甘い部屋
結局今回も高い支払いをする事になってしまった…。
そして当日。
私達は昼過ぎぐらいに待ち合わせをして合流した。とりあえずいつものように、お酒、ケーキ、料理、泊まるという事もあってその他諸々をデパートで購入する。そしていつもと違うのは食材を購入したという事。
どうやらこれから向かおうとしているラブホのスイートルームにはキッチンも完備されているみたいで、彼女の誕生日ということで調理師の私が腕を振るう次第になってしまった…。
ま、作るのは好きだから、いいんですけどねっ。
そんなこんなで、目的のラブホに到着する。予約制のスイートルームは前金らしく最初に支払いを済ます。
私は部屋の内装や面積などは一切知らなかった。だけども所詮ラブホだし、今までだってラブホ巡りはかなりしてきていたから、料金だけ高いだけで、全然たいしたことないんだろうと思っていた。
そして入室…………。
「なっ…何この部屋!?」
私の目に飛び込んで来たその部屋の映像は本当に凄いものであった。
まずドアを開けて見えるのは、きらびやかな装飾が施され、五人ぐらいが寝れそうなとてもおおきな天蓋ベッド。周りには天使が飛んでいる…。
そしてその少し先に、辺りの夜景を満喫出来るこちらもかなり大きめの露天風呂付きバルコニー。
その隣にはゆったりとしたスペースの岩盤浴とサウナ、ルームランナー、マッサージチェアー2台。
果たして何畳あるのだろうとおもう程広い……。
だがそれだけでは終わらないのだ…。なんと2階があるのだ。
2階にはオーブンがついているキッチン。
大きな天窓があり、寝ながら星が見えるハート型のラブベッド。
浴槽やシャワー、椅子などが全部透明な下の階がまる見えなお風呂場。
他にも両階にそれぞれリビングがあるなど、細かい事を言えばきりがないぐらい凄い部屋だった。
むしろ実際この部屋を見たら三万七千円は安いほうなのかもしれない…。
「凄い部屋だね〜!今日はここにあなたと泊まれるんだよっ!今回も最高な誕生日だよ。凄い凄い。最初なにしよっか〜?」
彼女がはしゃぐのも無理はない。私も同等でかなりテンションがあがって一緒にはしゃいでいた。
「とりあえず俺は料理の仕込みとかしてくるから、くつろいでてよ。」
「は〓いっ。じゃあ露天風呂にお湯はってくるね!バルコニーで座ってるからなんかあったら呼んでね。」
私は一生懸命料理に取り掛かった。
私がその日作るのは彼女の大好物なウニのクリームパスタとフワフワ卵のオムライス。
「これでよしっと!まぁまぁ良く出来たかな…。出来ましたよ〜、お姫様。」
「わぉ!美味しそう!初めてプライベートで作ってる姿とか見てたけど、男の人が作ってくれるのってカッコイイね!少し見直したかも。」
「なんだよ少しって、だったら食べたらもっと見直すかもよ?」
「自信ありそうじゃん。楽しみですな。もう私お腹ペコペコだよ。」
「じゃあぼちぼち始めますか!」
私はそう言って、部屋の明かりを消して、キャンドルに火を燈す。
お約束だがケーキの蝋燭も歳の本数を用意した。
そしてハッピーバースデーを歌う。
「姫ちゃん、誕生日おめでとう!今日は愛情込めて作らさせていただきました。どうぞ召し上がれ。」
彼女がケーキの蝋燭の火を吹き消す。それと同時に私は冷えたシャンパンを開けた。
「かんぱーい!」
お互いシャンパンを一口飲んで、いつもより少し長く甘いキスをする。私は自分の舌を彼女の舌に絡ませた。
「んんぁっ………まだダメっ!早いよぉ。それは後にとっておこ!」
「じゃあ、食べて飲むぞー!作ったの食べてみて、食べてみて。」
ドキドキの瞬間だ。
「………。美味しい〜!!やるじゃん!両方とも本当に美味しいよこれ。」
その一言が聞きたくて料理した。なによりも嬉しい瞬間だ。
「でしょ?結構やるっしょ俺!見直した?」
「うん。見直したし、惚れ直したかも。今日は素敵だね!」
「今日は、は余計ね。今日も、でしょ?」
「今日はかなぁ〜…。フフフッ。嘘だよ、今日もだよっ!大好きだよ。」
「大好きなんて滅多に言わないから、言ってくれるなんて嬉しくなっちゃうな!作って良かったよ。」
私達はワインを飲んで、オードブル、ケーキ、私の料理などを堪能した。お互いお酒で顔が少しポッと染まってきた。
「辺りも暗くなってきたし、とりあえず露天風呂行こうか。バルコニーに座って夜景みながら飲もうよ。」
「それいいかも!どうする?裸になっちゃう?」
「姫がいいなら俺はもちろんいいよ!とりあえず裸で行って、風呂あがってバルコニーで座るときに一応タオルかガウン着ようか。」
「うんっ。いこっ!」
私達は暗くなったので、露天風呂に入って夜景をみながらお酒を飲む事にした。なんとも贅沢なシチュエーションである。
その露天風呂は最上階にあり、まわりからはもちろん見られない造りになっている。もともとこのラブホ自体高い建物なので、そこから見える夜景も凄く素晴らしいのだ。
そこで私達はお互いを少し語ることになった………。