些細な対立で…
今回の記念日で私達はお互いの意思を確認しあえた。彼女はあの日から本当に毎日指輪をしてくれている。特に旦那からは何も言われてないみたいだ。
私は素直に嬉しかった。
そしてそれからは順調そのもので、またお互いトキメキみたいな気持ちも戻ってきていた。だが…やはりというか、そんな幸せは決して長くは続かない……。
彼女は色々な理由で今まで勤めていた会社を辞めて、他の会社に派遣社員として行く事になった。季節は冬を迎えようとしていた。
そんな十一月のある日…。
「新しい会社は慣れた?周りの人達はどう?みんな優しくしてくれてる?」
「うん。今回はいい感じだね。経理の仕事も大分解るようになってきたし、楽しいかも!」
ここで私達にとって一つの問題点がある。彼女は今まで平日休みがある職場を選んできたのだが、今回は土日休みの仕事なのだ。私はシフト制のため平日の休みが多い。そして土日は彼女の旦那も休みなので彼女も家からなかなか出られないのである。必然的に逢う時間が作れなくなってきてしまったのだ。私が土日に休みを取っても彼女が出れるかどうかは謎だし、土日は周りの人達も休みが多いので二人で行動するのは平日よりもリスクが伴う。かと言って、彼女はまだ勤めて間もないので有給休暇も発生しておらず平日に休みを取るのは難しい…。まさに八方塞がりになってしまったのだ。そんな日々が続いて、お互いイライラが出てきてしまっていた。
「X’masは休み取れるんでしょ?取ってって言われたから俺は取ったよ。」
「ゴメン…。無理そう。」
「え!?取れって言ったの姫ちゃんだよ?それなのに無理って………。」
「なんか年末で経理の仕事がいっぱいあるみたいでさ、頼むから出てくれって言われちゃったの………。」
「いや、俺もその日はイベントデイだったけど、取れって言うから色々理由つけて無理して休みいれたんだよ!」
「私も最初はそうだったんだけど経理部長がどうしてもって言うから………。」
「わかった。…もういい」
「怒らないでよ。悪いと思ってるから、ごめんて謝ったんだし。…ごめんね。」
私が休みを取ってくれと言ったんなら怒りもないが、今回に限っては、彼女の方から言ってきたのだから怒り心頭である。私は上司に何度も何度も頭を下げて、ようやく許しを得たというのに…。
そんなやりとりの中、彼女が豹変した………………。
「なんかさ…、もういいや、めんどくさくなってきた。どうせ私が全て悪いですから……しばらくほっといてくれないかな、顔も見たくないや。」
「何逆切れしてんの?たかが休みが取れなかっただけでしょ?そんなんで、うちらは終わるわけ?」
「多分そうなんじゃない…。そんなもんなんだよ、うちらなんてさ。だからさ、そんなに私の事嫌ならもういいって!」
「別に嫌になってないし、ただ理不尽だったから怒ってしまっただけじゃん。」
「だ・か・ら!そういう言い方とかが凄いムカつくんだよ!今まで言わなかったけど、ちょいちょい私がムカつく言い方してくるんだよね。それに、もう飽きてきてたし!だから今回の事で決心ついたわ。」
「なにそれ?言いたい事あったなら前から言えばよかったじゃん!言われなければ分からない事だってあるんだからね!」
「とにかく今はもう無理!私がまたやり直せると思う時がくるまで、そっちからはメールも電話もしてこないで!さよなら。」
あまりにも一方的だった。そしてショックだった。私は相手が嫌がる事はしてきていないつもりだった。だがそれは、つもりでしかなかったのだ。言われなきゃ分からない事は誰にでも絶対あると私は思う。そして初めてそこで自分の過ちに気づくのだと思う。それも人間の特徴だ。
今日のこの瞬間…私は彼女を失った…。
なかなか逢えなかったし、X’masには日頃の感謝を込めてサプライズをやって彼女を大いに喜ばせようと思っていたのに…………なにもかもなくなってしまった…。
これから何しよう…………
もうどうでもいいや………
仕事も………もう行きたくないな………………………
どうせすぐ仲直りするかな………………………………
それは………無理か………
あ〜あ……俺が何したっていうんだよ…………………
色々考えてたら、私は涙が止まらなかった。泣き止んでも、少したつと溢れんばかりの涙が流れ落ちる。
「姫………、好きだよ………、本当に愛してるんだ………、・・・・・、本当に好きだったよ………………………………………………さようなら………………」
私は………こうして泣きながら、声にならない声を発して眠りについた。
どんなに泣いても、思っても、もう隣には彼女はいない。
そういえば、誰かが言ってたっけ………………………【男と車は三年で飽きる】