ふさぎあい
観覧車は1番高い位置に到達する。それと同時に私もキスを止めた、彼女も泣き止んだ。大袈裟かもしれないが、そこから見える景色はこの世の物とは思えぬ程美しい。
彼女と私は何も言わずに、その夜景を眺めていた。
言わずというか、お互いに言葉が何もでず、ただただ美しすぎる夜景に魅了されていたのかもしれない。
私にとって生涯忘れる事のない景色になった。
観覧車は下りにかかる。
「姫……、今日は一緒にここに来れて本当に嬉しいよ。ここにっていうか、ここじゃなくても一緒にいれれば嬉しいんだけどさ。特に嬉しいかな。
俺さ…、やっぱりこの先も姫とずっと一緒に…っん」
その先は言わせてもらえなかった。彼女は私の口をふさぐ。そして…、また泣いてしまっている。
「それ以上は言っちゃダメ…。お願いだから言わないで……。お願い……。」
観覧車は下についた。
私はそれ以上言わなかった。多分だが、言いたい事を言ってしまったら彼女にツライおもいをさせてしまったかもしれない。
…でもホントはその逆で、私がもしその事を言ったら傷付くのは私自身なのだ。彼女は私の気持ちに応える事が出来ない。
結果、私が傷付く。彼女はその事をわかってるからこそ、例えお互いのムードが盛り上がっててても私にその言葉を言わせたくないのであろう。
今思い起こすと、それが彼女にとって私への優しさなのか、そもそもその気がなかったのか疑問である。
「そろそろ帰ろうか…。さすがに帰らないと旦那さんに不信がられちゃうと思うよ。ねっ、今日は帰ろう」
「一年ぶりぐらいにデートしたのに、ごめんね…。迷惑ばっかりで。せっかく今日楽しかったのに、最後に嫌な想いさせちゃって。」
「ううん。全然だよ。それにさ、やっぱ姫とのデートは何処でも楽しいや。改めて思ったよ。俺、今日の事は一生忘れないかもしれない。それぐらい二人で見た夜景は心に焼き付いたよ。またこれたら来たいねっ!
さぁ、ホントにそろそろヤバイから急いで帰ろう!また旦那さんと喧嘩なんてさせたくないしさ。」
「馬鹿だよ……。なんでなの…?なんで相変わらずのこんな私にそんなに優しいの?あたなは他の人とだったら……。」
今度は私が彼女の言葉をさえぎった。私だって彼女の口から聞きたくない言葉だってある。
「いいから行くよ!」
「うん、…ごめんね。」
私は高速を可能な限りスピードを出して、急いで帰った。地元が近くになり、彼女も安心したのか隣で寝息をたてている。そんな彼女の寝顔を見ていて私は…。
「旦那と別れて俺と結婚したほうが絶対いいよ…。」
私はボソッと小声で言った。どうやら聞かれてはいなかったようだ。
今日の長旅もようやく終わりを迎えようとしている。
「着いたよ。チュッ。」
「ふぁ…ふんぁ…寝ちゃったんだね私。ごめん。送ってくれてありがとうね!今日は色々あったけど本当に楽しかったよ!また行こうねっ!おやすみ。チュッ」
なんとか12時までには彼女を家に帰せた。今日は本当に色々あって大変だった。
疲れたなぁ……。でも、好きな人と一緒に何処かに遊びに行けるって、やっぱりいいもんだなと思った。
結婚したいって気持ちは、前にしまっておくって決めてたのに、またその気持ちが私の中に甦ってきてしまっていた。
そんな色々な事を考えてるうちに、久しぶりに心地好い眠気が私を包んでいった……………おやすみ、俺…