが居なくなっちゃうような気になってきちゃって……。後は…今までは自分でも気を張ってたのだけどあなたと逢って話してたら……ごめんね。」



彼女は私が訪ねて来たことによって今まで張っていた気が一気に緩み、周りには強がってみせてたけど、私の前では抱え込んでいた弱みが全部出てしまったのだろう。でもそれが普通かもしれない。考えてみたらやっぱり女性としては凄く辛い事だ。今まで電話やメールでは一切弱いところを見せてこなかったのが、いざ私の顔を見て話しをしたら爆発してしまったのだと思う。でもだからこそ彼女は今でも女性だ。女性だから今まで頑張ってこれた。男性だったら弱いから簡単に弱音を吐くにちがいないであろう。彼女は立派だ。




「姫ちゃん。大丈夫だよ。子宮が無くて子供が産めなくても、一生残る傷があろうとも、俺は裏切らない!俺はいなくならないよ。それに何処からどうみたって姫は立派な女性だよ。」




「ごめんね……。私もなんでさっきあんなこと言ってしまったのか……。それから、ありがとう。やっぱり私はあなたと一緒じゃなきゃダメだ。これからも私の事よろしくお願いします」



「もちろんだよ。俺の前でならさっきみたいにぶつけてきていいからね。全部受け止めてあげるからさ。そのかわし結構キツイ事言うかもだけどね。でもそれも姫ちゃんのことを思ってのことだからね。これからもよろしくね。もうこんな時間だし俺はそろそろ帰ろうかな。」




「明日も来れる?」




「もちろん!」




「じゃあまた明日残ったケーキ一緒に食べよっ!また明日連絡するね。気をつけて帰ってね。今日は来てくれて本当にありがとう。」



まぁ色々とあったからさすがに今日は疲れた…。

でも彼女も体調は良さそうだったしこのまま何事もなければ退院する日も近そうである。後はまた検査結果次第か…………。




今度こそバッチリだよな………、手術も完璧だったみたいだし。良い結果がでるように今からお祈りしなきゃな。あっ!!!お守り渡すの忘れてた。まっ、明日も来るしその時にでも…。とにかく元気そうで、まずは一安心だった。




そしてまた検査の日がやってきて…………


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