悪魔
突如彼女が声を荒げた。
「え?せっかくのクリスマスなのにエッチも出来なければ、どっかに出掛けるのも無理って…、冗談でしょ?そんなの絶対嫌だ!私そんなの無理。せめてエッチだけでも出来ないの?」
「無理だと思う…。とにかく身体に負担をかけるとダメみたいなんだ。残念だけど医者に止められてるんだよ。俺だって…出来るなら姫ちゃんとエッチして甘い時間を過ごしたいよ!でも無理なんだよ……。だから今回は部屋でパーティーしてまったりしようよ。」
「嫌!絶対に嫌だ!そんなのつまんない。だってクリスマスだよ?恋人同士なんだよ?なのに何もしないなんて有り得ないって。そんなの恋人同士なんかじゃないじゃん!」
「俺だって体調が普通だったらエッチだって他のなんだって出来るよ!でも今は仕方ないでしょ?俺だって好きでこうなったんじゃないよ!」
「はいはい。そうだよね。今回も全部私が悪うございますよ…。すいませんね、こんな女で。でも嫌なものは嫌なんだよ。だってさ、家でまったりなんていつでも出来るじゃん!そんなの嫌。」
「嫌なのはわかったけどさ、でもしょうがないでしょ?今の俺じゃそれしか出来ないじゃん。姫ちゃんの気持ちに応えたいけど応えられない状況を理解してよ!それに、家でまったりするのだっていいじゃん!
普通にクリスマスケーキ食べてさ、これからの事とか昔の事とかお酒飲みながら話すのだって楽しいと思うんだけど。
そりゃさ…その後にエッチなんて出来たら最高だけど今はしたくても出来ないんだよ………。」
「ああぁぁ…。なんかムカついてきた。私馬鹿みたいだ。」
「そんな事言わないでよ。姫ちゃんは馬鹿じゃないでしょ。」
「そういう意味じゃないよ…。何勝手に勘違いしてんの?私が言いたいのは、なんでこの人と今一緒にいるんだろうって事を感じたの。この人と一緒にいる自分が馬鹿に思えただけ…。」
「は?それどういう事?」
「どういう事って、そのまんまだよ。あなたなんかとなんで一緒にいるんだろうって事だよ。自分が可哀相って思えてきただけ。」
「可哀相って……。俺の事好きなんじゃないの?」
「へ?好きだった…でしょ?今は好きじゃないし、今日なんでここに来たのかも意味わかんないよね。なんでだろ?」
「意味わかんないのは俺のほうだから…。急にどうしちゃったの?なんか別人みたいだよ?それに好きじゃないって………。」
「さっきも言ったけど、もう好きじゃないみたい。だからこの際別れよっか?」
「………。別れる!?なんでそうなるの?俺がクリスマスにエッチ出来ないだけでなんでそこまで話しが進んじゃうわけ?俺だってしたいけどこれ以上体調が悪化しちゃマズイから、したい気持ちとかぐっとこらえてるのに…。確かに姫ちゃんには申し訳ないと思ってるけど今はどうやっても仕方ないんだよ。だから少し冷静になってよ!」
「もう言うことない?
それじゃ帰るわ。早く身体治ればいいね。さよなら」
そう言って、彼女は私の家から出て行った。
もう何が起こったのかがわからなかった…。
手負いの私に最初は優しく微笑みかけ安堵させ、その後に、はい上がれないように奈落に落とす。
彼女は………………………
悪魔だ………………………
こんな事で?と思われるかもしれないが、彼女に依存していた私はこの時に初めて【死】という言葉を意識した。
いっそその方が楽になれると思っていたのかな………