近づく影
ピンポーン。私の家のチャイムが鳴った。彼女が来たみたいである。
「久しぶり、逢いたかったよっ!怪我の調子どう?もう大丈夫なの?」
「まだまだ完全じゃないけどなんとか歩けるようにはなったよ。早く姫ちゃんに逢いたかったから頑張ったんだよ!来てくれて、超嬉しいよ。」
「調子の良いこと言っちゃって…、でも私も早く逢いたかったんだよ!寂しかったもん。あとさ、メールの事は今更だけど勝手に解釈しちゃて本当にごめんね」
「ちょっとショックだったのは事実だけど、もうそんな事忘れちゃったよ。だって、こうして逢いに来てくれたんだし。ありがとう姫ちゃん。」
「ねぇ、チュウしよっか。私はチュウしたいなぁ…」
「俺もだよ。」
久しぶりの彼女の唇の感触は、とても柔らかくてなんだかホッとする気持ちにさせてくれた。
「なんか照れるね…。」
「チュウしようなんて、あんまり言った事ないから、いざそう言ってからするのって恥ずかしいかも。」
私達はお互いに笑いあった。
「でさ、仕事はどうするの?完全に治るまではまた休養なの?」
「今のところはそうなってるけど………。実はさ、今の職場、辞めようと思ってるんだ。理由としては、俺がいつまでもこんな状態だったら他の人に迷惑かかるし、後はおばちゃん達に合わせるのが正直しんどいんだよね。アレやれコレやれって五月蝿いしさ。だから丁度いいかなってね。どうせあそこにいても前みたいに上のポジションにもなれないしさ。」
「そっかぁ…。じゃあ、しばらくは療養してちゃんと治してそれから次の仕事探さなきゃね。私、何も出来ないかもしれないけど応援するからね!一緒に頑張ろうねっ。」
とても暖かく、なんて優しい気持ちになれるのだろう…私は彼女のその言葉に感謝をおぼえた。
「ありがとう、俺も早く治して仕事復帰するように努力するね。でも姫がいてくれれば一騎当千だよ!」
「一騎当千?まぁよくわからないけど私は傍にいるからね。」
こんな感じで私にとっては心地好い時間が流れていたが………。
「ところでさぁ、クリスマスはどうする?」
「クリスマス?多分今の状態だとエッチも出来ないかもしれいよ…。何処かに出掛けるのもキツイかもしれないなぁ…。今は安静にしとかないといけないみたいだし。でもさ、一緒にご飯食べて、お酒飲んでまったりやろうよ!」
私は、最もな意見を言ったつもりだった。
だけど彼女はその一言で、悪魔になってしまうのだ。