彼女の誕生日その2
言わなきゃよかった………誰もが一回はこう思った事があるだろう。
「え!いいの?ならあと一つ欲しいのがあるの!」
あぁ…やっちまった……。私はそう思った。口は災いの元と言うがその通りだ。ここまできたら乗りかかった船である。
「何が欲しいの?」
「クルクルドライヤー!」
少しホッとした。ドライヤーなら、なんとかなりそうだ。
「オーケー。いいよ。好きなの選びなよ。」
「ヤッター!これがいい!前から欲しかったの。ありがとうねっ。」
という事で、私は彼女に掃除機とドライヤーをプレゼントした。おもいっきり実用性が高い品である。しめて六万円ぐらいだった。なかなかの買い物だ。おかげで私の財布の中身は閑古鳥が鳴いている。それでも彼女が喜んでくれるなら本望だった。
それらを買った後、当時の私達のお決まりというか、ラブホへ向かった。
いつも飲まないワインで乾杯し、ケーキを食べる。
そして料理を食べて、まったりしてきたら泡ブロに入りお互いお楽しみのラブラブエッチの時間帯だ。
私の誕生日と違い彼女の誕生日の時は私があらゆるリクエストに応える。
この日の彼女は普段と違い、色々と普段しない様なプレイをリクエストしてくる。それはそれで私もかなり興奮して大胆になれて嬉しかったりもする。
普段の彼女は至ってノーマルなエッチが好きなのだが人間という生き物の感情の変化は凄い…、お酒の力も借りてはいるが、誕生日の彼女は結構大胆であり、Mっ気全開なのである。
私はそんな彼女が好きだった。
もはや過去形であるのは仕方がない事である……色々あって、そんな楽しかった彼女の誕生日も今となっては私にとって恐怖の一日となっている。ちなみに当の今月がそうだ……。今から憂鬱だ。
まぁ少しネタバレだが、今の状態ならもしかしたらないかもしれないのだけど…
話しは脱線してしまったが、彼女の誕生日に私が必ずやっている事がある。
それこそ今となっては彼女は何のトキメキもないが、最初の誕生日の時は、涙を流して喜んでくれた。
懐かしい思い出だなぁ…。あの頃に戻りたい……。
私は彼女の誕生日の日にサプライズとして、必ずお花屋さんで歳の数だけの深紅の真っ赤なバラを別れ際に送っていた。
「そろそろ帰ろうか、今日は姫にとっていい誕生日になったかな?」
「うん!欲しかった物も買って貰えて、普段出来ないエッチも出来て、もう最高の誕生日だよっ!本当にありがとう!」
「実はね、まだ終わりじゃないんだ。もう一つだけ俺からプレゼントがあるの」
「え!?なになに?チューとかならいっぱいしたからもう十分だよ?」
私は車のトランクから彼女の歳の本数のバラを取り出す。
「はい、コレ。お誕生日、本当におめでとう!愛してるよっ姫ちゃん!」
その深紅のバラを見るやいなや、彼女は感激で瞳がウルウルしてきていた。
「私…、今まで生きてきてこんなプレゼント初めて。ありがとう…、嬉しい…」
「泣くほどなのぉ?自分ではちょっとくさかったかなって思ってるんだけどね」
後日、確かに周りの友人やら知人にバラの話しをしたら、どうやらバラは送りたくとも恥ずかしくてなかなか送れないものらしい。
私も初めての体験だったが自分が本当に愛してる人だったから、恥ずかしいとかという気持ちはなかった。
「泣くなよぉ。そんなに嬉しいの?」
「うん、嬉しいよ。とにかく嬉しいの。バラなんて貰ったの初めてだし、しかもこれ私の歳の数でしょ?」
「うん。その通りだよ!よく気付いたね。」
「なんだかドラマみたいで夢みてるみたい……」
そう言った後、泣きながら彼女は私に抱き着いてきて、しばらく離れようとしなかった。
よっぽど嬉しかったみたいである。どうかな?って心配してたけど送ってよかったと思っている。
それも今となっては………あぁ、あの頃に戻りたい。