理不尽
お互いの意思を語った誕生日が終わり、また平穏な日常が訪れる。
季節も秋に入りはじめていた頃の事………。
その日私達はショッピングモールに買い物をしに出掛けた。
「今日は秋物の洋服、かわいいのあればいいなぁ〜。着る服がなくて困ってしまってるよ。」
「そうだね、姫に似合うかわいい服が見つかるといいんだけど…。」
この日、私はあまり乗り気ではない。なぜならちょっと最近色々な事でお金が出てしまっていてハッキリいってピンチだったのである。それでもなんとか彼女の洋服代は工面してきたつもりだった………。
「これなんて良くない?かわいいかも!どう思う?」
「いいんじゃないかな。姫ちゃんに似合うと思うよ。かわいい。」
「だよねっ!じゃあ最初はこれにする。うん、やっぱりこの服かわいいなぁ。」
「了解。じゃあ会計してきちゃうね。」
「うん、お願いね。いつもありがとうね。」
「いいよ、いいよ。俺はこんな事ぐらいしか姫ちゃんにしてあげられないから」
前にも言ったが基本的に、お金については何を買うにしても私持ちだ。それは彼女の洋服にしてもそうである。特別な日ではなく、こういった普通のデートの時も、もちろんそうだ。
「あっ!これもいいかも!これからにピッタリな感じしない?」
「だね。しかも柄もかわいいし、フリルも付いてるからいいね。似合いそう。」
「でも、ちょっとかわいい過ぎかなぁ…私が着ても大丈夫?若すぎる?」
「俺は全然平気だと思うけどね…。イケてると思うんだけどなぁ。」
「あなたがそう言ってくれるならいいかな。この服はデートの時しか着れない感じだけどいい?」
「うん。俺はそういう服好きだし、むしろ俺と逢う時以外は着て欲しくないかな。まぁ無理にとはいわないよ。」
「よし!じゃあ逢う時だけでもいいなら、この服も買っちゃお。ちょっと自信がないんだけどね…。頑張って似合うようにダイエットしなきゃ。」
「ダイエットなんかしなくても大丈夫だよ。似合ってるし、俺は今の姫ちゃんが好きだよ。する必要ないって思うよ。」
「そう?まぁしなくていいならしないけどねっ。」
「だってさぁ、ダイエットしてこれ以上可愛くなったら大変でしょ?姫はかわいいから俺以外の他の男の人寄ってきちゃうもん。そしたら俺やだよ。」
「ハハっ。ないって。絶対大丈夫!私可愛くないから大丈夫だし、他の男の人なんて寄って来ないって。だから安心しなよ。例え寄ってきても私にはあなたがいるでしょ!」
「そうかもしれないけど、もしかしたらってのがあるじゃん。俺よりカッコイイ人なんてざらにいるしさ…、そしたらそっち行っちゃうかもしれないでしょ?」
「平気だよ!私になんて誰も言い寄って来ないから本当に安心していいよ。それにあなたがいてくれる限り私は他の人なんて行かないから信用して。」
そう言ってくれるのは非常に嬉しいんだけど、なんかひっかかるんだよなぁ……そんな感じで内心思っていた。
「そうだよね!姫ちゃんには俺がいるから大丈夫だよね。信用するよ!
とりあえずこの洋服買ってきちゃうね。」
時間帯は昼時になっていたので私達は休憩がてら昼食をとることにした。
基本彼女のその日の気分で食べる物は決まる。
この日はパスタとピザの気分だったらしい。私達は店に入った。
「あ〜、お腹減った。何食べようかなぁ………。私これにする。あなたは?」
「他に食べたいのない?俺は姫ちゃんの食べたいので大丈夫だよ!大体なんでも食べれるし。」
「ん〜。じゃあこのピザなんてどう?」
「いいね、それにしよう。美味そう。」
注文の品が届いた。注文したのはトマトソースベースのパスタとシンプルなバジルとモッツァレラのピザ。
「いただきま〜す。」
彼女がパスタを一口…。
「どう?美味しい?」
「ダメだこれ。私の嫌いな味してる。私ピザ食べていい?パスタ無理。」
「いいよ。俺パスタ食べるから姫はピザ食べな。美味しいよ!」
「う〜ん…。ピザもダメかも。他の頼めばよかった」
………、あえて両方とも彼女の好みで選んだ品なのに両方ともダメってどういう事?私は両方とも普通に美味しいと思うのだが、当の本人がダメって…、意味不明だ。仕方ないので両方とも私が食する。
「ごめんね、私が選んだのに…。食べれる?」
「問題ないよ。全然食べれちゃうから。別の頼む?」
「いや、もういいや。見てたらお腹膨れてきた。わがままでごめん。」
実はこんなやりとりは初めてではない。ちょくちょく他の店でも一口だけ食べて、もういらないって事があるのだ。
非常に料理もお金も勿体ないと思う。
そうならないように私は彼女に好きな物を選ばせてるのに今回は両方って…。
彼女は私の意思に気づいているのであろうか?多分気づいてないと思われる…。
この日の私はお金の事もあったし、この件でちょっとイライラしてしまっていた。
そしてこの後…。
彼女と大喧嘩になってしまうのである………