寄り道 その2
「着いたけど、マジで飲み屋なの?さっきも言ったけど俺車だからね。」
一応もう一度聞いてみた。
「往生際悪いね。ほら、行くぞ!」
「へいへい。わかりましたよ、姐御。」
「何、姐御って?」
「入ろ入ろ、話しはその後にでも出来るし…」
私と姐御は飲み屋に入った。どうやら個室の造りの飲み屋らしく、個室以外ないらしい。なんとなく嫌な感じがしたが仕方なく入る。
「お!なかなかいい雰囲気のとこじゃん。誰にも邪魔されず、とことん飲めるね。さぁ、飲むぞぉ!」
姐御はテンションが上がっている。とりあえず私も合わせる。
「うっし!今日は飲むぞ!日頃の疲れを忘れるくらい飲む!ついてこいやぁ。」
「そっちがね。最初に言っとくけど私は強いからね。付き合ってもらうよ。」
まだ飲んでないのに、もう負けてる感じがする…。
「乾杯!お疲れ〜。」
「乾杯。おつ〜。」
姐御といろんな話しをした。これからのお互いの将来像。今の仕事。過去の恋愛話し。
「あのさぁ、さっきから聞いてれば、姐御、姐御ってなんなのそれ?」
「だってさ、なんか飛鳥ちゃんて、こうやって話ししてるとおもいっきり姐御肌じゃん。仕事してるときはそんな感じしなかったけど、プライベートだとこんな感じなの?」
「そうだねぇ…今の私が本当の私かな。姐御肌っぽいかね?」
「うん。でも俺はこっちの飛鳥ちゃんの方が好きかなぁ。だからこれからは姐御って呼んでいいっしょ?」
「……まぁいいか。いいよ姐御で。特別に許す!」
「ほら、そういうとこ姐御肌っぽいし。」
お互いハハハと笑い合い、楽しいお酒の席になっていた。そして数時間後……。
「もう無理っす。そろそろ勘弁してよ姐御。これ以上飲めないって!すでにベロベロだよ…。まいった。」
「まだまだこれから!私飲めるもん。今日はとことん付き合うんでしょ?ほら、飲んで飲んで!」
私のリミッターはとっくに限界を超え、レッドゾーンをも越えそうだ。徐々に気持ちが悪くなってきていた。もう本当に限界だ…。
「…ったく。あんな啖呵きるから悪いんだよ。私に酒で勝てる訳ないの!辛そうだし、さすがに今日はこれで勘弁してあげる。」
助かった…。私はそう思っていた。
「ほら、帰るよ!立てる?………もぉう……しょうがないなぁ。」
私はかなり飲んだからフラフラしていて千鳥足だった。そんな私を見兼ねて姐御は私の腕をガッチリと自分の腕に絡ませて一緒に歩いてくれた。
「ごめん姐御、だらしなくて………。」
「私が飲ませ過ぎたよ。もっと飲めるのかと思ってたからさ。だから今はこのままでも許してあげる。私のせいだしね…。ゴメン…」
最後のゴメンの部分はボソッと言っていた。割りと恥ずかしがり屋なのかもしれない。
姐御は私の腕をしっかりと組んで車まで連れてきてくれた。
「サンキューね。でもマジごめんね。俺が姐御に介抱させちゃったね。」
「いいよいいよ!気にすんなって!それよりさ………これからどうする?」
運転はもちろん出来る状態ではない。すでに終電もない。かといって、姐御を送っていけないし………。このまま車の中で過ごすのも嫌だし………。
「休みに………行く?多分寝たいよね?」
姐御からだった。
「う、うん。寝たい事は寝たいけど………。姐御はそれでいいの?」
「そっちがいいなら私はいいよ。構わない。」
この流れはやっぱり、あそこら辺のホテルというキラキラした看板がある宿泊施設に行くという事だろう。私は酔いのせいもあり、かなりドキドキしてきた。
そして私と姐御は歩き出した………。