無題
その時私の頭の中に浮かんだのは職場の事務所であった。私は職場から信頼されていて、出入口の鍵を持っていた。事務所の中には四畳半の畳の部屋が更衣室がわりにあるのだ。
「職場の事務所に行こうか?俺、鍵持ってるし、この時間帯ならまず誰も来ないよ。そこなら座れるし。」
「うん。じゃあ行こっ!」
私達は暗闇に紛れて警備員に見つからないように職場の出入口を目指した。
「着いたね。見つからないうちに早く入ろう。」
なんともいえないスリルと緊張感で、すくなくとも私は異様なくらいドキドキしていた。私達は無事に事務所にたどり着き、畳の部屋に腰をおろした。
「なんかドキドキしたね。俺、緊張しちゃったよ。」
「私もだよ。でも違う意味でも凄くドキドキしてる。どうしよう」
そう言うと姫は私の手をとりその手を胸にあてた。姫のその行動で今思うとその時の私は頭が真っ白になっていたと思う。そして、手を胸にあててる状態で、
「すごいドキドキしてるでしょ?わかる?私、ドキドキでもうおかしくなりそうだよ。」
その言葉と同時に私は姫に押し倒された。
「姫ちゃん!?どうし…」
最後まで喋るまえに姫の唇が私の唇をふさいだ。もう二人には言葉は必要なかった…
それから私達はその場所で激しく愛しあいひとつになった………
9年たった今もなお、絶対に忘れられない出来事だ。
「大丈夫?帰れる?」
「大丈夫だよ。もしなんか言われても適当にごまかすから心配しないで」
「じゃあ…またね。またすぐ連絡するから。今日は今まで生きてきて最高の日になったよ。好きだよ、姫ちゃん」
そう言って私は彼女を優しく抱きしめキスをした。
「今日はありがとうね。私も大好きだよ。バイバイ」
こうして私達は身体の関係をもった後、お互いにそれぞれの帰路に向かった。