足音
次の日からはお互いまた、普通に職場の同僚として働き始めた。もちろん職場では姐御なんて口が裂けても呼べなかった。
私はまたいつも通り忙しい毎日を送るようになった。ただし、今までと少し違うところは姐御とメル友になり、たまにご飯や飲みに行く事が増えた。それはそれで私にとって凄くプラスな事だったと思っている。
そんな毎日を送ってるうちにあの忌ま忌ましい日が近づいてきて、私は姫の事をいやがおうでも思い出した。そう、世間一般でいうとこのクリスマスである。そんな矢先にまた事件が起こる。私はいつもの様に淡々と仕事をしていた。
それは突然だった。【バキッ…】私の身体から鈍い音がなった。私は突如その場に倒れ込んだ。背中と腰が酷く痛み、自力で立つ事もできない。私は救急車で搬送された。原因は過労…。働きすぎで腰の骨と背中の骨が歪んでしまってボロボロになっていた。簡単に言えば背中と腰のヘルニアが同時に起こってしまったのである。私は入院する事になり、約一ヶ月半仕事にでれなくなる。そしてそれに伴い職場は売上が低迷し、私が不在の間に撤退を余儀なくされた…。
なんともスタッフには申し訳ない事をしてしまったと思っている。そんなこんなで姐御も違う場所に飛ばされてしまう。なんとも残念であった。
私にとって、クリスマスという響きは最悪なものである。姫と別れる事になり、築き上げた職場も失い、仲良くなった姐御とも離れ離れになってしまった。結果、また今年も寂しい正月を迎える事になってしまった。なんともツイてないと思う事しか出来なかった。
私の体調も徐々に回復してきていた2月ぐらいの事。ちなみに仕事は療養中としていて休業している。
何か変えなきゃ!と思い、私は一人暮らしを始める事にした。私と一緒で愛車もボロボロだったので新車も買った。車はビートルを購入した。私は、自分でいうのもどうかしてるが、世間一般でいうとカッコイイ系の人間ではなく、どちらかというとカワイイ系の部類に入る人間だったので車もそれにあわせ、ビートルを買った。後ほど、この車の事で大問題が私に起きるのだが………。
またも心機一転、住家を変え、愛車も変え、運気が変わればいいなと思っていた。仕事をしていない間は身体と相談しながら趣味でやっていたスロットで生計を立てていた。その当時は私ぐらいの腕でもしっかりと立ち回ればそれなりに成果はついてきていた。むしろ、仕事をしている時よりも月給は上回っていたのである。
そんなちょっと堕落した生活をしている中、約一年と少しぶりぐらいに聞き覚えのある着信音がなった。私はその時まで完全ではないが忘れかけていた存在、ここまでいってしまえば読者様はお分かりだろうが、彼女である。まぎれもなく姫ちゃんからの着信だった。
その電話で、私の身体中の何かが凄く熱くなり全身を駆け巡る。
やはりというか、私はまだ彼女の事が好きで忘れられていなかったのが証明される事になる………。
そして、私は…。
「…もしもし?…姫ちゃんですか?」
姐御に対して徐々に心が惹かれていたのは確かだったが、私は心のどこかで、ずっとこの人からの連絡を待ち望んでいたにちがいない…。
彼女からの苦痛をまた味わうために……。