マネー・カウントダウン
昼食を食べ終えてから私達は、ショッピングの続きに戻った。
午前中にも結構彼女の洋服を買い、お昼ご飯も食べたので私は残金が気になりはじめていた………。
今日なんとか工面して用意した金額は四万五千円。
しかし昼食代込みで、すでに三万を使っていた。
「これ良くな〜い?一目で気にいっちゃったよ!これ欲しいかも。」
「いいかもね!かわいいじゃんその服。姫ちゃんにピッタリだよ。」
「あっ!こっちの服はあなたに超似合うと思うなぁ。いいと思うんだけどどうかな?」
私も余裕があれば服は欲しいのだが今日にいたってはもう私の服分のお金は無いに等しい。
それを買うぐらいなら少しでも彼女の洋服を買ってあげようと思っていた。
「俺に似合うかなぁ…、もしかしたら他にいいのあるかもしれないからちょっと保留にしておくね。それよりも姫ちゃんの服、買っちゃおう。せっかくお気に入りでかわいいのあったんだしさ。」
「…わかった。とりあえずあなたのは保留ね。」
「買ってくるね。」
今の洋服で五千円。ちなみに彼女が選んだ私の洋服も五千円。もし買ってしまったら、残りの額で彼女の洋服が買えないかもしれない…。とりあえず買わなくて良かった………。
だがそれもつかの間。
「これは絶対にあなたにバッチリだよ!似合うの間違え無しだね。絶対似合うって。」
「俺の服は今日なんとなくいいや。あまり直感で欲しい物なかったし。」
「何それ?私が選んだ洋服はダメって事?」
私は墓穴を掘ってしまった…。言わなくていいのに変な言い訳をしている。
彼女を本気で怒らせてしまったようだ。
「そういう訳じゃないってば、ただ今日は俺の服はいいんだよ。姫ちゃんの買ってあげたいんだ。」
「意味わかんない。いつもは自分のも買うじゃん。なんで今日はいらないの?私が選んだから?」
「違うって!そういうんじゃないんだよ…。少しはわかってよ………。」
「ハイハイ。わかりましたよ。どうせ私はあなたが気にいる洋服なんて選べませんよ。どうもすいませんでした。」
「なんだよその言い方!別に姫が悪いなんて一言も言ってないじゃん!そうじゃなくて…、あぁぁもぅ…」
「怒らせてすいませんね。私が全部悪いんですよ。もう帰る…。」
「…わかったから待ってよ。そうじゃないんだよ。正直に言うからさ。」
私は仕方なく正直に話す事にした。
「実はね、今月色々あってさ…、今日はあんまりもちあわせないんだよ。だから、俺のはいいから姫のだけでも買ってあげたかったんだよ。黙っててごめん。足りると勝手に思ってて、そしたら残り少なくなってきたから俺も心配で変な感じになっちゃったんだよ。」
「何、色々って?私そんな事聞いてないもん。」
「いや、だから色々あってさ、車の車検とかギャンブルとかでちょっと使ってしまったんだよ。だからごめんね。わかって…。それでも姫の洋服代はなんとか工面したし。」
「…ふ〜ん。で?」
「だからごめんって謝ってるじゃん。でも姫の洋服は買えたでしょ。それじゃダメ?」
「あのさぁ、これから先私の前で二度とお金がないって言わないでくれる。お金ない人に服なんて買って欲しくないし。お金があるから洋服買いに来たんでしょ?」
「だからさ、さっきから言ってるけど姫の洋服は買ってあげたじゃん。俺のはまた今度じゃダメなの?
それに俺だって他の人との付き合いとかだってあるしさ、常にお金がある訳じゃないんだよ。
俺は大金持ちなんかじゃないし、単なる一般人なんだよ。勘違いしてない?」
「そうそう事を言わないでって言ってるの!
お金がない、お金がないってなんなの?そんな事聞きたくないよ!
私が知ってるあなたはそんな事言う人じゃないもん!ホントもう最低な人だね」
「あっそ。なら最低でいいよ。俺は前からそんな人間だよ。俺の気持ちなんて、なんにもわかってくれないんだね。もういいよ…、そんなにお金が好きなら金持ちの人とつき合えば?どうせ俺は安月給の貧乏人ですからね。」
「そうだね。こんな貧乏人なんて、今まで何処が良かったんだろう。」
「何?なんだかんだいって結局は金だけが目当てだったって事?俺は金づるって事か。
まぁそうだよね、今までは欲しい物どうにかして買ってきたけど買えなくなった途端にこの態度だもんね…。
俺が気付かない事をいいことに吸えるだけ吸ってしまおうって事か。」
お互いかなりヒートアップしてかなりの言い合いになってしまった。
だけども私が言ったのは本音に近い…。もしかしたら本当にそうなのかもって思っていた…………………。