手術終了
そして手術当日。当然ながら私は自宅待機。ひたすら手術が成功するように祈りを捧げるのみ。
私はこの日がくるまえにひとりで神社に行き、お参りをして彼女のためにお守りを購入してきた。そのお守りを渡す事は出来ないけど渡せる日が来たら渡そうと思っている。だからそれまでは私がそのお守りを大事に握りしめ彼女の手術が成功するよう祈ろうと思っていた。
そろそろ手術の時間だ…。はたして手術は成功するのだろうか………、成功してもらわなければ困るのだが実際そんな風にも思ってしまう。今回、彼女から聞いた手術内容は次の通りだった。
まずは頚椎に麻酔を打つわけなのだがこの麻酔の注射が相当痛いらしい。というか、私も腰を悪くしたときに同じ類いの注射を同じ場所にしているのでその痛さはわかる。本当にこの注射は痛くてたまらない……。しかもゆっくりと注射の中の麻酔を打たなくてはならないので激痛がしばらく腰から身体全体にはしるのだ。麻酔が効いたら女性の性器からおへそのあたりまでメスで子宮が見えるまで開狭し子宮を取る。そしてその周りに転移している癌細胞を除去して終了とのことだった。その手術を想像するだけで血の気が引いてきてしまう。メスで切った場所はもちろん縫い合わせるのだが傷痕は一生残ってしまうらしい。なんとも可哀相な彼女である。でも何があっても彼女を支えていく覚悟はできていた。
私はそろそろ終わる頃かなと自分の部屋で右往左往して落ち着きが全くなかった。とにかく何事もなく手術の成功をただひたすら祈るのみだ。手術が終わったとしてもこの日は彼女と連絡はとれないだろうし私の不安は募るばかりでいた。
全く眠れないでその日は朝を迎えた。仕事は連休だったので差し支えなかったのだが私は睡眠をとってないせいか目の下のクマがひどかった。そのせいかこの一日で体重が結構減っていた。
午後になり私はいてもたってもいられず彼女に自分の方からメールを送った。
メールを送ってから30分後ぐらいだろうか、彼女から電話がかかってきた。
「もしもし、大丈夫?手術どうなった?成功したの?心配で仕方ないよ。」
「大丈夫だよ。手術は成功したよ!また検査うけてみてじゃないと正確にはわからないけど先生が言うには百パーセント手術は成功したからガンは大丈夫な可能性の方がつよいってさ。」
「ホントに?やったね!姫ちゃん良く頑張ったね。今は痛さはどう?」
「ハンパなく痛いね…。縫ったところがヤバイ痛いよ。後はオナラがでるまでご飯も食べれないからお腹へったよ。傷痕が凄いよ。見ると恐くなっちゃうよ。」
「そっかぁ。お腹減ってるのかぁ…。食べれないのはキツイね。早くオナラ出て欲しいね。」
「そうなんだけどね〜。なかなか出そうにないな。お腹も痛いからまだ当分出なさそう」
「それはキツイね。他は平気なの?」
「今のところはやっぱり縫ったところが1番痛いかな。そのせいであんまし歩く事も出来ないんだよね。」
「そうなの!?歩くのも辛いのかぁ…。代われるなら代わってあげたいよ。」
「ありがとう。気持ちだけでも嬉しいよ。それからさ、まだしばらく入院なんだけど少したったら今度メールするからそしたらおいでよ。」
「いいの!?俺行って平気なの?」
「大丈夫だと思う。そのかわり午後から夕方とかだけどね。大体お見舞い来るときはみんな午前中から来るから大丈夫だと思うんだ。だから私がメールするからその時来れそうだったら来ていいよ。私も逢いたいからさ。」
「わかった。行ける日は必ず行くよ。」
「四、五日後になると思うからそしたらまた連絡するね。」
「了解。電話終わって寝れそうだったら寝ちゃいなね。身体にはそれが1番だもん。あとは心配だからあまり無理して歩かないようにね。」
私の心配とは裏腹にとりあえず手術は成功してくれた。そして思いのほか彼女も元気だった。なによりである。私は電話を切った後、ホッと胸を撫で下ろした。
それから数日後、ついに病院に行ける日が来た。仕事を終えた私は急いで帰り、支度を整え彼女のもとに急いだ。途中で彼女の好きなケーキ屋さんに寄って、いくつかケーキを購入した。お決まりの花束も用意したし、後は病院に行くだけだ。着いたら連絡してくれとの事だった。私は病院の駐車場に車を止め彼女に連絡をした。どうやら面会するにあたってその患者さんの部屋番号と名前を記帳し、バッヂを貰わなくては入れないそうだ。私は教わった通りに手続きして病院の中に入った。待ち合わせ場所は一階の売店。数分後…、ついに彼女が私の前に現れた。