表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る心  作者: 姫姫姫
66/69

手術3

手術一週間後、検査の日だ。この日の結果次第で彼女は自分の家に帰れる。




私は例の如く付き添いは出来ないので彼女からの連絡待ちだ。早く結果報告の連絡が待ち遠しかった。そして早く彼女に逢いたい。直接面とむかって、お帰りなさいって言って抱きしめようと思ってもいた。

その時は何事もなく彼女は帰ってくるものだと思っていた。





しかし、検査結果は私達が思っていたのとは違う答えが返ってくる………。

あまりにも酷い内容で本当に神様を殺したかった。




「もしもし…、私だけど。結果出たよ。」




「どうだった?やっぱ大丈夫だから退院出来るのかな?早く逢いたいよ〜。」




完全に私は浅はかだった。電話越しの彼女の声も明るかったから、もう大丈夫なんだと勝手に思って舞い上がっていた。けど…




「あのね、退院できなくなっちゃった。」




「へ!?なんで?大丈夫なんじゃないの?だって手術は成功したんじゃ……。」



「ダメだったみたいね…。どうやらこの前の手術で取り除いた腫瘍以外に他にも出てきてしまったみたい」



「なんだよそれ…、なんでこの前の時にその腫瘍はとれなかったんだろう。難しい事はよくわからないけど、そんなのってあんまりだよ…………。」




「それでね…。もう一回手術する事になったんだけど………。私ね………、もう女じゃなくなっちゃうの。そんなの嫌だよ………。」



電話越しに彼女が泣いているのがわかった。女じゃなくなる?どういう事だろう……。




「姫ちゃん?大丈夫?どういう事なの?女じゃなくなるって?姫ちゃんは生まれた時から女性でしょ?」




泣きながら彼女はこう答えてきた。




「子宮全摘出する事になったの……。だからもう子供産めなくなっちゃうの。あなたの子供…、欲しくなっても産みたくても本当にもう産めないの…。」




子宮全摘出!?なんでそんな事になって………。彼女が何をしたっていうのだ…何もそこまで罰を与えなくてもいいのではないだろうか。これではあまりにも彼女が可哀相だ。




「他にもう選択肢はないの?どうしてもとらなきゃダメなのかな。もしかして他の方法は危険って事?」




「うん…。子宮をとらない方法もあるにはあるんだけど………。」




「姫はどうしたいの?とらないですむならとらない方がいいんじゃない?」




「そんな簡単に言わないで!!もちろん私だってとりたくないよ!!けど、とらないと仕方ないからしょうがなくとるんだよ……。」



「ごめん……。軽率な事言って本当にごめんね。」




「私の方こそ怒鳴ってしまってごめんね…。あのね、先生に二択を選べって言われたの。ひとつは子宮をとらなくていいかわりに、この先ずっと抗がん剤治療を続けていく事。でもそれにはリスクがあって髪の毛も抜けちゃうし、顔とか足とかの浮腫もハンパないくらいなるし、なにより進行速度を遅らせるだけだから転移したら死んでしまう可能性もあるんだって。そしてもうひとつは子宮を全摘出するかわりにガンを全て取り除く事。こっちは子宮を失うけどその後の結果次第では抗がん剤も使用しなくて済むし、なにより命を失う危険が極端に少ないんだって。もちろん手術が成功すればの話しだけどね。」



「そうなんだ…。究極の選択だったんだね…、それなのにさっきは本当にごめんね。本当に軽率だった。」



「知らなかったんだから仕方ないよ。私も最初にその事伝えてないし。でね、私は死にたくもないし周りの人達にもツライ思いさせながら生活するのも嫌だから仕方なく全摘出を選んだの……。それがベターかなってさ。子供はもう一生産めなくなるけど命が助かるならね………。私の両親もその方がいいんじゃないかって言ってきたしさ。」




彼女はとても辛かったと思う。だがどちらかを選べと言われたら、きっと私が同じ立場でもその選択を選んだにちがいない。





人生ってなんなんだろう………。

私は何故だかそんな風に思ってしまった………


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ