種明かし…
煌々と街のネオンが輝きを発している中、私と姐御は歩いていた。
「マジで行くの?俺、結構酔い醒めてきたかも…」
私はドキドキ感が酔いに勝って、少しではあるが本当に醒めてきていた。
「ここまで来たら行こうよ!醒めたなら醒めたでまた飲めばいいじゃん。」
なんていう人だ。ここまで行動派な人間だとは、普段からしたら想像もつかない感じである。
「どうなっても恨みっこなしね。それでいい?」
姐御の返答はなく、ただ目的地に向かって歩いている。
「着いたよ!ここならいいっしょ!」
どうやら姐御はここいら周辺の地理に詳しいらしい。手を引っ張って連れて来られた場所は、ぱっと見ると白いお城風の建物だった。
「姐御はここいら辺よく来るの?」
「わりかしね。この間も飲んだ後ここに来たんだ。」
何だって!?外見とは裏腹に姐御は酒入ると見境なく男を食べちゃう人なの!?そうな風にはまったく見えないのに………。私は正直ビックリして気が動転しそうだった。
「よし、入ろうか!何やってんの?行くよ!」
無理矢理手を引っ張っられ強制的に入店した。
【いらっしゃいませ。二名様ですか?只今の時間ですと…………。】
あれっ!?この台詞は何度も耳にした事がある。普通ラブホだったらタッチパネルやらで部屋を決める。何名様ですか?なんて一度も聞かれた事ないような………。
そうなのだ。外見こそラブホっぽい造りだが連れて来られた場所はカラオケボックス…。確かに休めるけど………。なんて紛らわしい外見してるんだよ…。でも私はちょっと安堵感が漂っていた。
とりあえず入室。部屋に入るなり、
「ブッ、ハハハッ……!なに勘違いしてんの?ラブホだと思った?ちなみにね、ここはホントに元はラブホだったんだけど、客入らないみたいでカラオケにしちゃったんだって。だから知らない人みたらラブホって思うよねぇ。まったく…、はやとちりするなって言ったじゃん!ここなら寝ようとおもえば寝れるし、始発運転するまでたっぷり休めるでしょ?それにまたお酒も飲めるし!」
完全に騙された。お恥ずかしい限りだが、正確には騙されるというより自分一人で妄想してしまっていた。
「姐御さぁ、超楽しそう…。してやったりって顔してるね。なんか恥じらいながら喋ってたのも演技って事でしょ?」
「その通り!なんかさ、飲み屋出てから急に思い付いちゃってさ、悪いと思ってたけど、楽しくなってきちゃってさぁ。でもここまで来るのに勧誘の人とかいっぱいいるし、女子一人じゃ歩きにくいんだよね。だから酔ってるふりして手を引っ張って歩いたの。期待に添えないでごめんね。でも、ここに着いた時の顔サイコーだったよ!超緊張してる顔してた。マジウケた。」
「すげー意地悪。ホントに緊張してたよ俺。ったく芝居までして、女は女優だよな。すっかり騙されたよ。ただ正直、姐御がそんな尻軽女じゃなくてホッとしてる部分もあるよ。これで良かったと思ってる自分がいるもん。」
「ホント馬鹿だよね。こんな事されても私の心配してくれるんだから。仕事場でもそうだけど、優し過ぎなんだよあんたは。周りの事とか気遣ってくれるのはいいけど、自分の事も気遣ってあげた方が私はいいと思うよ。そうしないと、いつか自分で潰れちゃうぞ。」
なんだかとても嬉しかったのを覚えている。姐御はなんだかんだで私の事を心配してくれていたのだ。
「よっしゃ、飲み直そうか?私も醒めちゃったよ。」
「姐御はどんだけ俺の事イジメたいんだよぉ。まあいいや。少しならお付き合いしますぜ姐御!」
その後、始発が動くまで私と姐御は軽くお酒を飲み、歌を歌い、大いにストレスを発散した。始発が動き出す頃には私の酔いも醒めて体調も回復していた。
「姐御、ホントに電車でいいの?送ってくよ。」
「大丈夫、大丈夫!もう明るいし一人で帰れるよ。今日は色々とごめんね。でも楽しかったからいいでしょ?それからさ、あんまりストレス溜めすぎちゃダメだぞ。過去の彼女の事は早く忘れちゃいな。それじゃまた明日職場でね!バイバイ。」
サラっと最後にはっぱをかけてくれるところなんかがやはり姐御肌である。
!?まてよ…、俺そんなに姫の事愚痴ってたのか?自分では考えてないつもりだったけど、飲んでるときに姐御に散々愚痴ってたぽいな。俺はまだ姫の事忘れられてないのか…まぁいいか。帰って寝よう。
今思うと私のストレスが溜まっているのに気が付いて、姐御は誘ってくれたのかもしれない。
私は、そんな姐御に少し気を寄せ初めていた……